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華
219
113
#下手くそ注意
らむね𐙚
122
#オリジナル
ゆいらーめん
512
───結翔side
コイツは……何なんだ。
何が目的で、こんなことをやってんだ……?
目の前にいる男――
何事もなかったかのように、ヘラヘラと笑っている。
結翔「…………」
その顔を見ているだけで、胸の奥が煮え返る。
仁「そんなに睨まなくてもいいじゃん」
結翔「…………」
仁「雫ちゃんは、もう苦しくないんだから」
結翔「…………は?」
仁「俺が助けてあげたんだよ」
結翔「…………」
頭の中が、一瞬止まった。
結翔「……助けた?」
仁「そう、だから俺は彼女の救済者だよ」
結翔「…………」
結翔「何を言ってんだ……」
仁「ん?」
結翔「何が『助けた』だよ……」
仁「だって、もう苦しくないんだよ?」
結翔「…………」
仁「もう頑張らなくていい」
仁「もう傷つかなくていい」
仁「もう、何も背負わなくていい」
仁「それはもう俺が救ったって事じゃん?」
結翔「…………」
違う。
違うだろ。
そんなの。
結翔「…………お前」
仁「ん?」
結翔「本気で……そんなこと思ってんのか?」
仁「もちろん、思っていなかったらこんな自信家にならないでしょ?」
即答。
迷いなんて、どこにもない。
結翔「…………」
その瞬間。
背筋が冷たくなった。
コイツは――
ふざけているんじゃない。
本当に。
本気で。
人を死なせることを「救い」だと思っている。
結翔「…………お前、頭おかしいんじゃねぇか…?」
仁「失礼な、俺結構頭はいい方だよ?」
結翔「……(ダメだ……こいつ全く通じる気配がねぇ…)」
声が震える。
結翔「それのどこが救ったんだよ!!」
仁「苦しみから解放してあげただけだよ?」
結翔「違ぇよ!!」
仁「…………」
結翔「それは……救ったんじゃねぇだろ!!」
結翔「雫さんが何を望んでたのかも知らねぇくせに……!」
結翔「何を守りたかったのかも……!」
結翔「それでも何を選んで生きてたのかも知らねぇくせに!!」
仁「…………」
結翔「勝手に終わらせて……!」
結翔「それを『助けた』なんて言うなよ……!!」
仁「でも」
仁は首を傾げる。
仁「苦しんでたんだよ?」
結翔「…………」
仁「だったら、その苦しみをなくしてあげるのが一番じゃない?」
結翔「…………」
……こいつとは。
話が通じない。
いや。
違う。
俺の言ってることは理解してる。
それでも――
根本から考え方が違う。
結翔「……人を救うってのはな」
結翔「その人から、勝手に選択肢を奪うことじゃねぇ」
仁「…………」
結翔「生きるかどうかを決めるのは……」
結翔「お前じゃねぇだろ……!」
仁「…………」
結翔「雫さんは……」
声が詰まる。
結翔「……俺を助けてくれたんだ」
仁「…………」
結翔「俺が頭痛でどうしようもなかった時も」
結翔「何も知らねぇ俺に、あの人は手を差し伸べてくれた」
結翔「……笑ってくれた」
結翔「また来てもいいって……言ってくれたんだよ」
結翔「…………」
結翔「だから俺は……」
拳を握る。
結翔「またどこかで会える日が来ると……思い込んでいた……」
結翔「また話せると思っていた……」
仁「…………」
結翔「それなのに……」
声が震える。
結翔「なんで……お前が勝手に決めるんだよ……!!」
仁「…………」
仁は何も言わない。
ただ。
穏やかに笑っている。
その表情が――
結翔には、どうしようもなく不気味だった。
仁「君は雫ちゃんと仲がいいみたいでいいなぁ……俺も仲良くなりたかったなー」
結翔「…………」
結翔「……その口で雫さんのことを語るな」
仁「…………」
結翔「お前は何も分かってねぇ」
仁「君よりかは人生経験長い方だと思うけどな〜」
結翔「分かってねぇよ……!」
結翔「お前が『救った』と思ってるものを……」
結翔「俺は救いだなんて認めねぇ」
仁「…………」
結翔「…………お前」
結翔「本気でそんなこと思ってんだな」
仁「俺はいつだって正直者だよ?」
結翔「…………」
結翔は、ゆっくり息を吐いた。
怒りで震えていた身体が――
逆に、静かになっていく。
結翔「……なら」
結翔「お前と話すことは、何一つない」
仁「…………」
結翔「───とっとと失せろ」
仁「…………」
結翔「……救済気取りの偽善者が」
仁「…………」
一瞬。
仁の笑顔が止まった。
けれど――
すぐに、また笑う。
仁「…………」
その笑顔を見た瞬間。
結翔の中で、何かが弾けた。
結翔「…………っ」
ダンッ!!
地面を蹴る。
仁「………えー急だなぁ」
結翔「ふざけんな……!!」
拳を握る。
もう何も考えていなかった。
ただ。
許せなかった。
人を苦しませて。
その人生を勝手に終わらせて。
それを――
「救った」と笑う。
結翔「お前がッ……!!」
拳を振り上げる。
仁「…………」
その瞬間――
パチン。
視界が弾けた。
──────
結翔「…………っ」
目を開ける。
そこは、宙の小屋だった。
宙「おはよう」
結翔「…………」
宙「どうだった?」
結翔は答えない。
宙「お医者さんの行方は、もう貴方の頭に残ってるはずだよ」
結翔「…………」
宙「世界は、貴方が思っている以上に綺麗ではなかった」
宙「……そうでしょう?」
結翔「…………」
何も言えない。
もう、何を言えばいいのか分からなかった。
怒りも。
悲しみも。
悔しさも。
全部が身体の奥に沈んでいる。
結翔「……ごめん」
宙「…………」
結翔「……俺、帰るわ」
結翔はゆっくり立ち上がる。
結翔「……雫さんのことは分かった」
結翔「患者の方に……伝えに行く」
宙「…………」
結翔は扉へ向かう。
ガチャ。
扉を開ける。
冷たい夜風が吹き込んでくる。
結翔は振り返らない。
そのまま――
小屋を出ていく。
ザッ……
ザッ……
足音が遠ざかる。
宙「…………」
やがて。
結翔の姿が見えなくなった。
宙は一人。
閉じた扉を見つめる。
宙「…………」
そして。
静かに呟いた。
宙「おそらく今の貴方の知識じゃ……」
宙「この世界では、やっていけない」
少しだけ間を置いて。
宙「だから……」
宙「今、教えてあげたんだよ」
宙「…………」
宙「これから貴方が何を知って――」
宙「何を選ぶのかは……」
宙「貴方次第だよ」
──────
その夜。
結翔はまだ知らなかった。
雫を失ったことよりも。
仁と出会ったことよりも。
自分の中に芽生えた1つの感情を――
「この世界を知りたい」という感情こそが。
これから結翔を、闇の世界へ引きずり込んでいくことを。
コメント
1件
すごかった……!!😭✨ 結翔くんの怒りがひしひしと伝わってきて、こっちまで胸が苦しくなったよ……。「救う」って何なんだろうって改めて考えさせられたし、仁くんの歪んだ正義感がめっちゃ怖かった🥺 特に「生きるかどうかを決めるのはお前じゃねぇ」って台詞、刺さりすぎて泣きそうになった……。ラストの「この世界を知りたい」も、結翔くんのこれからが気になりすぎて続き待ちきれないよ!!次の話も楽しみにしてるね🌸