テラーノベル
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記録を書き始める前に私がその世界を足を踏み入れたきっかけの話をしたい。
私はこの物語で名前をみなと名乗ることにする。
そんな私は普通の女の子だった。
ラーメン屋でアルバイトをしながら学校に通って友達もいて彼氏もいた。
片親で出生や家庭の事情は複雑だったがそれもよくある話だ。
そんな私には当時、同い年の親友の女の子がいた。
実家が広島で声優を志して上京してきたという。
一方私の実家は都内で恵まれていた。
上京する苦労を知らない私は、少しでもその子の力になりたいと頼られたことには出来るだけ応えるようにしていた。
最初は小さなお願いから始まったそれは気付けば金銭の話に広がっていた。
生活が厳しくご飯も食べれないのを見ていられず、次第に毎月5万円ほど貸すようになっていた。
そんなやり取りが1年半ほど続いていたある日、深夜1時に不在着信が入った。
そんな時間にかかってきたのは初めてで心配になりすぐに折り返した。
彼女は電話の向こうで泣きながらただ「もう死にたい」と繰り返していた。
話を聞けばホストクラブに通っていて売り掛けを断れずに1200万円ほどに膨らんでしまったらしい。
風俗の仕事をしているが借金の返済が追いつかず、闇金しかもう借りれるところがないが収入によって上限額がある為貸してもらえないとのことだった。
私は金銭で困ったことがあまりなく、闇金がどういうものなのか漫画くらいでしか知らなかった。
「もう死にたい。みなちゃん助けて…」
彼女は保証人がいれば上限額を上げてもらえる為とりあえずなんとか凌げるという話をした。
命と天秤にかける話を持ち出されて私は断れなかった。
彼女のことを信用していたのだ。
こうして私は次の日新宿のとあるカラオケの個室に呼び出された。
そこに怖めのお兄さんが来て、親友と3人で会った。
「お金は命よりも重いから」
と言われ親の名前から実家の住所、携帯にある連絡先やアプリなどSNSの全てから写真まで全ての情報を渡すように言われた。
怖くて手が震えたがむしろそこまで行って後戻りが出来るような空気ではなかった。
シグナルというアプリを入れられ、毎朝7時にそこで連絡するので必ず返してください、という脅しを受け解散した。
親友は泣きながら迷惑をかけてごめんと謝ってくれた。
私はその時自分のことよりもその子が風俗をしていること、とても疲弊していることが心配だった。
それから変わらずに3ヶ月が過ぎていき、毎日7時に来る連絡にだけ返信をしていればいいと思っていた矢先だった。
朝の8時に電話がかかってきた。
知らない番号だったが調べても出てこなかったのでかけ直した。
先日会ったお兄さんの仲間の人らしく、親友からの今日の連絡が来ないと言われた。
私も連絡しようと思ったが電話は繋がらず、LINEを含めたSNSのアカウントは全て消えていた。
心配で親友の住んでいるアパートまで行ってみたがポストの中はパンパンで部屋にいる様子もない。
飛ばれたのだ。
彼女は重圧に耐えられなかったのかもしれない。
1200万円と聞いていた借金の額は利息を含めて3ヶ月で2600万円に膨れ上がっていた。
私が騙されただけなのかもしれない。
それでも相手はカタギではない。
お金を取り返すのが仕事だ。
19歳を迎えたばかりの私には避ける術も分からず、親や妹の命を盾に脅され思考は停止していた。
返済の為に少しずつ少しずつ金額の大きい夜の世界に入っていった。
片親に金銭的な迷惑も心配もかけられない。
闇金は毎週決まった時間に決まった金額以上を指定された場所で手渡しで返さなければいけない。
毎週520万円の利息が最低限の支払いとなり、521万円以上を返さなければ元金は減らない。
ガールズバーから始まったそれはすぐに風俗の入口まで落ちていった。
親友からの電話を取った日、私の人生は変わったのだ。
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