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自室の机のライトが、真新しいノートの一ページを照らしている。
そこには、阿部亮平の、無惨な戦いの記録が、克明に記されていた。
【第一次作戦:感情(ロマン)による奇襲攻撃】
結果:失敗。『束縛』という意味を持つブレスレットは、相手に『好き』という感情的なカウンターを許す最悪の一手だった。
【第二次作戦:理性(データ)による論理的説得】
結果:大失敗。圧倒的な『事実』は、相手の『愛情』という、さらに強大な事実の前には無力だった。唇を、奪われた。
阿部は、その記録を、苦虫を噛み潰したような顔で眺め、頭を抱えた。
「…もう、打つ手がない…」
感情も、理論も、この二つが彼に通じないのなら、一体、自分に何が残っているというのか。
もう、諦めるしかないのか。
阿部は、完全に燃え尽き症候群に陥っていた。
ノートを、ぱたりと閉じる。
もう、この不毛な戦いは、終わりだ。
そう思った、その時だった。
ふと、阿部の脳裏に、ある言葉がよぎった。
『灯台下暗し』。
「…待てよ…」
阿部は、勢いよく顔を上げた。
「僕は今まで、常に『与える』側だった。プレゼントを渡し、プレゼンを見せ…。だから、カウンター攻撃を受ける隙が生まれたんだ」
そうだ。
全ての敗因は、こちらから「仕掛けた」ことにあったのではないか。
「ならば…」
阿部の目に、三度目にして、最も危険な光が宿った。
「僕が、何もしなければいい」
何もしない。
プレゼントも渡さない。データも見せない。
ただ、静かに、そこにいるだけ。
「何もしないことで、相手を動揺させ、誘い込み、そして、罠にかける…」
そうだ。
最高の攻撃は、最大の防御。
僕が僕でいることを、やめればいいのだ。
「今回の作らなかった、さくせん-は…『何もしない』ことだ…!」
阿部は、再びノートを開くと、震える手で、最後の作戦名を書き記した。
『第三次作戦:プロジェクト・アパシー(無関心)』
それは、今までのどんな作戦よりも、静かで、冷徹で、そして、残酷な計画。
Snow Manのインテリジェンスが、己の心すら欺く、非情なる最終決戦の火蓋が、今、切って落とされたのだった。