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アカネ君が亡くなったあと、マリアは私に相談を持ち掛けた。
マリア「…この土地でアカネを弔っても墓荒らしに会うだけだと思うの。どこか遠いところで息子を弔いたい。」
ベツレヘム「…うん。」
マリア「全部忘れたくない。…もう、そんな顔しないで。悪いのは貴方達じゃないんだから。悪いのは襲ってきた人たち。」
ベツレヘム「でも…」
マリアはベツレヘムの唇に人差し指をそっと置く。
マリア「たらればの話をしてもしょうがないでしょう?」
カイオス「ベツ。」
ベツレヘム「カイオス…」
カイオス「1番近くにいながら守れなかった俺が言うのは図々しいがその…」
ベツレヘム「分かってる。リーダーに報告しなきゃいけないもんね。なにせ、アヴィニア人でないのに魔法を使う人は私達の中では初めてだから。」
カイオス「…ああ。」
ベツレヘム「…マリアは暫くフェニックスで保護しよう。」
マリア「?」
ベツレヘム「世間一般じゃ悪魔にマリアは、加担したことになってる。殺されるのは時間の問題だよ。」
カイオス「分かった。」
マリア「まぁ…ここにはもう居られないわよね。」
ベツレヘム「…思い入れがあるなら…」
マリア「今日は皆ぼろぼろだし、残党がいるかもだからまた今度、散歩してもいいかしら?」
ベツレヘム「うん。」
ベツレヘムが俯き何か考え込む。
それからは怒涛の日々だった。
私はフェニックスを抜けた。理由は、自分でも上手く説明できない。ただ、マリアを助けたいという一心だったのは覚えてる。案外、恋とかそういうものかも。ただ、リーダーが情けをかけてくれたのか、支援をしてくれた。
少ない人材でやりくりしていた為、完成には長い時間をかけてしまった。
ベツレヘム「っできた…!やっと…!」
世界に受け入れられなかった人達の場所。
「ベツさん、名前を決めないと…」
ベツレヘム「うん、そうだね。今日からここは」
『イニディア村』だ!
ノア「ふふ。」
カイオス「何だ?」
ノア「君の娘さんは一途だね。」
カイオス「…確かお前は…『記憶の守り人』だったな。覗いたのか?」
ノア「いや、理由もないのにそんな意地悪なことしないよ。ただ、『共鳴』したんだ。」
カイオス「たまたま見てしまった。そんな感覚か?」
ノア「そうだね。ただ、人の記憶じゃないのはびっくり。どうやら、この土地と共鳴したらしい。君はベツレヘムが大好きなんだね。」
そう言ってノアは地面の土をそっと撫でる。
カイオス「…。」
ノア「君はガードが高いみたいだけど。」
カイオス「…意地悪なことはしないんじゃなかったのか?」
ノア「ある程度疑うことは大事だろう?」
カイオス「…はいはい。…それよりも頼みたいことがある。」
ノア「?」
ノア「…こんな状態で魔力あるように見える?」
カイオス「回復すりゃいいだろ?」
ノア「花畑にでも行かなきゃ無理だよ。」
カイオス「いいや、お前に行ってもらうのは花畑じゃない。森だ。」
ノア「…確かにこの村は木に囲まれているけど…」
カイオス「村の入り口付近に、昔植えたものが繁殖しすぎてな。どうだ?出来そうか?」
ノア「うん。それなら出来るよ。」
カイオス「ありがとう。」
カイオスはノアに深々と頭を下げる。
ノア「構わないよ。」
カイオス「…なぁ。」
ノア「?」
カイオス「お前は本当に…うちで保護することも…」
ノア「いいんだ、もう。これ以上僕の為に死ぬヒトなんて増やしたくない。それに、もう同族が居ないのに生きてても意味なんて無いに等しいよ。」
カイオス「…。」
ノア「君じゃなければ僕はとっくに強制的に保護されてたかもね。ありがとう。」
カイオス「いや、それくらい…」
カイオスが返答しようとすると、ノアは急に顔を強ばらせる。
カイオス「?ノア?」
ノア「来る。」
カイオス「え?」
次に聞こえた音は悲鳴と、けたたましく鳴く唸り声だった。
時間は少し遡る。
メム二「もーちょい、右。あっ!行き過ぎ!そこそこ!完璧!」
アリィ「置くよー。」
そういうとアリィは屋根の一部を置く。
メム二「アリィちゃん、本当に力持ちね!それに比べてうちの旦那は…」
メム二が呆れた顔をしてグレイをみる。
グレイ「ぎっくり腰起こしてるんだから、もっといたわってくれてもいいのになあああ?」
アリィ「あ、あはは…」
(ただ、魔法で筋肉増強させてるだけなんだけど…)
ジーク「お二人は本当にお似合いな夫婦ですね。」
ジークがレンガの塀を直しながら言うと、メム二は自慢げな顔をする。
アリィ「ところでなんでギックリ腰に…」
グレイ「それには深い理由が…」
メム二「私に力自慢しようとして、なっただけよ。」
グレイ「あっ言われちゃった…」
ジーク(ぎっくり腰してる割に元気だなこの人。)
ジーク「ん…?」
兵の向こうから薄茶色のぴこぴこと動く耳が見える。
アリィ「あ、アカネ君。」
アカネ「はい、アカネですよ。お二人は修復のお手伝いを?」
アリィ「うん!」
ジーク「いつ出たんだ?」
アカネ「さっきまでは家にいましたよ。ただノアさんとカイオスさんの話が盛り上がっていたようなので、僕もお手伝いをしようと先程出てきました。」
アリィ「カイオス…?」
ジーク「誰だ?」
アカネ「あれ?会ってませんでした?まぁそのうち会うでしょう。」
ジーク&アリィ「?」
アカネ「それより何かお手伝い出来ることはありませんか?」
アリィ「それなら屋根の修復を手伝ってもらおうかな。」
アカネ「分かりました!」
アカネが梯子を使い、登ろうとした途端ジークは手を止める。
アリィ「ジーク?どうしたの?あっ、疲れちゃった?そろそろ休憩する?」
ジーク「いや…」
(四足歩行の足音…?この村に家畜はあまり居ないようだし…いやそもそも足音が大きすぎる…こっちに向かってる…?っ…!)
ジーク「…っアカネ君スピーカー機能とか…!」
アカネ「?ありますよー」
アリィ「あるんだ!?便利だね!?」
アカネ「ですがスピーカーを使って何を…」
ジーク「今すぐ、村の西側に居る人達を避難させてくれ!」
アカネ「わ、分かりました…!」
メム二&グレイ「?」
アリィ「…。」
スピーカー「イニディア村西エリア居住区に現在居る方は、至急東エリア緊急用シェルターへ避難をお願いします。イニディア村護衛のカイオス、ベツレヘムは至急、誘導とシェルター解放をお願いします。繰り返します。イニディア村西エリア居住区に現在居る方は…」
カイオス「シェルターを解放してくる。お前は…」
ノア「分かってるよ。任せて。まぁまずは避難させてからだけど…。西エリア居住区に丁度居るみたい。」
カイオス「分かった。」
マリア「ねぇあれアカネの…」
ベツレヘム「うん、カイオスは研究所に今居るはずだし、誰だろ…?」
マリア「嘘発見器搭載してるから悪戯じゃ無さそうだけど…」
ベツレヘム「多分距離的にカイオスがシェルター解放に行ってくれてるだろうから、私誘導するね。マリアは避難してて。」
マリア「待って!私も誘導くらいなら出来るわ、手伝わせて。」
ベツレヘム「じゃあお願い。でも無理はしないで。」
マリア「ええ。」
2人で誘導の体制に入る。村人達も落ち着いているようで、大人は大人しく誘導されて東エリアに移動する。マリアがまだまだやんちゃな子供を誘導する。
マリア「新しい玩具欲しい人ー?」
子供達が続々に、欲しいと答える。
マリア「それなら…持ってけドロボオオウ!」
マリアは思い切り玩具を東エリアに投げる。
マリア「さぁ1着の人の分しかないわよ!急げ急げ!」
すると子供達はいの一番に自分が先だと言わんばかりに、東エリアに競争していく。
ベツレヘム(子供の扱いは私なんかよりずっとプロだね…。母親ってすごい。)
西エリアより中央エリアの人数が増えた頃、それはやってきた。
木をなぎ倒して、家を石ころを蹴るように壊して突っ込む。目はかつてはあったのだろうか。黒いそこの見えない2つの穴と硬い鱗のようなものを身にまとって、虫のような羽が生えたものが。
肉食昆虫飛行型悪魔がイニディア村に侵入してきた。
ジーク&アリィ「気持ち悪ぅううううう!!!」