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トド村
548
#地雷系
日暮ミミ♪
289
◆◆◆◆
ソファーに座りノートPCと睨めっこをしながらプロットを書いては消してを繰り返す。ミィは隣で俺に寄りかかり、スマホを弄っていた。
そんな休日の昼下がり、突然チャイムが鳴りインターフォンと連動している小さなモニターに女性の顔が映し出される。モニターをよく見るとアイさんだ……アイさんに俺の家の住所を教えた覚えはないのだが……。
「アイです。突然すみません~。開けてくださ~い。」
ミィはすぐに立ち上がり、
「はいは~い! 今開けま~す!」
と言って小さなモニターの横にある、エントランスのドアを開けるボタンを押す。こいつ……俺の家を自分の家かのように過ごしていやがる……。ミィは廊下に出てアイさんが上がってくるのを待ち、手を引いて俺の部屋へと案内をした。
「お邪魔します……。」
アイさんは恐縮をしながらブーツを脱いで俺の家へと上がる。仕方がないので「どうぞ。」と言ってソファーを明け渡すと、アイさんは床に座ろうとした。俺の家のソファーは2人掛けで、3人で座るには狭すぎるのだ。
俺はアイさんの肩に手を置いてソファーに座らせた後で、2つのマグカップと1つの湯飲みにティーバッグを入れてお湯を注ぎ、マグカップを2人の前に、湯飲みを俺の前に置いた。
ミィのマグカップはいつもお客様用に出しているものだ。しかし最近はミィ専用になりつつある。そしてアイさんの前に置いたマグカップは普段俺が使用しているものだ。もちろんしっかりと洗った後でお出しした。
俺の家にはマグカップが2つしかないし、皿なども2セットずつしかないから仕方がない。
元カノがいた時に使っていたものを博巳が来た際の来客用として使い回しているだけで、新たに買い足したりはしていないのだ。
ミィは不機嫌そうな表情を浮かべ自分のマグカップとアイさんのマグカップをしれっと交換した。
俺は砂糖を容器ごとテーブルの中央に置き、テーブルの脇に座布団を敷いて座る。
「今日はどのようなご用件ですか? と言うか、そもそもどうやって俺の家の住所を知ったんですか?」
アイさんはキョトンとした表情で答える。
「どうやってって……ミィちゃんと会話をしていたら自然な流れで……。」
自然な流れ……? 自然な流れで人の家の住所を知ることなんてあり得るの? アイさんはまるで何でもないかのように話を続ける。
「それでね私、来週からお隣に引っ越すから挨拶に来ました。」
「と……隣ですか!?」
確かに、お隣さんはしばらく見ていなかったが空き部屋になっていたのか……。同じマンションに住んでいても他の部屋の状況って分からないものだな……。しかし、どうしてまた急に……!?
「前に住んでいた高田馬場のマンションはどうするんですか?」
「あそこは元カレが借りていた場所なの。だからもう住めなくて――ミィちゃんと賃貸サイトを見ていたら、この部屋の隣の部屋が掲載されていて、ミィちゃんが『ここはユウトさんの隣の部屋だよ。』って教えてくれたから、即決しちゃった♡」
アイさん……そんなに簡単に住む場所を決めて良いのか!? まあ通勤的な事を考えると、明大前~新宿間は電車ですぐなので良いのかもしれないけれど……。
ミィが身を乗り出して話す。
「ちなみに私もアイの部屋をシェアするんだ。」
……は? それじゃあミィのやつも隣に住むってこと……!? 毎日俺の部屋に来る可能性があるってことじゃねえか! 時々なら良いけれど、さすがに毎日だと厳しい。しかし他人の引っ越しに口出しするわけにもいかず、思わず半笑いになってしまう。
そんな姿を見たアイさんは頬を膨らませた。
「もっと喜んでくれると思ったのに! あの時言った『俺のために生きて下さい!』、『アイさんが好きですって言えるくらいアイさんを知りたいです。』って言葉は嘘だったんだ!」
俺はタジタジになりながら否定をする。
「いや、あれは心からの言葉ですよ。アイさんには生きていてもらわないと困るし、本当にアイさんのことを胸を張って『好きだ。』って言えるくらい、アイさんのことを知りたいです。」
その瞬間、ミィが物凄い目でこちらを睨んでいる。昨今、熊が人里に降りてきて問題となっているが、今のミィを熊の前に出したら熊よけになるんじゃないか?
「やっぱりユウトはアイさんのことが好きなんだ! そうだよね! アイさんのことを押し倒していたもんね!」
「そ……そういう意味じゃない。俺はアイさんのことを愛しているって言っているんじゃなくて、もっとアイさんのことを知りたいという意味で……。」
今度はアイさんが目を細め、張り付いたような作り笑顔で俺の事を覗き込む。
「えっ……? 私、ユウト君に告白されたと思って自殺を思いとどまったんだけれど、違ったの? 『ユウト君が私の事を必要だ。』って――『好きになりたい。』ってそういう意味だと思ったんだけれど……ねえ? どうなの?」
ヤ……ヤバい……。今はこの二人に何を言っても駄目みたいだ……。正座を崩してそっと立ち上がろうとすると、すかさずアイさんとミィに両脇を抱えられる。
「何逃げようとしているの?」
「どういうことか、詳しく説明をしてくれる……よね。」
将棋には様々な専門用語がある。その中でも勝敗に直結するものとして、「王手」は次の手で、王を守ったり逃がしたりしなければ負けてしまうこと。「必死」は相手の攻めを受けることができず、相手がミスをしなければ負けてしまうことを指す。そして「詰み」は完全に負けが決まった状態を示すのだ。
もしかして、俺、詰んだかも……。
そう思いながら二人に抱えられリビングへと引き戻された。まあ、この経験も新作の執筆につながれば……いや……必ずつなげて見せると思いながら……。
コメント
1件
うわあ、アイさん隣に引っ越してくるんか!しかもミィもシェア…つまりユウトの両隣がこの二人になるってこと?完全に逃げ場ゼロやん(笑)。将棋で言う「詰み」の喩え、めっちゃ分かるわ。アイさんの「告白されたと思った」って言葉も重いし、ミィの熊よけ級の睨みも怖い。でもこの修羅場感、ラブコメとしてめっちゃ面白いし、続きどうなるか気になる!