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『あの娘は綾波レイが好き』
プロローグ
視界が歪む。目に見えるものが全てぼやけて見え、俺はその場で倒れてしまった。気が付くと俺はベッドの上で横たわっていた。目の前にはパソコンと向かい合っている女性がいる。保健室の海華(みか)先生だ。どうやら俺は、学校のマラソン大会中に倒れてしまったらしい。先生と目が合った。「気が付いたみたいね、凛くん運動苦手なんだったよね?」 俺は鈴木凛(すずき りん) 球技は愚かランニングでさえバテてしまう程の運動音痴な高校一年生だ。俺はベッドから足を下ろし、よろよろ立ち上がり、ベッドのしわを伸ばして、海華先生に礼を言い、逃げるように保健室を後にした。”恥ずかしい”その言葉に尽きる。今クラスメイトに会ったら馬鹿にされる、早く帰ろう。その事だけ考えていた。家に着き、部屋に入る。机の上には赤点のテスト用紙が散乱していた。
「今日はもう寝よう」
俺はベッドに横たわり、目を閉じた。
1章「和風抹茶パフェ」
カーテンの隙間から入る日光を瞼越しに感じる、朝だ。こんなに気持ちの良い目覚めは何年ぶりだろうか。スマホに触れ時間を確認する。時刻は6時半、いくら何でも早く起きすぎた。そう思い何となく外にでる。小鳥の囀りが聞こえ、朝日が顔を出していた。気持ちがいい。
いつもは車が通っている道路も、朝だからか全然通っていない。少し歩くと息が上がってくる、苦しい。汗もかいていたので家に帰りシャワーを浴びる事にした。家に着くなり、シャワー浴びて髪を乾かす。スマホのバイブレーション鳴った。クラスメートの陽斗(はると)だ。どうしたんだろう。
陽斗「なあ今からファミレス行くんだけど来る?」
どうやら食事の誘いのようだ。断る理由も無いので一応誰が来るのかだけ聞いておく。
「誰が来るの??」
陽斗「涼介(りょうすけ)と翔太(しょうた)がくるよ」
俺「あーわかった行く」
そう告げると電話を切る。飯は今から食べようと思ってたので丁度いいな。そう思いながら身支度をする。髪を整え、眼鏡拭きで眼鏡を拭き、家を出る。集合場所は駅前にあるファミレス。休日だからかいつもより人通りが多い。
そんなことを思っているとトントンと肩を叩かれる、陽斗と翔太だ。
翔太「涼介は少し遅れるらしい」
ボソッと一言。涼介は普段無口で穏やかな性格をしている。でも距離感を感じるというじゃなく、仲が良い故の無口という感じだ。
店内に入る、ドアを開けると同時に風鈴の音と涼しい冷気が当たるのが分かる。ウェイターに席を案内してもらい向かい合って座る。
とりあえず俺はステーキとドリンクバーを頼む。翔太も俺に感化されたのか同じものを頼み、陽斗は金がないからとポテトを単品で頼む。こいつから飯に誘って来たとは到底思えない所業だ。ステーキが届けられ、ドリンクバー用のコップも来た。
涼介「ジュース入れに行かね?」
俺「おう」
何気ない会話だがいつもと違った雰囲気慣れない。ファミレスなんて滅多に来ないからな。涼介はブロンドのコーヒーをカップに入れ、俺はコーラを入れた。
コーラを持って席に戻ろうとする。視界の端に影が映る。ふと横を向くと、黒いワンピースを着た女性がトコトコと歩いている。細い身を包むワンピースのサイズには余裕があり、ヒラヒラとスカートが靡く。
見とれていると、彼女が突然振り返りきょとんとした顔で俺の目を見る。でもすぐに表情が和らぎニコッと笑う。
それに対し俺は何の反応も返す事が出来ず、彼女はまた前を向き歩いて行ってしまった。
涼介が立ち尽くしていた俺の肩を叩く。
「どこ見てんだよ。陽斗が1人寂しくポテトを食べてるぞ(笑)」
涼介軽く嘲笑している。
俺「おう、ごめん」
席に着くと、陽斗が有り得ない量の塩とケチャップをポテトにかけて食べている。それを見た涼介も特に何も言おうとしない。これがコイツらの”普通”なんだろうか。
ステーキをナイフで切る。ごく普通のステーキだ。
何だかんだ食事も終わりに差し掛かった頃、
トコトコと足音が音が聞こえる。
あの女性だ。俺の隣を通り過ぎ、向かいの席に座る。女性はメニュー表を見る事無く、すぐにベルを押した。この店の常連なのだろうか。店員が来て注文を済ませると、その女性は水を1口飲む。水を含む横顔がすごく綺麗で、ずっと見ていられるなと思った。そんな事を思っていると、女性の席にウェイターが来て、女性の机にパフェを置く。抹茶にこし餡にきな粉がのっていて、いかにも「和」という感じがする。
俺「甘党なのかな」
パフェを頬張る女性。手に持つスプーンが眩しい程輝いて見えた。