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用を済ませてトイレを出ると、ベンチに座る彼女の両隣に二人の男が腰掛けている。男子トイレでタバコを吸っていた男たちだろうか? 服装で高校生と分かる。夏服シーズンでブレザーを着てないから分かりづらいが、ワイシャツの校章と履いているスラックスを見れば、僕と同じ高校の生徒のようだ。
どちらの男にも見覚えがあった。片方は去年の夏に彼女の噂をしていた先輩男子二人のうちの一人。噂話をしてる方と聞いてる方がいたが、噂話をしていた方。つまり彼女をメンヘラだと馬鹿にしていた方。その男の身長や体格は僕と同じくらいだったけど、もう一人の男は別格だった。体の大きさと見た目の迫力なら彼女の父親に引けを取らない。
彼は同じ中学出身の一つ上の先輩。中学時代、とにかく超ヤバい先輩だった。親や教師の言うことを聞かないのはもちろん、相手が警官でも食ってかかるような男。ただの虚勢ではなく、体がデカくてケンカも強い。中学では不良生徒たちのリーダー的存在だった。
中学が同じで家も近所らしく外でよく姿を見かけたけど、もちろん陰キャの僕は彼と接点なんて何もなかった。だから名前も知らなかったが、僕と同じ高校に進学していて驚いた。どうやら素行は悪くても、地頭は悪くなかったようだ。ただ義務教育ではない高校で大きな問題を起こすと退学になる恐れがあるから、高校では表面的にはおとなしくしているようだ。もちろん裏ではいろいろ悪さをしているのだろうけど。
その超ヤバい先輩が僕を見て、ニタニタ笑いながら話しかけてきた。
「メンヘラ彼氏のご登場か」
恋人になってくれるなら自殺しないと僕が要求して、それを彼女が飲んだから僕が自殺を踏みとどまったという間違った話が真実として校内に知れ渡っているから、そう言われるのは仕方ない。でもニタニタ笑いながらそれを言ってくるのは悪意しかないだろう。