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*アイス*
*アイス*
11,019
-–
お泊まりなんて聞いてない
仕事が終わったのは夜遅くだった。
雨。
しかも結構な土砂降り。
「うわ」
仁人が窓の外を見ながら呟く。
「やばくない?」
その横で俺はのんきに笑った。
「台風みたい」
「笑い事じゃないだろ」
「仁人傘ある?」
「ない」
「俺もない」
「終わった」
二人で顔を見合わせる。
-–
しばらく待ったが雨は弱くならない。
むしろ強くなっている気がする。
俺はスマホを見ながら言う。
「なあ」
「ん?」
「今日泊まれば?」
「どこに」
「俺ん家」
仁人が固まる。
「は?」
「だから俺ん家」
「いやいやいや」
「なんで」
「なんでじゃない」
俺は本気で不思議そうな顔をした。
仁人の方が意味が分からない。
「普通に泊まればいいじゃん」
「普通じゃないだろ」
「何が?」
「全部」
-–
結局。
帰れる状況ではなかった。
気づけば家の玄関に立っていた。
「お邪魔します……」
「いらっしゃい」
俺はにやつきを隠しきれなかった。
仁人は少し緊張している。
初めてじゃない。
でも泊まるのは初めてだ。
なんか違う。
すごく違う。
-–
「適当に座ってて」
「うん」
リビング。
ソファ。
テレビ。
生活感。
仁人はなんとなく部屋を見回した。
その時。
「はい」
タオルをじんとに向けて投げる。
「風邪ひくぞ」
「ありがと」
「かわいい」
「なんで今」
「タオル受け取った顔」
「意味分かんない」
そんな顔を見て俺は笑う
仁人はため息をついた。
本当にいつもこれだった。
-–
夜。
シャワーも終わった。
問題はここからだった。
「じゃあ俺ソファで寝る」
仁人が言う。
「ダメ」
「なんで」
「ベッドあるじゃん」
「いや悪いし」
「悪くない」
「でも」
「俺が嫌」
「は?」
「仁人がソファで寝るの嫌」
当たり前みたいに言う。
仁人は困った。
こういう時の俺だけは強いと思う。
-–
数分後。
寝室。
仁人はベッドの端に座っていた。
「待って」
「ん?」
「なんで勇斗もいるの」
「俺のベッドだから」
「そうだけど」
「そうだけど?」
「一緒に寝るの?」
少し笑った。
「当たり前じゃん」
「当たり前じゃない」
「え、追い出すの?」
「そういう話じゃなくて」
-–
勇斗はベッドに寝転がる。
そして隣をぽんぽん叩いた。
「早く」
「……」
「仁人」
「……」
「かわいい」
「関係ないだろ」
「照れてる」
「照れてない」
「かわいい」
「うるさい」
-–
結局。
仁人は隣に横になった。
距離はかなり離れている。
端と端。
俺はそれを見て笑う。
「落ちるぞ」
「落ちない」
「もっとこっち」
「嫌だ」
「なんで」
「近いから」
「かわいい」
「勇斗」
「はい」
「寝ろ」
-–
部屋の電気が消える。
静かになる。
でも。
仁人は全然眠れなさそうだった。
俺もそうだった。
近い。
思ったより近い。
変に意識してしまう。
勇気を絞って話しかける。
「仁人」
「なに」
「起きてる?」
「起きてる」
「やっぱり」
「勇斗もじゃん」
「うん」
少し沈黙が続いた。
「泊まりに来てくれて嬉しい」
ぽつりと言う。
俺は真面目に話しかける。
仁人は言葉に詰まる。
「……そう」
「うん」
「そんなに?」
「そんなに」
-–
俺は暗闇の中で笑う。
「また泊まり来てよ」
「考えとく」
「来るじゃん」
「まだ分かんない」
「来る」
「なんで断言するんだよ」
「だって」
俺から少しだけ近付く。
そして小さく言った。
「仁人、俺のこと甘やかすから」
「は?」
「だから来る」
「意味分かんない」
「かわいい」
「寝ろ!!」
暗闇の中に二人の笑い声が響いた。
けれど仁人は知らなそうだった。
俺がそのあとしばらく眠れなかったことを。
隣にいるだけで嬉しくて。
少しだけ心臓がうるさかったことを。
-–
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡1000
欲張ってすみません
コメント
1件
お泊まり回エモすぎた…!!😭💕 雨で帰れなくなって「俺ん家」ってサラッと言う勇斗、強引なようで実はちゃんと仁人のこと想ってる感じが尊い〜!!「かわいい」連打マジでズルいでしょ勇斗くん…笑 暗闇で「泊まりに来てくれて嬉しい」って素直に言えるの、めちゃくちゃ胸に刺さったよ…最後の「隣にいるだけで心臓がうるさかった」で完全にやられた!!二人の距離が縮まる感じがたまらんかったです✨ とまとさん、続き楽しみにしてますっ!!