あれから数日が経って煌とは一言も話していない。
こちらを気にしている様子は感じられるが、話しかけては来ない。
ただ、今日は違った。
5時間目の授業中、
カサッ
隣から紙の切れ端が飛んできた。
中身を見ると
”希美の過去のことこのクラスの人に話した。ー”
「は?」
先生[どうした?秋月。]
「あ、えっと、何でもありません。」
先生[そうか。]
驚いて声が漏れてしまったようだ。
隣の煌の方を見るが、何事もなかったかのように授業を受けている。
私の過去を聞いて近づいてくる人なんかいない。
前の学校でいじめられたときに、唯一優しくしてくれた人がいた。
でも、私の過去を聞いた瞬間すぐ離れてった。
自分から聞いてきたくせにね。
私なんかに優しくしてくれるような人でも離れていくのだから、
私のことを犯罪者の娘と思ってる人たちが知ったらどうなるんだろう。
5,6時間目はみんなに何を言われるんだろう、言われたらどうしようとばかり考えて
授業に全く集中できなかった。
6時間目と帰りのホームルームが終わり、なにか起きる前にと急いで準備をしていると、
〈ねぇ、秋月さん。煌くんから聞いたんだけど…〉
ドクンっ
だめだ。自分の息が次第に荒くなっていくのがわかる。
気がつくと私は階段を駆け上っていた。
いつの日か、言われたことがある。
〈ねぇ、秋月さんって虐待されてたんでしょ?じゃあさ、”痛いの大丈夫だよね?”〉
そう言って殴られたことがある。
ただ、そうなるとは限らないし心の準備をしていたつもりだった
けど、やっぱり体が聞くことを拒絶している。
そして、走った先でたどり着いたのは屋上だった。
ドアを開けて屋上を囲む柵に手をかける。
”死にたい”
何度も思ってきたこと。でもいつも怖かった。多分その頃は生きていたいと
多少は思っていたんだと思う。
でも、今は違う。私の体が勝手にここまで来た。
死ぬことを拒んでいない。なら、迷うことはない。
死んだら弟に怒られちゃうかな?
死ぬと決めた瞬間はいつだって心が軽くなる。
もう過去に縛られることはない。解放されたい。
柵に足をかける。下から騒がしい声が聞こえるが、もう私には関係ない。
片足を出す。後は力を抜くだけ。
だけだったなのに、
ガシッ
『だめだ!』
「なっ」
煌が手首を掴んできた。
「っ離して!」
『離さない!』
「離して!もう疲れたの!死にたいの!」
『やだ!今日は絶対に離さない!』
煌と出会って何度目のやり取りだろう。いつも煌の手を振り払ってきた。
でも、今日はいつもより強い。柵の内側へ引き戻されてしまう。
ドサッ
「っ離して!もう嫌だ!」
手足を柵に伸ばすが煌の力が強く、腕から逃れられない。
『ごめん。』
「謝るなら離して!もう…嫌なの。泣」
『うん。』
「犯罪者の娘とか、もう言われたくない!」
『そうだね。そうだよね。ごめんね。今まで一人にして。』
「弟に、大翔に会いたい。泣」
バンッ
「ビクッ」
〈はぁ、はぁ、秋月さん!〉
入ってきたのはクラスメイトたちだった。
〈いままで、ごめんなさい!〉
「…え?」
〈私達、秋月さんのこと犯罪者の娘だなんて思ってなかった。でも、
周りでそういうふうに言ってて、どうすればいいかわからなかったの。〉
〈でも、結局私達は間違ってた。もっと早く、秋月さんの味方だって
言ってあげればよかった。本当にごめんなさい。〉
《秋月さんがあんな過去を抱えていたなんて知らなかった。
私達で良かったらさ、いつでも話とか聞くし、頼ってくれていいよ。
あっ、すぐとかじゃなくていいっからね?でも、少しずつ信頼してくれたら嬉しい。》
『希美。君は一人じゃない。ちゃんといる。そばにいてくれる人たちが。』
不安だった気持ちがすっと消えていった。まるで憑き物が落ちたようだった。
〈えっ、大丈夫!?どこか痛む!?〉
「あれ、私なんで泣いて…」
頬に手を当てると涙で濡れた。
その後も涙は止まらなかった。
煌は今まで泣いてこなかった分だよと言っていた。
明日から修学旅行なんで、滑り込みで投稿します!
急いで書いたので、ちょっと変かもしれません。
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