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キス…!?

からかうにもほどが…っ。

困惑する私の背中にまわる腕に、また力が入った。

落ちつけ…。

落ちつけ私…。

どうせ冗談だ…。

私が焦るのを楽しみたいだけなんだ…!

きっとすんでで止まる。

そして『冗談だよ』って、またあの意地悪な笑みを浮かべるに決まってる。

近づいてくる、綺麗な顔。

まだ…まだ耐えなきゃ…

もうすぐ、止まるから…!

ニッって、バカにするようにわたしに笑うから…!

鋭い目が、固く引き結んだ私の唇をじっと見つめて…そっと閉じた…。

「…やぁっ!」

耐え切れなくなって、咄嗟に蒼の唇に手の平を押し当てた。

指に柔らかい唇が当たって、その瞬間、ちゅっ、と吸われた。

ぞくり

と、肌全体に甘い電気が走った。

蒼…今、

本気でキスしようとしてた―――。

「なに拒んでんだよ」

茫然として見つめると、蒼が私の手首をとってにらみつけてきた。

「今夜は俺の言うこと、なんでもきくんだろ」

「やだ、よっ…!」

ほとんど涙声になりながら、私は声を絞り出した。

「なんで…なんでこんなことばっかりするの…??さっきから、ずっとずっと…ひどいよ!からかうにもほどがあるよ!」

「は?」

「蒼…変わったよね…。こんなことして、小さい頃バカにした仕返しのつもりなの?」

「……」

「たしかに、ひどいことをしたり、言ったけど…、私は本当に蒼のことが大好きだったんだよ?泣き虫だけど、優しくて純真な蒼が好きだった…。今の蒼はちがう。全然変わっちゃったよ…!」

がしり、と手が乱暴につかまれた。

「無自覚、無神経…ああほんとおまえ…絶望的だな」

きつくきつく、握る手に力がこもる。

痛い…。

「こんなにアピってるのに、わかんねぇのかよ?いい加減、気づけよ…バカ蓮」

「…」

「好きなんだよ」

「……」

「おまえのことがずっと昔から、ガキの頃からへなちょこの頃からずっとずっと…ずっと好きだったんだ」

うそ…。

蒼が私を好きだなんて…。

言葉に詰まる。

からかわないで…。

そう、言おうとしても、蒼の目は有無を言わせない真剣さがあった。

「言っとくけど、おまえの『好き』なんかじゃないからな」

重みを感じたかと思うと、ソファの上に押し倒された。

「おまえのこと、いつもどういう目で見てたか知らないだろ。教えてやろうか?ガキのおまえには、刺激が強すぎかもしれないけど」

Tシャツの上から腰を撫でられる…。

「や…っ」

その手の硬さに、熱さに、私は悲鳴に近い声を発した。

「やめてよ…っ」

「やめない」

「こんなの…ヤだよ…っ」

無表情だった蒼の顔が、一瞬ゆがんだ。

「…気づかなかったおまえが悪い。もう…我慢なんかできねぇんだよ」

「もうすぐ美保ちゃんが帰ってくるよ…!?こんなところ、見られたら…!」

「帰ってこない」

「…?」

「おばさんは帰ってこねぇよ。今夜は、絶対に」

不吉さを感じさせる断言を聞いた瞬間、リビングに電話が鳴り響いた。

スマホじゃない。

リビングに置いている家電からだ。

こんな時間に、家に電話?

美保ちゃんだ…!

思わず身を起こそうとすると、すっと重みが遠のいた。

どうして蒼が離してくれたのかは解からないけど、もうそんなこと気にする余裕もなく、私は足をもつれさせながら、電話に飛びついた。

助けて…!

電話の美保ちゃんに言っても仕方ないことだけど…でも、すがりたい気持ちで一杯だった。

「美保ちゃん…!」

『蓮?』

聞きなれた声に、ほっと泣きそうになる。

「美保ちゃん…」

お母さん…助けてよ。

蒼が…

蒼が…!

『よかった、繋がって。ごめんね、連絡が遅くなっちゃって』

「どうしたの…まだ帰れないの??」

『そうなのよ。蒼くんから聞いたでしょ?』

蒼から?

チラと横目で見たけど、蒼は平然とソファから私を見ている…。

「遅くなるってだけで…」

『あらそう?私がかけ直すって言ったから、詳しくは説明しなかったのね、きっと。まあいいわ。実はね…』

不安を通り越した恐怖を、じわじわと感じ始めていた。

美保ちゃん…

帰って来るよね…

『急に本当に悪いんだけど、出張に行かなくちゃならなくなったの』

「……」

『それも、一週間近くなんだけど…』

「え…」

う、そ…。

『もうほんとに急でね…会社から出てそのまま駅に行かなきゃならないくらいで。ほんとに、ごめんね…』

「……」

『聞こえてる、蓮?』

私は、涙をこらえるので必死だった。

ひどい。

蒼の嘘吐き…

悪魔っ…!

『蓮?出張なんてしょっちゅうしてるし、平気よね?それに、蒼くんもいるし』

「……」

『さっき久しぶりにしゃべったけど、すごくしっかりして頼りになりそうだったわね。あの小っちゃかった蒼くんも、もうすっかり大人なのね。たしか蒼くんのご両親も旅行に行ってて、蒼くんひとりなんでしょ?』

「……」

『だから仲良くお留守番しててよね。ふたりなら大丈夫でしょ』

大丈夫なんかじゃ、ないよ…。

お願い…お母さん…

帰って来てよ。

私を蒼とふたりっきりにしないで…!

キケンなお留守番~オオカミおさななじみにご用心!~

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