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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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第146話:東京遠征と、モーションキャプチャーの洗礼〜無駄に高画質なトラッキングとおっさんの関節〜
「……高ぇ。あるいは、人が多すぎだろ」
見上げるようなガラス張りの高層ビル群。
北海道の帯広から飛行機と電車を乗り継ぎ、俺はついに日本の中心地、東京・港区へと足を踏み入れていた。
周囲を歩くのは、パリッとしたスーツを着こなすエリートビジネスマンや、モデルのように洗練された女性たちばかり。しまむらで買った二千円のパーカーに身を包んだ四十歳のおっさんは、完全にこの街の『バグ』として浮きまくっていた。
『泣き言を言わないでください、ルシフェル様』
耳に押し込んだワイヤレスイヤホンから、結愛の氷点下ボイスが響く。
『本日は、当社の社運を賭けた【3DモデルVer2.0お披露目コラボ】に向けた、事前のキャリブレーション(動作確認)テストの日です。前回の無様なガバガバ挙動を払拭するためにも、プロとして完璧なモーションを収録してきてください』
「わかってるよ! でも、二度目でもこのキラキラ空間は緊張で胃が痛いんだよ!」
俺がビクビクしながら巨大なビルのエントランスをくぐると、そこにはすでに、見覚えのあるハイテンションな男が待ち構えていた。
「おおお! ルシフェル様!! はるばる北海道からようこそお越しくださいました!」
天下のエンタメ企業『スターダスト・プロダクション』の企画運営統括、神崎プロデューサーである。
「さあさあ、早速スタジオへご案内しますよ! アリスちゃんも後ほど合流予定ですので、まずはルシフェル様の単独テストから始めましょう!」
神崎Pに連れられて専用のエレベーターに乗り、厳重なセキュリティゲートをいくつも抜ける。やがて案内されたのは、体育館ほどもある巨大な空間だった。
壁と天井に設置された数十台の赤外線カメラ。スタプロが誇る、最新鋭の光学式モーションキャプチャースタジオだ。
そして、スタジオの技術スタッフが、ハンガーに吊るされた『例の物』を俺の前に差し出してきた。
「ではルシフェルさん。こちらの【特注モキャプスーツ】にお着替えをお願いします。今回はVer2.0の高度な表情・指先トラッキングに対応するため、マーカーの数が前回の倍以上になっています!」
「うげっ……。やっぱりコレですか……」
渡されたソレを見て、俺は顔を引きつらせた。無数の白いピンポン玉のような反射マーカーが縫い付けられた、ピチピチの真っ黒な全身タイツ。
身体にぴったりと密着させないと正確なデータが取れないため、インナーは脱いで直接着用しなければならない。
四十歳の、しかも最近は一日一食の生活ですっかり筋肉が落ち、だらしなく腹だけが少し出た中年体型。それを、この超高密度全身タイツで晒せというのか。
『ルシフェル様。躊躇している時間はありません。スタジオのレンタル代は1時間あたり数万円単位で発生しています。早く着替えてください』
イヤホン越しの結愛の容赦ない追い打ちに、俺は涙目で更衣室へと駆け込んだ。
数分後。
黒いモジモジくんの完全体となった俺は、指定された立ち位置に立った。
正面の巨大なモニターには、250万円を支払ってアップデートされた『ルシフェル(Ver2.0)』の3Dモデルが映し出されている。
「おおおっ……! すげえ!!」
俺が指先をわずかに動かすと、モニターの中の魔王の指先が、まるで生き物のように滑らかに、爪の角度までシンクロして動いた。表情トラッキングも高度化され、俺が軽く眉をひそめると、イケメン魔王も妖艶に眉をひそめる。
感動で震える俺に、技術スタッフからマイク越しに指示が飛んだ。
「はい、それではトラッキングのズレを確認します。ルシフェルさん、ダンスの激しい動きを想定して、その場で【スクワット】を十回ほどリズミカルにお願いします!」
「……え?」
俺はフリーズした。
全身タイツを直接着るために、命綱である『コルセット』は更衣室に置いてきてしまっている。数日前に爆発したばかりの腰で深いスクワットなど、完全な自殺行為だ。
だが、ここで引くわけにはいかない。
「い、いきます……っ。いーちっ……、にーいっ……ひぃぃッ!」
俺は息を止め、丸腰の爆弾(腰椎)に怯えながら深く腰を下ろし、そして立ち上がった。
「さーんっ……! しーいっ……!!」
「ルシフェルさん、もっとペース上げてキレを出せますか!? Ver2.0の追従性を見たいので!」
「は、はいぃぃ!! ごーおっ……!! ろ、ろくゥゥ……ッ!!」
6回目を超えたあたりで、俺の太ももが産まれたての子鹿のようにガクガクと震え始め、無防備な腰がミシミシと悲鳴を上げた。
肺が酸素を求めてヒューヒューと喘ぎ、心臓が肋骨を突き破りそうなほどの早鐘を打っている。
「な、なな……っ! は、はちぃ……っ!! こ、腰が砕けるゥゥ!!」
『……ルシフェル様。モニターの魔王アバターの動きが、無駄に高画質なせいで、完全に介護を必要とする老人のリアルな痙攣(けいれん)になっています。情けない姿を晒さないでください』
結愛の冷たいツッコミが耳に刺さるが、言い返す余裕など1ミリもない。
「きゅ、きゅうぅぅ……ッ!! じゅ、じゅうううううッ!!」
「はい、OKです! ありがとうございます!」
俺は、十回目のスクワットを終えた瞬間、その場に崩れ落ち、スタジオの床に大の字になって倒れ込んだ。
モニターの中では、床に倒れ込んだ俺の動きと完全にリンクして、超絶イケメンの魔王が、無駄にリアルな物理演算でマントを美しく広げながら、床で無様に這いつくばっている。
どれほどガワ(アバター)が250万円の最高級Ver2.0であろうとも。
その中に入っている『魂(ポンコツの四十歳)』の体力が尽きれば、3D配信は高画質な放送事故と化すのだ。
「次はですね! アリスちゃんのライブでお馴染みの、『連続サイドステップからのジャンプ』のトラッキングを確認します!」
「…………ッ!!」
俺の目の前が、完全に真っ暗になった。
3DモデルVer2.0による華やかな世界の裏側は、底辺アラフォー男の削られた体力を超高精度で搾取する、文字通りの【肉体労働(フィジカル・ヘル)】だったのである。
コメント
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うわああああルシェフェル様!!(笑)想像以上に過酷じゃないですかこのモーションキャプチャー!!😭💦 特注モキャプスーツにコルセットなしスクワットとか完全に地獄すぎる…結愛ちゃんのツッコミも容赦なさすぎて笑ったけど、画面の中のイケメン魔王が高画質で床に這いつくばってるの想像したらもっと笑ったww でもこの『ガワは豪華!でも中の魂は♡♡♡おっさん!』っていうギャップが癖になる…!🤣✨この後のアリスちゃんとのコラボ配信、どうなるんですか!?生きて帰ってきてくださいルシェフェル様!!!