ガラーー…
私は、看護師さんに呼ばれた部屋の扉を開く。
正直なところ、ここ以外に寿命が擦り減る力を植え付けられる人は探せないので、病院で見つかってくれたら幸いなのだが…
「今日は、どのようなことをお聞きたいのですか?」
人の良さそうな眼鏡をかけている細身のお爺さんは、私に問う。
「実は…能力を植え付けることができる人がいないか聞きたくて…」
「はあ…なるほどねぇ…ちょっと探してみますね。」
「お願いします」
私は嘘をついたが、お爺さんの先生は、なんとなく察してくれたようだ。良かった良かった。と、安心した。
私は部屋を出て、看護師さんにまた呼ばれるのを待っていた。
「エルさ〜ん」
呼ばれたので、席を立つ。
「いらっしゃいましたよぉ」
私は心の中でガッツポーズをして現実に戻った。
「お名前って聞いてよいですか?個人情報ですので、ダメですかね?」
「うーむ…一応、知りたい理由を教えてくれますか?」
「はい」
私は事実を伝えずに嘘をついた。が、先生はお見通しのようだ。
「嘘ですよね?」
「本当です。」
「そうですか?私の予想では異世界から来て未来でも知っているのかと思いましたが…」
やばい。
全部合ってる。
こんなに予想って、当たるものなの?
「はぁ…」
ため息をついて私は言う。
「そうですよ。全部、今おっしゃったことで合っています。」
「…やっぱり、そうなのですね」
私は疑問に思ったことを問う。
「何故、予想が合っていたのですか?」
「…それは、私の能力ですよ。私は、「未来を予測する能力」を持っているので、エルさんも、後に起こる“重大な事件”も知っているんです。」
「私もです…」
それは、私が創った世界の物語で、後にわかること。
私が、強くなれば強くなるほど、寿命が擦り減る能力を、植え付けられていまったということを、この世界の住民達に知られ、その後、私が別世界の檻に入れられてしまうのだ。
はあ…泣きたい。
本当に、そんなこと起きるなんて思わなかったから、この物語を創っていたのに…
まさか、この妄想が現実になるなんて、思いもしないもん。
「では、お名前と、顔写真が書かれた紙を用意しましたので、こちらをどうぞ。」
「ありがとうございます!」
「後の事件に、お役立ちできたら嬉しいです。」
きっと、役立ちます。
そう、心に留めて。
「ありがとうございました。」
「何かあったら、また来てくださいね」
優しいお爺ちゃんの微笑みを見せてくれた。
私は今、凄く不安でいっぱいだ。
けれど、ティーナと約束してしまったので、ここで待っていないといけない。
これは仕方ないのだ。
でもでも、やっぱり怖いよ。
独りでこの世から去るなんて嫌!
独りで終わる人生なんて嫌!
独りで誰にも会えないなんて嫌!
独りは、嫌だ。
けど、約束ーー…
複雑な心境で、私はここにいるべきなのか、わからなかった。
「あ、次だ、ティーナの出番…」
でも、ティーナには頑張ってほしい。
その願いは変わることはない。
「お隣、失礼しても良いかい?」
…誰だ。
「すみません、ここには私の友達が…」
「あぁ、ありがとう!じゃあ失れい…」
「すみません。」
お前に、私の隣は座らせない。
私の物語では、こいつが一番怪しい。私の設定ではこいつと後で仲良くなって例の力を与えられる設定だ。
だから、近づいたらお前と死闘を繰り広げてやろう。
「…そんなに嫌ですか?」
「はい、では私が他の席に移動します。なので、そこをどいてくれませんか?」
「まあまあ、良いじゃないですか」
「私、潔癖症なもので、他人に触られるの嫌なの。だから、どいて?」
「…」
男は黙った。
潔癖症なんて嘘だ。
だが、男は私の圧に屈したようだ。
「どけ。これは“お願い”ではない、“命令”だ。」
私は、さらに追い討ちをした。
私は、こんなふうに言う人間ではない。
けれど、私ではない「本物のエル」は、このように相手を批判する冷徹な女帝。その二つ名は、「冷徹の天使」である。
私は、エルであってエルじゃない。元々闘いなんて出来やしないしやる気も全くない。
でも、本能が憶えている。だから、なぜか今ならできる気がする。
やっぱり、肉体は「本物のエル」なんだから、私はエルなんだろう。
私、エルで生きていこう。
現実に、彼氏も好きな人も友達もいない。
いるのは私をみてくれない家族といじめる人しかいない。
今は、少し現実逃避させてよ。
これがずっと続けば、私はいじめられないんだから、イタイ想いはしなくていいんだから。
「もう、近づくなよ」
と残して、その場を去ったーー…
コメント
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すごい… やっぱりエリーはすごい小説書けるねぇ(*≧∀≦*) これからも頑張れ(๑>◡<๑)