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『…私の最期は、呆気ないものだった。』
『私はリィン・システムを持ってた。』
『ある人から譲り受けたんだ、私はいらないから、と。』
『あるメイドだったかな。』
『…もう昔のことだから…あまり覚えてないけど…』
『それを私は…椎名にタヒんでほしくなかったからと、椎名に渡した。』
『幸い、身体に埋め込んでた訳じゃないからね。』
『…そして、椎名を親御さんの元に送り届けて、1年ぐらい経った時…私は、不摂生が祟ったのか、心臓発作を起こして…そのままタヒんでしまったんだ。』
「…そう、私はとうにタヒんで…」
『…気がつくと、真っ暗な空間の中にいた。』
『そして夜…私は現実世界で目を覚ました。』
『とっくにタヒんだはずだと思った、けれど違った。』
『私は、椎名の”身体の中”に、もう1人の椎名として生まれ落ちていた。』
「…ずっと、呪いと向き合うなんて出来ないと思っていた。」
「けれど椎名は…私よりも強い子になったから。」
「私も…前を向かないといけないんだ。」
『…さて。』
『…椎名は、私が思ってるより何倍も、何十倍も強くなった。』
『だから、これを話したっていいって思ったんだ。』
『椎名、強くなったね。』
『私の名前は…レイマリ。』
『正真正銘、椎名を拾った研究員だよ。』
「…これでいいんだ。」
「私は…消えられない、リィン・システムの禁忌を知らなかったから。」
「私と椎名の…繋がりになってしまったから。」
「…あとは椎名に任せよう、残酷な思い出もいつかは…思い出さなくてはいけない。」
「私は親でもなんでもないし、3年くらいを共に過ごしただけの人間だけど…」
____
「…ん…」
椎名は、目を覚ます。
少しだけ…眠った感じがする、そんな目覚めだ。
「…な、なんで…」
椎名はいつもより良い目覚めに困惑を見せる。
_そして、はっと思い出して、ノートを見た。
椎名は、目を丸くした。
段々と鮮明になる景色は、まるで水を汚した何かを取り除くような、霧を晴らしていくかのような_そんな感覚だった。
「…ただの人間だ、だけど…」
「…椎名の幸せを…世界一願ってる…」
椎名は、崩れ落ちた。
正体なんてものは、あまりに近いのに、思い出せない場所にあって、空白で、ぼやけた記憶が、段々と、形を成していく。
「………幸せ願うんなら…もっと早く言ってよ…!!」
ポロポロと零れる生ぬるい涙が、床へ滴っては消える。
「私、レイマリさんが思うより…ちゃんと強くなれたんだよ…」
「ねぇ……なんで言ってくれなかったの…!?」
「…私だって…感謝してたんだよ…?」
「なんも言わないまま…!!タヒんで…感謝を伝えたいって言っても…連絡もつかないし、親はなんにも言ってくれないし……!!」
「…ばか…」
その声は震えていた。
椎名はうずくまって泣いていた。
今はあまりに情けない姿かもしれない_だが、今だけは…こうやってでも泣きたかった。
「…っあ、ぁああ…!!」
「なんで、なんでぇ…!!」
「…なんで隠すの…なんで、呪いって、なんで…」
「っぅ、あぁ、あぁあ…!!」
まるで子供に戻ったみたいに、今まで抱えてきた全てが線となって繋がったくせして、その答えはあまりに残酷なものであったことに、椎名は泣くことしか出来なかった。
_命を繋ごうとしてくれた人のことすら忘れていただなんてあまりに人でなしのような_そんな悲しみが身体を蝕んだ。
ひどい姿なのだろう、そう思っても、動くのは嫌であった。
今だけは_
命を救った恩人が、今の全ての原因だということ_親友を苦しめたということが、許せないくせして憎めなくて、ぐちゃぐちゃに混ざった悲しみは黒く染まっていく。
「あっぁあ、あ、ぁあぁ…」
「っぅあぁ…ぁああぁ…!」
「どうじだらいいの…だれか…たすけてよ…!!」
「ねぇ……!!」
「っ…わたし…わたし……」
「…わ、たし…」
「…なんで…わすれてたの…」
肩を震わせながら、ゆっくりと立ち上がる。
スマホを開き、りりに連絡した。
『レイマリさんと話した。』
『本当にごめんね、ごめん。』
既読はすぐについた。
_きっと大丈夫だろう、そう思い、椎名は涙を何度も吹いた。
腕で目を覆うように、隠すように_
「…っうう…げほ、っげほ…! 」
大声で泣いた反動か、大きく咳をする。
ふらふらになりながら歩いて、リビングに降りる。
赤く腫れた目を隠すように俯く様子は、親の顔を見たくないかのようであった。
椎名は、深くため息を着く。
_そうか、今日は休日であった。
_すっかり忘れていたのだろう…そう椎名は思う。
恐らく仕事に出かけたのだろう、珍しく両親は、どちはもリビングには居ない様子であった。
机を見ると、両方が休日出勤であることが手紙に書き残されていた。
テレビで、あるニュースが流れている。
_ニュースは、皇であろう人間が、何かを話しており、椎名はそれに耳を傾ける。
「今回、イデアリス財閥当主様を通さず、わざわざイロニア財閥当主様が前へ出たのには、なにか理由があるでしょうか?」
インタビュアーが、街に張られたバリケードの中でそう質問する。
どうやら、普段は前に出ず、裏で動く財閥のようだ。
当主は、姿勢を改めて正すと、頷いた。
「はい。…リィン・システムに関して、わたくしが分かった事を皆様に共有するため、ウパパロン様を通さず私…”レイラー”が、表立って発言することといたしました。」
「…リィン・システムについて?」
椎名は呟く。
画面の向こうのレイラーは続ける。
「…まず、研究の方が遅れてしまい、申し訳ございません。 」
「…このような発表ができるに至ったのは、ある方とわたくしが結託したためで、ある方の研究に私も加担したためです。」
「…なるほど、つまりリィン・システムの量産は可能なのでしょうか?」
「…結論から言いますと、不可能だと思われます。」
「パーツを共に解析したところ…これは今存在せぬ成分で作られたものなのです。」
「…存在しない成分?」
椎名は、顔を上げ、テレビの画面に注目した。