次の日
質素な家に軽快なインターホンのチャイムが響き渡る
僕は内心喜びながら足早に家を出た。
まさかリリィから出掛けの誘いがくるなんて思わなかった。
「ねぇリリィ、今からどこ行くの?」
ふと思ったので聞いてみた。
「まだ内緒!」
流石リリィ、次の日になっても内緒を貫き通した。
「まぁいっか!」
僕は諦めた。
これ以上聞いても答えてくれなさそうだ。
彼女は、柔らかな表情をしていた。
やはり出掛け先で虐めっこと会う確率が極端に少ないからだろう。
そういうやつらは大体某動画アプリで自撮りなどをしているのだろう……
会う率が少ない分他の人の目がないのだ。
少しテンションがバグってても問題がないし、何より自分と一緒にいる人というプライベート空間を荒らされずに済むのだ。
誰だって優しいかおくらいにはなるだろう。
そうこうしているうちにバス停についていた。
彼女は立ち止まって、時刻表を確認し始めた。
バスを使うということは少し遠いところに行くということになる。
けっこう楽しみだ。
僕は思ったことをリリィに聞いてみた
「なんで僕を誘ってくれたの?」
「他の友達は?」
リリィが少し呆れ顔になるのを見逃さなかった。
「それはね、雪斗君がずっと辛い思いをしているから、一緒に出掛けたらなにか気晴らしになるんじゃないかと思ったの。」
僕は少し驚いた表情をしてしまっていただろう。
僕のことを気にかけて出掛けの提案をしてくれたのだ。
僕は鞄からペンと大きめの付箋を取り出して
自分の得意な絵を描いてリリィにあげた。
「ありがとう」
とお礼と共に
リリィも「どういたしまして」
と笑顔で言った。
様子を見計らったようなタイミングでバスが来た。
リリィは「乗るよ!」と急ぎ足でぼくの手を引いて乗車した。
人はあまりいなくて、非常にゆっくりとできる場所になっていた……はずだった
前辺りの席から聞き慣れた耳を刺すような声が聞こえた。
「まじぃw?それなぁぁw」
虐めっこ団体の一部がこのバスに乗っていた。
幸い僕たちはいつもとは違う髪型、帽子で顔を隠すようにしていた為、気づかれることはなかった。
僕は小声で
「あいつらだよね…」
と聞いた。
リリィは不機嫌そうに
「プライベート空間返してよ」
とあいつらに向けた言葉が小声で披露された。
バスに乗ったというだけでとてつもない疲労感が二人を襲う。
早く降りてくれないかなと思いながら無言で待っていると、運がいいのかあいつらは次の駅で降りていった。
彼女はガッツポーズをしながら
「ヨッッシャッ!」
と言っていた
僕は実に清々しくなっていた。
降りてほしいと思った瞬間降りていってしまったからだ。
思いが現実になった瞬間だった。