???「うーん……っと!おはよう!橙ちゃん!」???「雨花さん。おはようございます。早速怪我の手当てをしましょう」
ここは、橙の家。おはようと言ったのは「紫雲雨花」で、それに返したのは「不山橙」である。
いつも通り、橙は雨花の怪我の手当てをする。
橙「今日で二ヶ月ですね。普通ならもう少し治りが早いはずなんですけど……あなたが無理やり動くから悪化している部分もありますし?」
雨花「あはは!ごめんごめん!」
橙「笑い事じゃないですよ!まぁでも一時間くらい散歩するくらいは大丈夫です。」
雨花「えっ!十分じゃなくて良いの!?本当に一時間もやって良いの!?」
橙「えぇ。雫さんが治癒の神通力を集中的にかけてくださったので……でも、一時間の外出はまだまだ重症患者の領域ですからね!!絶対悪化するような動きをしてはいけませんよ!!分かりましたね?」
雨花「ホイホイ〜」
橙「なんだか心配ですねぇ……あっそうだ!そのお祝いと言ってはなんですが、雨花さんにサプライズがあるんです!」
雨花「サプライズ?なぁにそれ?」
橙「それは……」
「「焼肉女子パーティーです!!」」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
雨花「焼肉女子パーティー?」
橙「はい。雨花さんも少しずつ治っていっているので、奮発して雨花さんの好きな牛タンとハラミを沢山買いましたよ!桃時さんと一緒に!」
雨花「う、嬉しいけど、なんだか申し訳ないなぁ。自分の自業自得でこうなったのに……」
橙「そう言うと想いまして、あえてこのパーティーを企画したんです。あなたがそうやって罪悪感を感じれば、自分に対し、無茶な行動や言動を……」
橙「慎むと想ったのでね……?」
雨花に圧をかける橙。
雨花「す、すみません……」
橙「そう想うなら、慎むことですね。……まぁそんなことを言ってますが、あなたの怪我が少しでも治っていることを祝して企画したのも本当です。ですからもっと素直に楽しんで良いんですよ?」
雨花「…………あはは!ありがとう!」
ちなみに、この場に「サプライズって言ったらサプライズじゃなくなる」というセリフを言うツッコミ役はいなかった。
その後、「桃時」もやってきた。
桃時「窓開けて。焼肉プレート持ってきたから、熱がこもるわ。」
雨花「はいはい〜!ちゃんとやりまぁす!」
橙「タレと小皿はここに置きますね。」
粛々とパーティーの準備をする雨花たち。
雨花「あれ?ビールが三つある……桃時ちゃんも飲むの?」
桃時「えぇ。たまにはこういうお酒も良いかなって」
橙「酔いすぎないように気を付けて下さいよ?」
雨花・桃時「橙ちゃん・あんたには言われたくないよ・わよ」
橙「え?」
各々肉を皿に並べ始める。コップの中にビールをそそぎ入れると各々の位置に座る。
桃時「じゃあカンパーイ!!」
雨花「かんぱ〜い!!」
橙「乾杯!!」
ビールをゴクリと飲むと、シュワシュワが喉を通り、のどごしを感じる。
雨花「どんどん肉焼いてこ!」
桃時「そうね!」
橙「…………ひっく……はぁい……」
橙は、一缶目で既に酔い始めている。
桃時「大丈夫かしら?橙。」
雨花「あまりにも酔いが酷かったら、水かジュースに変えよう。それにここは、橙ちゃんの家だし。最悪なことがあっても対処できるから。大丈夫なんじゃないかな?」
橙「なぁに……二人で話し込んでるんです?…………もう……本当に二人とも可愛いですね!!ひゃはは!」
橙は、雨花と桃時の肩に手を伸ばし、今度は歌い始めた。
橙「ビン○スの酒を〜届けにi」
雨花「あぁあぁ!ダメダメ!著作権侵害になっちゃうよ!!」
桃時「橙がこんな陽気に歌うなんて……これには海賊王もびっくりだわ。」
雨花「桃時ちゃんもそういうこと言うのやめて!!」
その後も著作権に関わることを歌い続け、今度は歌うのに飽きたのか、桃時にだる絡みし始めた橙。そして、それを撮影している雨花。
桃時「ちょっと!撮影してないで止めなさいよ!」
雨花「だってこれを撮影していれば、橙ちゃんに自分がお酒に弱いって認めさせることができるよ!」
桃時「うっ……それは……」
橙「とーおーじーさーんー!!きこえてますか!!」
桃時「あんたもあんたでうっさいわね……何よ?」
橙「兎白さんとは……最近……どう……なんですっっっっかぁーーーー!!!!」
桃時「だから、大声出さないでよ!!そしてどんな話し方!?……それであいつとどうかって?それは……結婚s……」
橙「うわぁぁぁぁん!!!!」
雨花「ゲハハハハハハハハ!!!!」
桃時「あぁもう!!何なの!!このカオスな状況!!なんで一人は泣いて、一人は大笑いしてんのよ!!そしてどうしてアタシはこんな奴らのために突っ込まなきゃいけないわけ!?」
雨花「いやいやごめんごめん。橙ちゃんの反応が予想通りすぎて面白かった!」
橙「良かったですね……ひっく……桃時さんと兎白さんが結婚……」
桃時「ちなみにまだ結婚「s」までしか言ってないけど?」
橙「うぅぅぅ……私心配だったんです……」
桃時「心配?」
橙「だって……桃時さん、独りでも平気そうな顔して裏では本当に沢山泣いてる人だから……ようやく……ようやく……桃時さんのそばにいてくれる人ができて……嬉し……くて……うぅぅぅ」
桃時「あんた……そういう風にアタシのこと想ってたの?……もう…………本当にお人好しなんだから……本当にお酒入ると……涙脆くなって……うふふっ、私も想ってるわよ。橙に……」
「「そばにいてくれる人が来るのを……」」
桃時「だから、あんたは……ってあれ?」
橙「…………」
雨花「これは……」
桃時の膝に頭を乗せ、顔が真っ赤になり、すやすやと眠っている橙。
桃時「もう……あんたに伝えたかったのに……」
雨花「でもほら!」
桃時「ん?」
雨花は、スマホを操作して、撮っていた動画を流す。
桃時「あんたって不思議な奴よね……」
雨花「?」
桃時「人が求めているものやして欲しいことをその人が何も言わなくても、実行できるんだもの。」
雨花「…………わたしの場合、たまたまだよ。…………本当にそんな人がいてくれたら良いのにね。」
がつん
雨花「なぜ殴るの?」
桃時「またすぐそうやってローモードに入ろうとするから!……アタシはそう想ってるんだから良いの!はい、この話おしまい!肉まだまだあるんだから橙の分は分けておいて、残りはアタシたちで食べましょ。」
雨花「……そうだね。」
そのまま、二人は飲みあかし、いつの間にか眠りに入り、目が覚める頃には、橙と桃時は二日酔いで気持ち悪くなっており、雨花だけは涼しい顔で「おはよう!」と言っていたとか。