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21 ◇紀子の過去
父が亡くなって2年後、ちょうど私が香織と同じクラスになった年だった。
5年生の時だったわ。
母が男を家に入れるようになって、母が仕事先から
帰宅してくる18時頃まで学校から帰った私は2時間~2時間半
男とふたり一緒にいないといけなかったの。
男は働きもせず昼間から酒を飲んでゴロゴロしてるような
男《ヤツ》だった。
男《ヤツ》は暇を私をいじることで潰すようになって
私は母が帰宅するまで家の近所でひとりで時間をつぶすようになった。
だって男といると抓《つね》られたり、叩かれたり
するんだもの。
しまいには濁った目でいやらしい目つきしてたなぁ~。
駄目だって子供心に思った。
一緒にいないようにしないとやばいってね。
母はそういうの気が付いてなかったのか、知ってても
知らん振りしてたのか。
どちらにしても私のことなんて何にも気にかけてなかったって
ことだけは確かよ。
自分の子は女の子なんだよ、なのにあんなヤルだけの男を
連れ込んでたんだからね。
今思い出しても吐き気がするわ。
21-2.
香織ん家《ち》のおばさんは大人だから、近所に住む私の家のこと
何となく察してくれてたんだと思う。
たまたま香織に誘われてお家にお邪魔した日から、私、
毎日香織ん家に行ってたのよ。
男に腕を捻られて殴られて青ずんでたのをおばさんが気付いてね
『どうしたの?』 って聞いてくれた。
黙ってたら『叩かれたの?』 って聞いてくれた。
私、何も言わずただ『うんっ』て頷いた。
香織がいないところでおばさんがね言ってくれたの。
『お母さんが帰ってくる時間まで毎日香織ちゃん家にいたらいいよって。
おばさん実は紀子ちゃんの遠い親戚なのよ、だから
なぁ~んも遠慮しなくていいからね。
親戚っていうのはただの近所のおばさんとは違って
紀子ちゃんのこと心配してもいい関係なのよって。
おかあさんは知らないかもしれないけど、実はおばさん
紀子ちゃんのお父さんのほうの遠い親戚なの。
おかあさんには言わなくていいわ、話がややこしくなって
紀子ちゃんがうちに来にくくなるとまずいしね。
叩くような大人のいるところに紀子ちゃん帰すの心配だから絶対
ここに帰ってきてね』
ってそう言ってくれたんだよ。