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疲れたんだ
⚠️注意⚠️
🎲兄弟ぱろ
nmmn
桃病み , 虐め , 嫌われ
地雷な方は👋🏻
1話 / 溺
俺は兄だから。
ずっとそう言われてきた。
泣く弟をなだめるのも、宿題を見てやるのも、重い荷物を代わりに持つのも。
「ないこはお兄ちゃんやろ」――それが当たり前の言葉だった。
最初は苦じゃなかった。むしろ誇らしかった。兄だから守れる。兄だから頼られる。
……そのはずだった。
けれど、噂は一瞬で俺を壊した。
「女の子をいじめたらしい」
そんな根拠のない言葉が学校に広まった。
友達は口を閉ざし、背中に視線を浴びる日々。
「最低」――その一言が、耳に刺さって離れない。
俺は否定した。必死に説明した。
でも、家に帰れば弟たちが俺を見て眉をひそめた。
「ないちゃん、本当にやってないんやろな?」
「だって、先生も言ってたんだよ?」
信じてもらえない。
あれだけ守ってきたのに、積み重ねてきたはずなのに。
俺は、ただの加害者にされていた。
……だったら、努力すれば認めてもらえるんじゃないか。
そう思って、勉強もバイトも必死にやった。
眠る時間を削ってでも頑張った。
けれど返ってくるのは、冷たい言葉ばかり。
「兄なんだから当然やろ」
「そんなんで偉そうにすんな」
俺は笑った。
……笑うしかなかった。
夜、誰もいない部屋でカッターを握った。
腕をなぞると、赤い線が滲んだ。
痛みと一緒に胸の重さがほんの少し軽くなった。
その瞬間、俺は取り返しのつかないことを知ってしまった。
そしてある日、街角で出会った。
「お兄ちゃん、疲れてるやろ?」
見知らぬ男が差し出した小瓶。
怪しいと分かっていた。でも、受け取ってしまった。
錠剤を一粒、喉に流し込む。
――世界が反転した。
「ありがとう」
「さすがないこ」
「大好きだよ」
……聞こえるはずのない声が耳に届く。
俺は抱きしめられている錯覚に包まれて、胸の奥が満たされていった。
涙が勝手に零れた。
幸せだった。
何年ぶりか分からないくらい、心の底から。
だから、俺は迷わずその薬に溺れていった。