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「何故、貴方までついてきているんですか。ラヴァイン・レイ」
「エトワールが心配だからに決まってるじゃん。ね、エトワール」
「え、ああ……うん」
まあ、一人よりは、二人、二人よりは、三人って考えで連れてきてはみたけれど。どうしてこうなったんだろう。
体温調節が出来る特殊なドレスを用意して貰って、二人もまた体温調節を自動でしてくれる特殊な服に着替えて、砂漠を歩いているわけだが、先ほどから、このぎすぎすとした空気感は払えないままだった。
(ええ、ラヴァインとグランツって仲良かったじゃん)
何で、そんなに警戒心むき出しにしてるの……なんて、思いながら、私は、まあ、まあ、と二人を宥める。ラヴァインは私にべったりで、それをよく思わないのか、今にも剣を抜きそうなグランツは、私とラヴァインをいっしょにして睨み付けていた。
何故私まで……
「ま、まあ、グランツも、ラヴィも落ち着いて。二人が一緒に来てくれたこと、すっごく嬉しいし、心強いから。そ、その、よろしく!」
私は、もうこの空気感はここまでにしてくれ、という意味を込めて、声を張り上げた。すると、グランツはようやくその気を納めてくれたのか、熱くなりすぎました、と自らの非を認め謝罪した。それに対して、ラヴァインはぶつくさ言っていたけれど、グランツは聞かないフリをしていて、私を見る。
「な、何か顔についてる?」
「いえ、エトワール様、体調は大丈夫ですか。いくら、魔法で、体温調節が出来る服とはいえ、暑いのではないですか」
「えーあ、うん。大丈夫。今のところは。ありがとう。また、辛くなったらいうから。本当にグランツは気が利くね」
「いえ……エトワール様の身体が第一ですから」
と、グランツは、顔を逸らしてしまった。
「しっかし、エトワールも無茶なこと言ったねえ」
「何よ」
「真実の聖杯を取ってくるって宣言したこと。まあ、そこの王子様も、一人で取りに行くっていう無茶を言ってでたわけだけど、本当に、危険が何もないって思ってるわけ?」
「危険だって、承知の上でよ」
「ふーん」
自分から聞いたくせにその態度は何だと、いいたくなった。でも、ここでいっても、また反論されるだけだろうし、そんなことをするためだけにきたんじゃないと、私は冷静になる。
ラヴァインがついてきてくれることになって、助かっているのは事実だし、ラヴァインもグランツも、私より南の砂漠について、詳しいだろうから、心強い。いってしまえば、私は何も知らない状態で来たんだから。
(って……バレたらやばいよねえ)
大サソリとか、真実の聖杯とか、そういうの全く分からない。けど、何となく、こうだろうっていう考察の元来ているから、事前に調べる時間など名あった。私が、知っている前提で話が進んでいるのはあれだけど、二人も、私が無知なのはよくよくしっているはずなので、あえて何も言わないのかも知れない。それは良いとして……
「ラヴィ、何か、聖女殿で変わった様子あった?」
「変わった様子かあ……何もなかったと思うけど。でも、あの噂はほんとだよ」
「どの、噂よ」
「だから、聖女殿や神殿の近くで、銀色の髪の少女が目撃されたって言うあれ。あれは、ほんと。俺も見たもん」
「……」
だから、何だ、とまた突っ込みたくなってしまったが、グッと堪えて、それが何を意味するかだけ、ラヴァインに問い詰めた。ラヴァインは、それが、私じゃないもう一人の私だと分かっている前提で話を進める。
「何か、話していたのは聞えたよ。誰と、話しているかは分からなかったけど」
「貴方じゃないんですか?」
鋭い視線と声が、ラヴァインに突き刺さる。食いついてきたのは、グランツだった。何で今日は、彼に突っかかるのか、全く分からず、私も首を傾げることしか出来ない。グランツは、私をちらりと見ながら、自分を落ち着かせるように目を伏せた後、ゆっくりとその翡翠の瞳を開く。
「貴方が、内通者なのでは?」
「今日は、随分と食ってかかってくるねえ。まあ、俺は別に気にしてないけどさ。仲良くしようよ。エトワールを守りたいもの同士」
「話を逸らさないで下さい。俺の質問に答えろ」
「ちょ、ちょっとグランツ」
グランツの周りの空気がピリッとして、これはまずいと、私は割って入る。グランツは、そこを退け、見たいな顔をしていたけれど、私はこのままにしておく方がまずいと、首を横に振る。
「ぐ、グランツ。ラヴィのいうとおりだって。私を守ってくれるんだよね。だったら、仲良くしなきゃ」
そーだ、そーだと、外野のようにラヴァインは口を挟む。そういう所が、煽るといっているのに、分からないのか、此奴は、と私は思いながらグランツの方を見た。グランツは、ギリッと奥歯をならして何故止めるのか、といった表情で私を見る。私からしたら、ラヴァインに突っかかる理由が分からないのだ。
グランツが珍しく、闇魔法の人と仲良くしているなあって思ってたから、以外というか、仲良いんだ、同世代だからね、って微笑ましく思っていたのに。あれは、演技だったが、利害の一致関係だったか。
「エトワールもそういってるんだから、ここまでにしようよ。第二王子様。ここで、争ったところで、無駄な体力を消費するだけだし?それに、体力を奪う南の砂漠で、無駄なことしたくないじゃん。廃神殿までもう少し何だからさ、暴れるなら、そこで暴れよう」
「…………」
「グランツ、ちょっとは、ラヴィの話し聞いてあげたら?」
無視に無視を貫く、グランツ。何処で、へそを曲げたか分からず、どうやって、彼の機嫌を直すかも分からなかった。本当に扱いづらいところがあると、私は思いながら、何処か大人びたラヴァインを見る。
「というか、廃神殿ってどういうこと?」
「矢っ張り、何も知らずにきたんだ。エトワール。本当に、無知で無謀」
「……うっ」
「でも、思い切って行動出来るのが、エトワールの良いところだって、俺は思ってるから、別に怒ったりはしないよ。けどさ、もっと、自分を大切にして欲しい……とは、思うよね。ねえ、第二王子もそう思うでしょ」
「……その言い方は、好きではありません」
そう、はっきり言った上で、グランツは、同じだ、というように、少し長くなった前髪に触れながらいう。
「俺も、エトワール様の無知さと、無謀さには、いつも驚かされます。ですが、そこがエトワール様の……行動力の高さは、見習いたいと思っています。だからこそ、俺は、そんなエトワール様を守りたい」
と、自分の主張も忘れずにいうグランツ。
思っていることは一緒。でも、考え方が違うのだろう。
無知さと無房については、触れられてしまったので、私は何も言い返す気にはならなかったが、誉めてくれるところもあって、嬉しいとは思ってしまう。単純だって言われたら、それまでなんだけど。
まあ、ここで、一旦休戦というか、言い争いはなくなったわけで、私はほっと胸をなで下ろした。一応、色々とまとまったところで、先ほど放置してしまった問題について、もう一度訪ねる。
「それで、ごめん……無知で、バカっていうこと自覚してるけど、教えて欲しい。廃神殿って、元は、神殿として使われていたってこと?」
「まあ、そうだね。今は、大サソリが徘徊してる危険地帯だから、誰も近付いたりはしないよ」
「そう……危ないんだよね」
「当たり前じゃん。考えれば、分かることだよ」
と、いったので、グランツがまたもの凄い凝相で睨み付けていた。コントみたいに、何度もやるから、私はもう何も言えなくなってしまう。
でも、聖女殿の近くにある神殿の前に、神殿として使われていたのとか、神殿って幾つもあるのだとか、色々思うところはあったけど、深くは突っ込まないでおこう。と私は危険、という情報だけど頭に入れて、永遠と続く砂漠を歩く。どれだけ歩いても、砂漠が続くばかりで歩くのにもつかれてきた。
「本当に、もうちょっとなの?」
「もうちょっとです。つかれたのなら、俺の背中にでも……」
「い、いや、それは恥ずかしいし、怒られそうだからやめておくね!」
誰に、怒られるかは、いわないけれど、グランツは察してくれたようで「そうですね」というと、もう少しなので、と、全く汗一つ書いていない顔で、私に言ってくれる。ラヴァインも、全くつかれていない様子で、つかれているのは私だけのようだった。
まあ、体力が違うから、なんて言い訳して、私は、歩き続ける。そうして、もう少しだと言われたとおり、神殿らしきものが見えてきた。
(神殿というか……ピラミッド……みたいな)
聖女殿の近くにある神殿とは明らかに形が違った。ここは、設定曖昧なのか、なんて、ツッコミを入れつつ、そびえ立つピラミッドのような神殿を見て、ここに、私達が求めるアイテムがあるのかと、ゴクリと固唾を飲み込んだ。