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萩原なちち
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いつきさんも今、僕のせいでめちゃくちゃに幸せだったらいいな。
「……大切にしたいから。ちゃんと、準備しますね」
そう言って、彼はしゅうとさんからの贈り物を手に取った。
もう、心も身体も準備はできているから、そんなに気を遣わなくていいのに。
「あっ、いつきさん……っ!」
優しく触れていた彼の指先が、不意に強さを増す。
やだ。いつきさんがキスで塞いでくれていないと、高鳴る鼓動と声が溢れすぎてしまう。
頭の中は真っ白な快感に支配され、自分の表情なんて、もう自分でもわからない。
身体が大きく震えて、込み上げてくる熱が一気に溢れ出した。
「……ゆうたさんって。本当は、情熱的なのが好きでしょ?」
僕を見下ろして、いつきさんがニヤリと「悪い顔」で覗き込んできた。
あぁ、もう。どうせ全部バレてるんだろ?
あんたになら、何をされてもいい。もっと、俺を奪ってくれよ。
想像以上に熱を帯びたいつきさんの鼓動を、すぐ近くで感じる。
余裕のない表情も、時折「大丈夫?」と優しさが滲み出るその口元も。
……本当に好き。大好き。
「いつきさん、もっと……!」
「ゆうたさん、大好き、あっ……!」
激しく重なり合う衝撃に身を任せ、夢中で彼を抱きしめる。
同時に、二人の境界線が溶けてなくなるような、熱い一体感が全身を駆け抜けた。
……え、待って。いつきさん、幸せなはずなのに、なんでそんなに落ち込んでるの?
「……ごめんなさい。焦りすぎて、準備するの忘れちゃいました。あんなに、たくさん貰ったのに……」
「いいですよ。僕、気にしてません。……幸せだったし」
「違うんです。俺、ちゃんと調べたんです! ゆうたさんを傷つけないように、ちゃんとしなきゃって。なのに、俺……」
ちゃんと考えてくれてたんだ。僕のことをそんなに大事に思ってくれていることが、何よりも嬉しい。
「ありがとう。……今度は、一緒に準備しましょうね?」
「……一緒に……。うわぁ、かわいい……!」
そんな風に笑い合いながら、その後は何度も触れ合い、確かめ合い、無邪気に愛を重ねた。
遊びの延長線上に愛があるような、最高の夜。
いつきさんは、過去の誰かともこんな風に笑っていたのかな。
それとも、僕だからこんなに楽しんでくれているんだろうか。
幸せを感じれば感じるほど、いつきさんの過去も未来も、すべて独占したいという欲がどんどん湧いてきてしまうんだ。
「……その顔。流石に今は『クリエイティブモード』じゃないっすよね?」
「……何考えてるか、バレましたか?」
いつきさんが僕の顔を覗き込む。
「俺も今は、ゆうたさんのことしか考えてないです。……多分だけど、同じ感じなのかなって思いました」
「……そっか。同じ、なのか」
「そうです。今、俺の隣にいるのはゆうたさんで。ゆうたさんの隣にいるのは、俺です。もし何か不安になったり、伝えたいことがあったら、全部ぶつけてきてください。なんでも受け止めますから」
この人、本当にエスパーなんじゃないかと思う。
人の気持ちに敏感で、誰かのために何かしてあげたいと本気で思える人。きっと、綺麗事だけじゃ済まされないことも、たくさん経験してきたんだろうな。
「ふふっ。はい、じゃあ一つだけ」
「はい、なんでもどうぞ!」
「すっごい、お腹空きました。いつきさんのカレー、一緒に食べたいです」
「うわっ、実はさっき本当はカレーのこと考えてました!? 俺、カッコつけたこと言ってめっちゃ恥ずいじゃん!」
「さぁ、どうでしょう?」
さっきの小さな不安は、ごめんね。教えてあげない。
だって、これ以上いつきさんを苦しませたくないから。せめて僕といる間は、いつもハッピーでいてほしい。僕が、いつきさんの幸せを守ってあげたいんだ。
「うわ! カレーめっちゃ美味しい! 本場の味って感じ。……行ったことないけど」
「本場の味に寄せました! 俺も行ったことも食べたこともないっすけど!」
「せめて日本にあるお店のは食べてくださいよ」
「え、だって怖いじゃないですか。一人で本場感満載の店に入るの」
「え!? 営業マンがそれ言っちゃうんだ」
「うわ! 本当だ! そのノリで行けばいいんだ!」
今気づいた、と本気で自分にびっくりしている。
なんなんだ、この人。本当に面白い。笑いすぎて、さっきからお腹が痛い。
「……ゆうたさんって、そんなに笑うんですね。初めて見ました」
「だって、いつきさんが面白いんだもん。久々です、こんなに笑ったの」
「え、嬉しい! 調子乗っちゃお」
ニコニコ笑って、本当にかわいい。
カッコよくて、優しくて、面白くて、お料理も上手で……。この人にないものって、一体何なんだろう。
「ん? 何か付いてます?」
あまりにも僕が見つめるものだから、いつきさんが戸惑っている。
あぁ、嫌だなぁ。僕の目の前から、この人がいなくなるなんて。ずっと、ずっと、一緒にいたい。嫌だって言われても、離したくない。
「……好きすぎて、見惚れちゃいました」
「……うわー。それ、もう離したくないやつ!」
「あはは。それ、どこかで聞いたことある」
「こないだ、『裏ゆうたさん』が言ってました」