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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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狭山さんの勧めで、実家には一応無事を連絡した。だけど、「狭山さんと入籍できるまで居場所は言わないし家にも帰らない」と言って両親の言うことは全部突っぱねた。
翌朝の八時に狭山さんから「婚姻届、あかりさんの欄以外全部埋めました」と連絡が来た。一緒に来た婚姻届の画像は、狭山さんの名前と、証人欄に和泉さんと千歳さんのサインが確かに入っていた。
私は「川口にいます」とホテルの場所を教えた。
「いろいろすみません」
「気にしないでください、僕もこうしたかったんです。レンタカーで行きます、十時前後にはつきます」
「私の名前書いたら、すぐお役所の窓口に出して受理してもらいたいです」
「そうしましょう。ホテルの最寄りのお役所検索しといてくれませんか?」
「わかりました」
「入籍したら、昨日言った通り、金谷家まで一緒に車で行きましょう、ご両親心配してるし、説明も必要だし。和泉さんと千歳さんも力添えに顔出してくれるってことなので、途中で二人を拾います」
「はい、お願いします」
狭山さんがつくまで、私は身支度を済ませて最寄りのお役所の場所を調べ、チェックアウトしてフロントの広場で待っていた。
十時少し前に、「あかりさん!」と狭山さんがフロントの広場に飛び込んできた。
「ああよかった、会えてホッとした!」
狭山さんは私を見て、表情を緩めた。
「すみません、心配かけて……」
私は、今更ながらとても悪い気になって、狭山さんに頭を下げた。変な横槍入れられないためとはいえ、わざわざ車飛ばして迎えに来てくれたんだもん、狭山さん。他にも千歳さんや和泉さんに協力仰いだり、実家に連絡回したり、いろいろしてくれたし……。
「いいんですよ、無事でいてくれれば」
狭山さんはそう言い、肩掛けバッグからクリアファイルを出した。
「婚姻届、今書いちゃいます? そこに机あるし」
狭山さんが指差すフロントの隅には、たしかに書類か何か書く用らしい小さいスペースがあった。
「書きます! すぐ書きます」
私はクリアファイルを受け取って、フロントの隅に向かった。備え付けのペンで、自分の欄を埋め始める。わあー、書き間違いだけはしませんように! これ一枚だけなんだから!
ものすごく緊張しながら書いて、何とか書き終わり、私はふうっと息をついた。
「書けました」
「ありがとうございます」
私が書いてる間、狭山さんは近くで待っていた。
「僕、書類入れられるバッグで来たので、提出まで持っておきます」
「あ、じゃあ、よろしくお願いします」
私はクリアファイルに入れた婚姻届を狭山さんに渡した。狭山さんは、受け取ってバッグにしまうまでは普通だったけど、それから少し、何かためらうような顔になった。
「あの……車は裏に止めてあるんで、たいして歩かないんですが、歩く間、その……」
「なんですか?」
いろいろ連絡とって、やることは明確にしておいたと思ったけど、まだなんかあったっけ?
狭山さんは、私の前にそっと右手を差し出した。
「……その、手を繋いで行きませんか?」
「え」
唐突だな、と思ったけど、次の瞬間ピンときた。あ、そっか、狭山さん、私が「手も繋いでくれない」って言ったの気にしてるんだ!
あんなこと、言うんじゃなかった。狭山さんは狭山さんなりに、私のこと大事にしてくれて、我慢してたからなのに。
ていうか、狭山さんを怒らせちゃったって司兄に泣いたら
「そもそもまともな大人なら女子高生に変な手を出さないんだよ! 狭山さんはまともな大人でいようとしたんだよこのバカ!」
と怒られたし。狭山さんは大人として振る舞ってたんだ。それに思い至らなかった、私が子供だったんだ。
今もあんまり大人じゃないと思う、私は。だって、もうどうしていいかわからなくなって全部放りだして逃げ出すより、もっと大人なやり方、たくさんあったと思うし。
……でも、狭山さんなら、私が大人の振る舞いできるようになるまで、近くで待っててくれるんじゃないだろうか。私が大人をやれるように、いろいろ手伝ってくれるんじゃないだろうか。
私は、狭山さんの手を取った。結構強めにその手を握った。
「行きましょう!」
コメント
1件
読み終えたわ。あかり、ちゃんと自分で決めて前に進もうとしてるのが伝わってきて、すごく良かった。狭山さんが「手を繋いで行きませんか?」って、あの一言に照れとか誠実さとか全部詰まってて、心臓ぎゅってなったわ。あかりも「言うんじゃなかった」って自分のワガママを反省してるし、二人ともちゃんと相手を思いやってるんだなあ。入籍、無事に済みますように!