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勝てない。

11 - 3度目の正直

♥

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2025年08月23日

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自室の机のライトが、真新しいノートの一ページを照らしている。
そこには、阿部亮平の、無惨な戦いの記録が、克明に記されていた。


【第一次作戦:感情(ロマン)による奇襲攻撃】

結果:失敗。『束縛』という意味を持つブレスレットは、相手に『好き』という感情的なカウンターを許す最悪の一手だった。


【第二次作戦:理性(データ)による論理的説得】

結果:大失敗。圧倒的な『事実』は、相手の『愛情』という、さらに強大な事実の前には無力だった。唇を、奪われた。


阿部は、その記録を、苦虫を噛み潰したような顔で眺め、頭を抱えた。


「…もう、打つ手がない…」


感情も、理論も、この二つが彼に通じないのなら、一体、自分に何が残っているというのか。

もう、諦めるしかないのか。

阿部は、完全に燃え尽き症候群に陥っていた。


ノートを、ぱたりと閉じる。

もう、この不毛な戦いは、終わりだ。

そう思った、その時だった。


ふと、阿部の脳裏に、ある言葉がよぎった。

『灯台下暗し』。


「…待てよ…」


阿部は、勢いよく顔を上げた。


「僕は今まで、常に『与える』側だった。プレゼントを渡し、プレゼンを見せ…。だから、カウンター攻撃を受ける隙が生まれたんだ」


そうだ。

全ての敗因は、こちらから「仕掛けた」ことにあったのではないか。


「ならば…」


阿部の目に、三度目にして、最も危険な光が宿った。


「僕が、何もしなければいい」


何もしない。

プレゼントも渡さない。データも見せない。

ただ、静かに、そこにいるだけ。


「何もしないことで、相手を動揺させ、誘い込み、そして、罠にかける…」


そうだ。

最高の攻撃は、最大の防御。

僕が僕でいることを、やめればいいのだ。


「今回の作らなかった、さくせん-は…『何もしない』ことだ…!」


阿部は、再びノートを開くと、震える手で、最後の作戦名を書き記した。


『第三次作戦:プロジェクト・アパシー(無関心)』


それは、今までのどんな作戦よりも、静かで、冷徹で、そして、残酷な計画。

Snow Manのインテリジェンスが、己の心すら欺く、非情なる最終決戦の火蓋が、今、切って落とされたのだった。

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