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ユニーク魔法。
それは、その人だけが持つ唯一無二の魔法である。光闇、その大きな組み分けの下に連なる五つの属性、火、水、木、風、土の魔法とはまた異なるもので、治癒魔法や呪術ともまた違うものらしい。誰かがまねできるものでも、コピーできるものでもないのだとか。
前にもそんな話を聞いたことがあるが、改めて聞いてみると、ユニーク魔法とは本当に凄く稀少なものなんだなあということを知った。アルバやリュシオルは交互に話してくれて、その説明も分かりやすくて、何でそんなに知っているのか不思議だったけど、たんに私が無知だっただけみたいで、トワイライトもうんうんと相槌を打ちながら聞いていた。
何故この話題が続いているかと言えば、やはりグランツについてだった。
アルバも前から、グランツについては気になることが多くあったようで、同じ騎士団に属していても彼の素性が謎に包まれていることに違和感があったと言っていた。
「グロリアスは、入団してからもずっと一人で剣を振っていたので。勿論、周りが平民上がりの騎士だって言うことでハブっていたんですけど。それでも、入団試験でトップの成績をたたき出して入ってきたので、人目置かれる存在でした。亜麻色の髪も日の光を浴びると金色に見えるなど周りは言ってましたし。まるで、皇族みたいと」
「この帝国の皇族の親戚とか?」
と、私が突っ込めば、アルバはあり得ません。と首を振った。
何でも、ここの皇族の親戚含め、系統は瞳の色が暖色らしく、赤色が多いらしい。まあ、リースを見れば分かるけれど、不思議なことに皇族の血筋、親戚は赤やオレンジなどが多く、翠などいたことが無いらしい。勿論、結婚する人が必ずしも赤色や暖色な訳ではないが皇族の血が濃いためにその他の色の瞳の子供が生れてこないとか。そこらへんは生物学的な感じになるので私はそれ以上聞かないことにした。
となると、グランツは皇族の血筋ではないということになる。勿論、アルバが言ったとおりただ周りが金髪に見えると言っているだけで、たかが見えると、勘違いしているだけなのだ。でも、この帝国では輝かしい金髪は皇族の証でもある見たいに思われているため、金髪であるというのは皇族の血筋ではないかと疑われても無理がない。
「翡翠の瞳の皇族、またその血筋のものがいたとは聞いたことありませんし……でも、ただの平民だったものが誰にも学んでいない剣術を、入団試験をトップで合格するなど前代未聞のことなのです。それに、ユニーク魔法を持っていたことも」
アルバは、信じられないというように話を続けた。
アルバが驚くのも無理ないし、その入団試験というものがどういうものかは知らないけれど、聖女を守る為に組まれた騎士団の入団試験であればそれはもう難しいに違いない。それを、剣術も習っていないような平民がトップで通過するなど普通あり得ない事だと。そして、極めつけはユニーク魔法だと。
平民にユニーク魔法が発現すること自体珍し過ぎることで、これまた歴史の中でごく稀だと。
そんな風に言われているのに、グランツにはユニーク魔法があるというのだ。
私は単なる攻略キャラだからそういう設定になっているのだろうと思ったが、実際此の世界にきてみて、その特殊な彼の生い立ちを目の当たりにして何か深いわけがあるのだろうと思った。ゲームをプレイするだけでは、やはり分からない部分があるのだ。まあ、それはリースしか見てこずプレイしてきた私の落ち度でもあるけれど。でも、何度もプレイしているわけだから、見落としはないはずと思っていたのだが。
(そんなに特殊って言うなら、ブライトが興味を持つのも無理ないかな……)
私は、先ほどのブライトの言葉や顔を思い出して、グランツのユニーク魔法について深く知りたいとい彼の思いに納得している部分もあった。
ブライト自身はユニーク魔法が使えないわけだし、勿論、特殊すぎるし攻略キャラの中で使えるのはグランツと、ルートによってはその攻略したキャラには終盤ユニーク魔法が発現したとか何とかはあったけれど、少し、微笑ましいのかなとも思った。ブライトは、劣等感と期待に押しつぶされそうな顔をしているから。ユニーク魔法を使えるグランツに嫉妬しているのかも知れない。
兎に角、彼らが何を話しているのかはよく分からないが、ユニーク魔法と私達聖女の聖魔法の違いについてはおさらいのような形で話が出来た。理解を深めれたし、知識不足を痛感したからもっとこの世界について、魔法について知りたいと思った。私が使える魔法と言ったら限られてくるし、これからも負の感情が暴走した魔物や人と戦うことにもなるだろうし、ヘウンデウン教との衝突だって考えられる。
エトワール視点で進んでいるのか、ヒロインのトワイライトのストーリーで進んでいるのかは分からないが、今ゲームでは度のあたりかよく分からなくなってきた。
確か――――
「ああ!」
「エトワール様、どうしたんですか、いきなり」
「り、リースの……殿下の誕生日……」
私は、ゲームがどのあたりまで進んでいるのかイベントを追って思いだいしていたら、リースの誕生日が明後日に迫っていたことを思い出した。
そのためにダンスを練習したり、プレゼントを考えて利していたのに、ブライトの家に来てドラゴンと戦っている内にすっかり忘れてしまった。今日帰れたとしても、買い物が出来るのは明日になるし、そんな1日で選んだものをそれこそ安いものを渡そうものなら、また何か言われてしまうと。リースは何をもらっても喜びそうだが周りがそれを許さないだろう。それに、私がまだ呼ばれるとは決まっていないし。
そんな風に、私がリースの誕生日と呟いたことで、リュシオルはやれやれと呆れてため息をついていた。アルバは、覚えていたようで、そうですね、と当日の見回りやら何やらの話をぶつくさと言っていたが、私の耳には入ってこなかった。
勿論、トワイライトは呼ばれるだろうし、もしかしたら周りの声でリースとダンスを踊ることになるかも知れない。
「と、トワイライトは」
「はい、何でしょうかお姉様」
「ダンス踊れる?」
「えっと……多少は。上手くはないですけど、踊るのも歌うのも好きです」
と、トワイライトは恥ずかしそうに言った。
上手くはないと言ったが、上手かろうが下手だろうがリースと踊る前提として、彼がリードしてくれるに違いない。リースは何でも出来るから。
とはいいつつ、トワイライトは出来るヒロインなのできっとダンスも上手いことだろうと私は思った。もしもの時、リースと踊るのはトワイライトだから。いや、もしもというか、ストーリー的に言えば私じゃなくてトワイライトなのだろうが。
(でも、リースが望んでいるのは私……)
それは、自惚れかも知れない。
もしかしたら、トワイライトの良さに気づいて彼女に心を持っていかれるかも知れない。だって、彼女は正当なヒロインだから。私は悪役として配置されたキャラクターに転生しているのだから。まあ、そうなったらばっさりリースを切るだけの話である。私のこと好き好きと言いながら他の子を好きになるなら、それぐらいの気持ちだったんだって。推しとヒロインが幸せになるなら(中身は元彼だけど)それでもいいなとは思う。
ただ、私がばっさり切れるかどうか。
「お姉様も、勿論出席するんですよね?」
「え? 私……? 私は如何かな……呼ばれたら行くけど。トワイライトは呼ばれているって事?」
「……はい」
と、トワイライトは何だか申し訳なさそうに言った。
私はそんな彼女の表情に首を傾げた。何故彼女がそんな顔をする必要があるのか。彼女はただ呼ばれただけなのに。私のことを気にしているんだったら、気にしないで欲しい。彼女が呼ばれて私が呼ばれれないのはもう慣れているというか、そういうものなんだなって思っているから。
「エトワール様を呼ばないなんて! 私、皇宮に殴り込みに行きますよ!?」
「あ、アルバ落ち着いて。そんなことしたら、アルバの首飛んじゃう。そこまでしなくて良いって。というか、めでたい日なんだし、ね?」
そう私が宥めでも、アルバは、私を招待していない人達に怒りを抑えられずブツブツとその後も言っていた。私の為に色々思ってくれるのは嬉しいけど、それでアルバが酷い目に遭うのだけは私は避けたいと思っている。私も悪くなければアルバも悪くない。ただ、この国の考え方がそうだから仕方がないと言うだけなのだ。
(まあ、でもあれか……行かないって決まってるんなら、プレゼントとかダンスの練習ももう良いかなっては思う)
ここまで来て、やめるのか、プレゼントを渡さないのかという話にもなるかも知れないし、渡したい気持ちはある。でも、今から選んで時間が間に合うだろうかと言うのも勿論あって、パッと選んだものを渡すのは私の中で少し抵抗がある。もっと真剣に悩んで渡せるなら渡したい。
せっかくのリースの誕生日なんだし、気持ちだけでも。
「エトワール様、もしかして出席しないつもりでいるんですか?」
「え?」
そう、私に言ってきたのはリュシオルだった。彼女は凄く不機嫌そうな顔をこちらに向けて、私を睨んでいた。