中学2年生になり、高野陽輝と富川沙月は以前と同じように日常を共有していたが、その関係には少しずつ変化が訪れていた。特に沙月と陽輝の親友である尾野翔太の存在が、陽輝の心をかき乱し始める。
尾野は明るく社交的な性格で、沙月と接する際にも自然な振る舞いができるタイプだった。放課後のグループ活動や文化祭の準備など、尾野が沙月に積極的に話しかける場面が増え、二人の間には新たな絆が形成され始めていた。その様子を見ている陽輝は、沙月が友達として接していることを頭では理解しているものの、心の中では不安と焦りを感じるようになる。
ある日の昼休み、陽輝は偶然、沙月と尾野が笑い合いながら話しているのを見かける。その場面は特別なものではなく、ただのクラスメイト同士の会話に過ぎなかったが、陽輝の胸には小さな痛みが走る。彼はその感情を表に出すことなく、静かにその場を離れる。
その夜、陽輝は一人で机に向かいながら、沙月に対する気持ちを整理しようとした。しかし、彼はその感情が「ただの友達以上のもの」であることを認めることが怖くて、胸の奥にしまい込むことしかできなかった。
一方で、沙月は陽輝の変化に薄々気づいていた。最近の陽輝が以前よりも沈黙がちであることや、時折何かを考え込む表情を浮かべることに気づき、彼の気持ちに何か変化があるのではないかと思い始める。しかし彼女自身は、その理由を深く探ろうとはせず、いつも通りの友達として接していた。
授業の間の休み時間、三人が一緒に過ごしている中で、陽輝が沙月と尾野の楽しそうな姿を見ている陽輝。陽輝はその場で笑顔を保とうとするものの、自分の中にある孤独感が徐々に広がっていく。心の中で「この関係は変わらないままなのだろうか」と問いかける陽輝の姿に、静かな緊張があった。
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