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「監督……!出てきなさいよ! 姿を見せなさい!!」
私はスタジオの奥にある、黒い幕で仕切られたモニター室へと突き進んだ。
撮影は中断している。
スタッフたちは遠巻きに私を見ているだけで、誰も助けてくれない。
瀬戸くんも、怪我をした佐藤も、冷え切った目で私を観察している。
まるで、私が檻の中で暴れる獣であるかのように。
「逃げないでよ! あんた、誰なの?私の過去を調べて、何が目的なのよ!」
荒い息を吐きながら、私はモニター室の重い遮光カーテンを力任せに引き剥がした。
「……え?」
そこには、誰もいなかった。
無機質な数台のモニターが淡い光を放ち、無人の回転椅子がゆっくりと回っているだけ。
「な、なによ……リモート? どこから指示を出してるの……」
私はパニックを抑えようと、コンソールの上に置かれた大量の書類に目をやった。
そこには、私のこれまでのSNS投稿、家族構成、交友関係───
そして、それらを繋ぎ合わせるように引かれた真っ赤な線。
中心には、あの女の名前が書かれていた。
「……っ!」
見たくない、その名を見たくない。
私は書類を払い除けた。
その時、正面のメインモニターに、スッと一枚の画像が映し出された。
それは、茶色く変色した、一枚のレポート用紙だった。
文字が震えている。涙で滲んでいる。
でも、その内容は私の脳に直接焼き付いているものだった。
『───みんな、ごめんなさい。私がいない方が、クラスが平和になるんだよね。美玲さんが言う通り、私は……』
「……嘘っ…これ、あいつの……」
私が当時、放課後の教室で彼女を囲み
「これ書かないと帰さない」と脅して書かせた、偽りの「遺書」。
学校には「冗談で書いたものだ」と言い張り、親の力で回収して処分したはずの、本物の原本だ。
「どうして……どうしてここに……?」
震える指で画面に触れようとした瞬間、スピーカーからノイズ混じりの声が響いた。
「懐かしいだろう? 美玲。君がそれを彼女の口に突っ込んで、笑いながら動画を撮った日のことだ」
「だ、誰!? どこにいるの!!」
「君がその紙を『ゴミだ』と言って捨てた後、それを拾い集めた人間がいたなんて、想像もしなかっただろう?」
声は加工されているが、執念のような重みが伝わってくる。
ふと見ると、モニターの横の壁一面に
同じレポート用紙のコピーが、何百枚、何千枚とびっしりと貼り付けられていた。
『死にたい』『生きててごめんなさい』『許して』
壁一面の文字が、まるで私を飲み込もうとする黒い泥のように見える。
私は耳を塞いで叫んだ。
「知らない!私は悪くないわ! あんなの、ちょっとした遊びだったのよ! あいつが弱かっただけじゃない!!」
私の叫び声に呼応するように、モニターに映る「遺書」の文字が、グニャリと歪んだ。
「遊び、か。なら、この映画の結末も『遊び』で済ませてあげよう。……さあ、次は屋上のシーンだ。準備はいいか?」
自動で切り替わったモニターには、暗い夜の屋上で
フェンスを背にする「私」の姿がリアルタイムで映し出されていた。
「これ……今、撮ってるの……?」
私がモニターの中の自分に見入った瞬間、背後でカチリと扉がロックされる音がした。
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