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作戦指令室から眺める、死のオーロラは圧巻だった。隣の部屋から聞こえる大野と亀山の声をBGMに、磯海は長椅子の上で丸く膝を抱えて ーこの長椅子は特捜機動隊メンバーからは安眠ベットと呼ばれていた ー 高層階から見えるオーロラに見入っていた。
昨夜、ゆり野を町田まで送り届けた帰り道にも、死のオーロラは揺れていた。
拡がりつつ、たなびく発光体は、地獄へ誘う女神の誘惑とでも言うべきか。
そんな魅力を放出させていた。
磁力線に沿って、酵素原子と窒素原子が吹き飛ばされる原理は、中学時代に習った気がする。
オーロラには太陽風のプラズマが大いに関係しているのは、亀山の説明で知ったばかりだった。
しかし、磯海の頭の中は。
「あの時・・・いなくなった人達もこの景色を見ていたんだろうな・・・コイツがヒトを滅す予兆なら、その瞬間痛みや苦痛は・・・それより今は・・・眠りたい」
実際、睡眠時間を取れていなかった磯海は、帰宅するよりも職場に泊まった方がマシだと考えた。
緊急事態の中で、定時に帰宅するのは神代だけで、 そんな人間にはなりたくないと思っていた。
チームワークの乱れは、その隊の崩壊を意味する。
それは白バイが教えてくれた教訓なのだ。
ゆっくり目を閉じながら、ふと、ゆり野の顔を思い出す。
「やっぱ、告っときゃよかった!」
今更ながら後悔していた。
そんな磯海の耳に、大野と亀山の声が子守唄の響きで流れてくる。
「見てホラ、この船の航跡なんだけど・・・オレ的にはコイツはダミーだって思ってる」
「亀山さん、だけどココなら都合よく利用できますよ。風の塔なんて誰も気にかけないだろうし、その下で何が造られてようが判りませんし!」
「けどホラ、同時刻のココ!」
「え? 東京ハッピーパーク? リゾートテーマパークですよねって・・・ああっ!!」
大野は、パソコン画面上を移動するもう1つの光の点を見つけた。
それは、江東区に隣接する千葉県の湾岸埋め立て地を利用して建てられたテーマパーク・東京ハッピーリゾート海水ろ過施設人工島の駐車場内にあった。
亀山がデータ地図を拡大すると、人工島の詳細が浮かびあがった。
大小2棟のプラントと、海岸線ギリギリに建設された事務所、コンクリート造りの地上2階建ての建造物隅には、小型船が接岸出来るスペースがある。
その駐車場付近を点滅する光が進む。
やがてそれは人工島を過ぎて、テーマパークの光の中へと消えていった。
大野が言った。
「大雪警報時にも、ハッピーリゾートにはこんなに人がいたなんて」
「いやいやいや、一時避難でしょう。帰宅困難者を受け入れたって・・・けどそれがいい隠れ蓑って訳で ー」
亀山の言葉を遮って入って来た磯海は、寝癖のついた頭を気にすることもなく言った。
「オマエらよく働くねえほんとに、でさ、税金ドロボーとパソコンマニアは何騒いでんの?」
磯海は、自分で言った税金ドロボーという表現に笑いが堪えきれずにいた。
大野が大きな声で反論する。
「いくらなんでも税金ドロボーってのは聞き捨てなりません。わたしは仕事に誇りを持って今まで邁進して来たつもりです!」