「競泳対決」
私は絡んでいた視線を外し、抱えた膝に顔を 埋(うず)めた。
「…… 千夏(ちなつ)?」
となりから不思議そうな声がする。
当然だ。 佐伯(さえき)は私が昔助けたことのある子だと気付いていないんだから。
でも……今だけは無理。
少しでも瞳を覗かれたら、涙が 溢(あふ)れてしまいそうだった。
ずっと会いたいと思っていた人がここにいる。
会えたら伝えたいことがたくさんあったはずなのに、胸が詰まって言葉が出てこない。
少しして、遠くから集合の号令が聞こえた。
男子が 遠泳(えんえい)から帰って来たんだろう。
私はゆっくり顔をあげ、みんなのいるほうに目を向けた。
「……いかなきゃ」
次はうちの生徒会主催の競泳だから、もう戻らないと。
目をこすり、ポケットに貝殻を入れて立ち上がる。
佐伯はなにか言いたげだったけど、同じように立ち上がり*************************
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