テラーノベル
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💚「………やだなぁ」
目が覚めると、パンツの中が汚れている。6年生になってから、こんなことが増えて、俺はうんざりだった。おちんちんから、おしっこじゃない、ネバネバした白い液体が出る。なんだかお漏らしみたいで恥ずかしいし、初めてこの現象が起きた時には本気で病気じゃないかと心配した。誰にも聞けないので自分で調べた。
夢精、と言うらしい。
俺ぐらい、もしくは、俺よりも幼い年齢でも起こりうる男子の生理現象だそうだ。
💚「はぁ」
洗面所で汚れた下着を洗っていると、急に腰に纏わりついてくる感触があった。
💙「おあよ」
弟の翔太だ。まだ眠いのだろう、舌が回っていない。俺は慌てて水道の蛇口を止め、パンツを隠した。
💚「翔太、離れて」
💙「や!!」
さらにぎゅうっと、腰に回された手に力が籠る。パンツからあらかた精液が落ちているのを横目で確認して、無造作に洗濯機に放り込んだ。他の洗濯物に混ぜてわからないようにして洗剤を投入し、そのまま回す。
💙「おせんたくぅ?」
小首を傾げた翔太が可愛らしい。
頭をくしゃっと撫でると、目を閉じて嬉しそうにした。
💚「まだ起きる時間じゃないよ。もう少し寝よう。おしっこは?」
💙「するぅ」
翔太をトイレに連れて行き、夜のトイレが怖い翔太を開いたままのドアの前で待つ。夜明け前で、窓の外もまだ暗かった。両親の部屋もまだ静かだ。もう少ししたら、母さんが起きて来る頃だろう。共働きで大変なのに、母さんは俺たち兄弟の朝昼夕3食分をきちんと用意して出掛けて行く。家族がなかなか揃わなくて少し寂しいけど、本当にありがたいと思う。
💙「終わったの」
トイレから出て来た翔太の手洗いに付き添い、一緒に子供部屋に戻る。翔太は俺から離れないで、一緒に寝ると言いだした。
💚「いいよ。おいで」
翔太は嬉しそうに擦り寄ってくると、俺の布団に入ってきて、目を瞑った。小さな手は俺のパジャマをぎゅっと掴んだままだ。翔太の柔らかい髪が頬にあたってくすぐったい。やがて規則正しい翔太の寝息が聞こえ、その小さな背中を優しく撫でていたら、いつのまにか俺も眠ってしまった。
🤍「こんにちは、亮平くん、翔太くん」
今日も村上先生の授業の日。
夏休みは大学生の先生もお休みだから、集中的に勉強が出来る期間だということでいつもより家庭教師の時間も長めだ。俺と遊ぶ時間が減ってしまい寂しいのだろう、今日も翔太は大人しくしているからと村上先生と指切りして、部屋の隅で塗り絵をしている。一生懸命に色鉛筆を塗り込んでいくさまは、はたから見ていてなんだか可愛らしかった。
🤍「今日は漢字の書き取りしようか」
💚「はい」
ドリルの漢字テストをし、間違えた漢字を繰り返し練習していく。村上先生はにこにこと俺を見ていた。
村上先生は、ベネズエラ人と日本人のハーフらしくて、掘りの深い顔立ちが印象的な美青年だ。背も見上げるほど高いし、ハッとするほど美しい瞬間がある。
🤍「亮平くん、手が止まってるよ」
今もついつい見惚れてしまって、手が止まっていた。慌てて鉛筆を握り直すと、先生が俺の右手に自身の大きな手を重ねた。
💚「……先生?」
🤍「手、小さいね。可愛い」
💚「えっ」
鉛筆を握ったままの俺の右手を持ち上げ、手の甲に優しく口付けした。
思わず息を呑む。
手を離し、ニコッと笑うと先生はまるで何事もなかったかのように、書き取りを続けるように促した。
顔がカアっと熱くなる。大人は普通にすることなんだろうか。変に思うのが変なのだろうか。
🤍「うん、亮平くんはほとんど間違えないし、書き取りもよくできてる」
先生はそう言うと、また俺の頭を撫でて来た。
弟の手前カッコ悪いのと、なんだかバカにされたみたいでこういうのはあんまり好きじゃない。そして、その好きじゃないのを見透かされてなお、また同じことをされている気がしてもやっとする。
💚「先生、あの」
🤍「亮平くんは、コドモだね」
💚「えっ」
🤍「可愛いよ。さ、次は算数にしようか」
………どういう意味だろう?
こうやってわざと意地悪を言ってクスクス笑う先生は、あんまり好きじゃない。俺だって来年は中学に上がるし、翔太の面倒だって毎日きちんと見てるのに。
💙「喧嘩してるの?」
不穏な空気を感じたのか、翔太がいつのまにか、脚元まで来ていた。心配そうに下から俺を覗き込んでいる。
🤍「してないよ。翔太くん、塗り絵飽きちゃった?」
先生は翔太を軽々と抱き上げると、立ったまま俺にウインクした。
続きをしろと言うことらしい。
翔太は急に高い所に持ち上げられてきゃっきゃと喜んでいる。
何もかも面白くなかった。3人で勉強?するようになってから、人見知りの翔太も少しずつ村上先生に打ち解けて、大人しくしてるけど、それがなんだか面白くない。
先生は俺の先生だし、弟は俺の弟だ。
こんなことに拘ること自体、やっぱり俺って子供っぽいのかな。
💙「ムラカミ、すきー」
🤍「こら、呼び捨てやめろ」
先生がこちょこちょと翔太の腹をくすぐり、ゲラゲラ笑う翔太を見ながら、俺は耳を塞いで目の前の数式に集中することに必死になっていた。
続
コメント
9件
ねーヤキモチ妬いてんじゃんかわいいな💚
かわいいかわいいかわいい どうしましょう。新しい扉が開いてしまいそうです🤦♀️
ムラカミー、が可愛すぎる モヤあべも含めて兄弟が可愛くて愛おしすぎる