テラーノベル
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「……疲れてないですぅ~」
「何でそんなに反抗的なんだよ」
彼はクスクス笑い、私の髪を弄ってくる。
「反抗期ですぅ~」
「……子供に『お父さんの靴下臭い』って言われたらショックだなぁ……」
いきなり尊さんが斜め上の事を言い出すので、私は噴き出す。
「尊さん、別に足臭くないじゃないですか」
あえて彼の足の匂いを嗅いだ事はないけど、覚えている限り尊さんが臭かった事なんてない。
「そう思われないように、ケアしてるだけだよ」
「私だったら、『お母さん食べ過ぎ』って言われるのかなぁ……」
あり得そうな事を言ったら、今度は尊さんが噴き出してクツクツと笑い出した。
「子供まで、わんぱくストマックの遺伝するかもな」
「家計が圧迫されそう……!」
「別にそれぐらいで破産しねぇよ」
会話しながらも尊さんは私の髪を撫でていたけれど、その指先がツ……、と耳をなぞる。
ゾクッとしたけれど我慢したら、彼は耳のひだひだを何とはなしに撫でてきた。
「あーかり」
その、少し甘えるような声音を聞いて、胸の奥が疼く。
(恥ずかしいけど……)
私は耳に触れている尊さんの手を両手でキュッと握り、チラッと上目遣いに彼を見て言った。
「乞うご期待」
すると彼は、クシャッと破顔した。
二十時になると浴槽の温泉が貯まった。
湯船にはプカプカと、ポプリみたいな物が浮いている。
ここの温泉の泉質は炭酸水素塩泉らしく、傷や乾燥、冷え性、リウマチや打撲捻挫……等々、色んな効能があるみたいだ。
アメニティやシャンプー類は月野リゾートオリジナルの物で、ここだけでしか使えないと思うとワクワクする。
お互い、髪はさっき洗ったので、体を軽く洗ってサッと温まってから出ようという事になり、いつものように尊さんが先に体を洗い、浴槽に浸かっている。
「アカリンが入りますよ」
「ミコティは『どうぞ』と言いました」
私たちは絵本みたいなやり取りをして、クスクス笑う。
「あぁ~、気持ちいい~……」
私はザブー、とお湯を溢れさせ、温泉に浸かって溜め息をつく。
「気持ちいいと声出ちゃいますよね」
「だな」
二人でクスッと笑い合ったあと、私は真顔になった。
(気持ちいいと声が出ちゃう!? まんまやんけ!)
温泉が気持ちいいという意味で言ったのに、エッチしたら気持ち良くて声が出るという意味にもとられかねず、私は一人で真っ赤になる。
けれど尊さんは気づいていないみたいで、ゆっくりとお湯に浸かっている。
(どうしよう……。気まずい……)
内風呂なので露天風呂みたいに景色を望める訳じゃなく、密室二人きり事件だ。
おまけに湯船の中で今にも触れ合いそうだし、まさに一触即発。いや、触られただけで始まらないけど!
そうは言うものの、全裸だし密着して並んでるし、ゴングが鳴る直前だ。
何を言って場を繋ごうか迷っていた時――。
「緊張するな」
尊さんがフハッと笑い、私の手を握ってくる。
その瞬間、ドッキーン! と心臓が鳴り、声が出てしまいそうになった。
「ソッ、ソウデスネッ」
上ずった声で返事をすると、私の顔を見た彼はおかしそうに笑う。
「なーに緊張してんだよ」
さらに彼は私の耳たぶをフニフニと揉み、フェイスラインをスルッと撫でてくる。
「お……っ、お触り代、求めますよ……っ」
「ネコハラだ」
小さく笑った尊さんは、私の顎を捉えてチュッとキスをしてきた。
「キスで払ったら駄目か?」
至近距離で見た彼の眼差しがやけに妖艶で、照れる事も忘れてしまう。
――ずるいなぁ……。
――この人、いつも格好いい。
私は口を曲げてたじろいだあと、彼の手を軽く握って囁いた。
「体で払ってください」
コメント
1件
朱里ちゃんだけでなく、尊さんもドキドキ💓なのかな…!?🤭💕