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店を出た後、私達は商店街をブラブラと歩いていた。
周りを見渡しても人、人、人。
私は人混みが苦手だけど、るいが居たらはぐれないだろうし。
電車に乗っていた時は危うかったが、もう大丈夫だろう。
そう思い、手を軽く握ったまま歩き続ける。
まだ私は、これから何をするか知らされていない。
これもサプライズの一環として捉えれば良いのだろうか。
すると、るいが急に立ち止まった。
横顔を見ると、大きく目を見開いていた。
どうしたの、と聞こうとした瞬間―――
「ぎゃああああああああああ!!!!!!!!!」
と、女性の悲鳴が聞こえた。
私は驚いたが、何かが私の視界を遮って 何も見えない。
パニックに陥っていると、段々意識がもうろうとしてきた。
視界がぐわんと歪む。
「(ああ、もう無理だ―――)」
私はゆっくりと目を閉じた______
「(ん……、あ、れ?ここ、どこ……?)」
「(私、どうなってたんだっけ――)」
わけが分からずにいると、るいがこちらに駆けつけてきた。
真剣な顔つきをしている。
「ど、したの…?」
「あ、れ……」
そう、思った通りに声が出ないのだ。
理由は分からない。
だから、るいに上手く言葉を伝えられない。
すると、彼が話しだした。
「るな!!大丈夫か!?」
「……だ、いじょ、―――ぶ」
「ゴホッ、ゴホゴホ!!」
やはり声が出ない。
そんな私に、るいはゆっくりと言った。
―――私は、車に轢かれたのだと。
「え、……?車、に、…?」
「………ああ。だから、るなはしばらく入院生活を送ることになるな―――」
「い、や……だ」
必死に振り絞った声も、儚く零れ落ちていく。
この事実に納得できなかった。
「____ごめん」
「る、い、…?」
「守れなくてごめん…」
「………」
私は、そのるいの言葉と共に涙が溢れてきた。
何故だろう。
こんなにも涙が溢れ出るのは。
悲しいのか?
寂しいのか?
あやふやな感情が、余計に涙を引き寄せる。
そんな私の姿を見たるいは、途方に暮れていた。
―――しばらくベッドに横たわり、視線をあちこちに向けていると、気になるものがあった。
「る、い…」
「どうした?」
「その…、体の、傷はっ、ゴホッ!! 、なに―――?」
「……」
るいは黙り込んだ。
しばらくして、こう言った。
「……昨日こけた時の傷だ」
彼が言うには、昨夜コンクリートの床でこけてしまい、痣が出来たのだと言う。
だけど、私はそれを真に受けていなかった。
こけた痕にしては、明らかに酷すぎるからだ。
まるで熊に引っ掻かれたかのような、そんな大きな傷。
真実が気になったけど、私はあまり深堀りしなかった。
たぶん、私を守ってくれた時の傷なんだと思う。
何故分かったかって?
瞳を見れば全てお見通しだ。
「………優、しいね……」
少しだけ口角を上げて るいの方を見ると、視線が大きく私とズレていた。
分かりやすい人だ。
話を逸らすかのように、るいが話しだした。
「っと……、一旦当時の状況を説明するな…」
「うん」
「まず、交差点に差し掛かった所。あそこで車が信号無視して、突進してきたんだ」
「っ……」
「――それで、俺はるなの前に立っていた。だから、るなは前が見えなくて混乱してたんだと思う」
「その後、俺だけ横に避けてしまった。」
「あの時、るなを一緒に誘導すれば良かったんだよな……」
るいは悔しげな表情だった。
そんな彼に、私はそっと声をかける。
「あんな状況、誰でもパニックに、な、るよ…っ」
「だからっ、自分をっ、責めないで…」
「傷を負ってるのは、るいも、一緒でしょっ、?」
私は、枯れたか細い声でそう言う。
それを聞いたるいは、ずっと黙っている。
―――すると、るいの口元と目元がわざとらしく緩んだ。
そして言った。
「ま、そーだよな__!」
「俺が肯定的じゃなきゃ、るなが元気になるなんて無理だよな」
「毎日見舞いに来るから、楽しみに待っとくんだぞ?」
るいが私の頭を撫でた。
鼓動がどんどん速くなっていく気がする。
喜怒哀楽、よく分からない感情が私の心をよぎっていた。