テラーノベル
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_いえもん side_
春の柔らかな日差しが木漏れ日となって地面を照らす。空気は澄んでおり、少し寒い朝の気温が心地よい。そんな中、ザクザクと湿った土を踏みしめる音が静寂な森に響く。その音の主は俺と、俺の半歩前を歩いているめめだ。森の新鮮な青々しい香りを吸い込みながら、俺は数日前のことを思い出す。
いえもん「はい。俺は能魔者です」
めめ「やっぱりそうでしたか。おかしいと思っていたんですよ。私の鎌が壊れてしまったとき、その原因となった魔石はかなり遠くから投げられていました。その上、弱い魔獣を狩れる程度の強さしかないのに一人で旅をするなんて、危険すぎます。能魔者か、とても力が強い訳あり人の択しかありえません」
そう言うと、めめは俺を縛り付けていた鎖を解除する。それと同時に、俺の口は自由に話すことができるようになった。
いえもん「さっきのは…?」
めめ「貴方と闇の契約を結んだからですね。これでもう嘘はつけませんよ」
その後の話によると、めめは俺と自分自身に対して「闇の契約」という闇魔法を使ったらしい。その魔法は魔法を行使した側…つまりめめが、行使される側の俺に絶対的な支配権を持つというものと言っていた。俺の口が勝手に動き本当のことを言ってしまったのも、その絶対的な支配権の影響だそうだ。恐ろしい魔法である。めめにそんなことを言うと強い分その魔法を発動するための条件が多いと言っていた。そのうちの一つが、「魔法を行使する側と行使される側の同意」で、それを示すために呪文の復唱が必要だったという。俺は契約内容に納得していなかったし、事前に聞いてすらいなかったが、復唱すると自動的に契約に「同意」したことになるらしい。とんでもなく不完全なシステムである。その他にも闇の契約の条件として「両者が同じ種族であること」や「支配権を持つ側が支配される側より魔力が多いこと」などがあるがそこは割愛する。そして一番問題なのががこの闇の契約は、解約ができないことである。契約する時に魂にその内容を刻み込んだため、解除することは不可能だと知った。その時の俺の絶望はどれほど深かったか。闇の契約によって俺は一生をめめの所有物として過ごすことになってしまったのだ。
それから俺達はめめの壊れた鎌を修理するために彼女の弟子のもとに向かうことにした。不幸中の幸いは、そこが俺の行ったことがない場所だったことだ。しばらくは旅を続けられる…ーーーのために。めめも旅をする目的があるそうだ。それが何かは語らないが、お互い様だろう。
めめ「着きました。ここです」
そう言っためめが見ているのは、一つの巨大なキノコだった。高さは人2人分はあり、幹は大人1人が手を広げても囲えないほど太い。傘もかなり大きく、赤地に白い水玉模様というまさに毒キノコらしい見た目をしている。この中に住んでいるとでも言うのだろうか。突然めめが俺の肩に手を置き、空いているもう片方の手でキノコの幹に触れた。何事かと目を瞬くと、その一瞬の内に目の前の景色が変わっていた。さっきまであった周りの木々はなく、代わりに見たことがない草が植えられている畑になっていた。その先には小さな一軒家があり、白い壁と紫の屋根がメルヘンさを漂わせていた。
「魔法でカモフラージュされていました」
どうなってんだという俺の疑問に先回りするように彼女は答えた。
「早く行きましょう」
歩き出した彼女に俺は一拍遅れてついて行った。ドアの前に立つと、めめはコンコンコンと3回ノックをした。
ガチャッ
?「は〜い」
家の中から出てきたのは、めめさんよりも小柄な女の人だった。髪は白髪でツインテールに結ばれ、その片方には黄緑色のリボンがついているか。そして彼女の湖のような明るい水色の目は、じっと俺たちを凝視していた。
めめ「貴方はレイラーさんではありませんよね」
そう言うとめめは左手を前に突き出し魔法を放った。
めめ「ダークボール」
いえもん「めめさん!?」
さっきの女の人はそれを避けられず、直撃。ダメージを負い倒れるかと思ったが、魔法に当たった所からシュワシュワと溶けるように消えてしまった。
「どうなってんだ…?」
目の前で起こったことに混乱していると家の奥の方からさっきと同じ女性が歩いてくる。さらに俺の頭は混乱した。
?「やっぱり師匠ですね。ご無沙汰してます」
師匠…この人がめめの弟子なのだろうか…。
めめ「お久し振りです。レイラーさん。今日は悩みがあって来ました」
レイラー「師匠からの頼みってなんですか?私にできることなら何でもお手伝いしますよ!」
めめ「ありがとうございます。実は、以前作ってもらった鎌がこの人のせいで刃こぼれしてしまって…。修理してほしいんですが、素材など大丈夫ですか?」
めめは言いながら俺のことを目で指すと、レイラーという人の目が初めてこちらに向けられる。俺を捉えたと思ったら、その目は怒ったように細められた。
レイラー「師匠の手を煩わせるなんて…。死よりも重い制裁を与えなければ…!」
唐突に出てきた物騒な言葉に俺が驚いていると、めめがレイラーをとりなす。
めめ「まぁそう言わずに落ち着いてください。レイラーさん。私も彼に対しての怒りは収まっていませんが、鎌の分以上にしっかり働いてもらえればいい話です」
レイラーはその言葉に渋々頷いた。
めめ「それに、彼はこれから私が考えている計画に必要な人材かもしれません。だから私と闇の契約をして、能魔者であることを聞き出しました」
レイラー「能力者…そうですか」
めめ「いえもんさん。紹介します。彼女は私の弟子のレイラーさんです。魔力者で、魔法の研究をしています。さっき私が倒したのはレイラーさんが魔法で作った分身です」
分身…だからめめさんは躊躇なく魔法を放ったのか。
いえもん「いえもんです。身体強化の能魔者です。せっかく作った鎌を壊してしまってすみませんでした」
すぐ物騒な言葉がでるレイラーの怒りを買うのは勘弁なので、大人しく謝っておく。
レイラー「……しっかり師匠のために働いてくださいね。」
少しふてくされた顔で言われた。
いえもん「はい」
これからどんな関係になっていくか分からないが、取りあえず無視はされなさそうでよかった。俺は少し肩の力を抜く。俺たちの会話の終わり際を見計らうように、めめが次の話題を出す。
めめ「あと、もう一つここにきた目的がありました。私の計画の協力をお願いしにきたんです」
レイラー「さっきから話にでていた計画のことですね。どんな計画ですか?」
めめ「それはですね…_」
今日はここまでです!
前回設定などは世界観を壊さないためにあとがきにいれがち〜みたいな話をしましたが、今回はガッツリ作中にいれました。一応それは理由があって、いえもんにとって闇の契約(というか魔法全般)があまり馴染みのなかったので説明がてら共通認識を持ってもらいたかったからです。
勘のいい方はもう気づいていらっしゃるかもしれませんが、この世界の文明はそれほど発展していません。森や山の中にぽつぽつ村や集落がある程度だと思っていただきたいです。人外にたびたび襲われて滅びるので、どうしても長年存在する都市などは少なくなります。交通の便も悪くて噂も流れづらいです。それでも能魔者の話はインパクトがあるので比較的多く噂されますが。教育レベルも低く、学校は貴族向けしかありません。そこら辺の村の農民なら精々かけ算割り算ができるくらいですね〜
そんな中を一人で旅していたいえもんさんは、危険すぎる環境に身を置いていましたね〜。どうりでめめさんに怪しまれる訳だ。
そしてレイラーさんが登場しました。魔法要素をたくさん入れていきたいので、よく活躍してくれそうです。
あとそろそろ投稿頻度を増やしたいと思いまして…いままでは週一ペースだったんですけど、これを基本週一できれば週2にします!曜日は〜まだ決めていません!←え?
日曜日と気が向いた日投稿ですかね…
そんなこんなで今日はここまで!また来てね!
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