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【能力者名】独絵三十九秒
【能力名】 アンハッピーリフレイン
《タイプ:友好型》
【能力】勉強中、鉛筆を転がすことで
39秒だけ時間を巻き戻す能力
【以下、細菌達の記録】
(土曜日、独絵三十九秒の自宅にて)
「《アンハッピーリフレイン》………
《アンハッピーリフレイン》…………
《アンハッピーリフレイン》……….。」
ガリガリ、ガリガリと鉛筆を走らせ、
時々能力で時間を巻き戻しながら 独絵三十九秒は苦手な現代文の勉強をしていた。
彼女の頭には職人と呼ばれるその技術を能力にまで昇華させた人が作った集中力をとてつもなくあげる《拘り鉢巻き》を頭につけ、
彼女の口の中には、ものすごく苦くてまずいし食感も最悪のグミ、《臥薪嘗胆グミ》、
そして彼女の椅子にはものすごく座り心地が悪い上にめちゃくちゃ固くて痛い《ステロイド社特性マキビシマット》を敷いていた。
まるで、昭和の受験生の最後の追い込みの
ようである。
彼女はにっくき双子の妹、独絵転々に次の
テストこそ勝つために、このようなほぼ拷問のような勉強を自ら進んで行っていた。
彼女の両親は、彼女を心配していた。
彼女の両親は、その双子をどちらも分け隔てなく愛していた。
だから、これは彼女自身の意志で、 彼女の姉としてのプライドをかけた勉強なのだった。
ふと、時間が止まった。
彼女は鉛筆を何回か転がして、鉢巻きを
外し、カスみたいな味のグミをテッシュに
包みゴミ箱に捨て、はーッと大きな溜め息をついた。
「また《アンハッピーリフレイン》が
バグったか…….私とおなじポンコツ能力め
……..。」
と、彼女がイライラした顔で言った。
彼女の《アンハッピーリフレイン》は定期的にバグった。
バグの条件は二つ。
一つは彼女が家の中にいること。
もう一つは彼女の肉体•精神が限界を迎えそうになること。
つまり《アンハッピーリフレイン》のバグとは彼女の心の防衛規制なのだ。
彼女は徐に服を脱いだ。
自宅なのだから別に服ぐらい脱いでも問題ない。
ましてやここは時の止まった空間。
にっくき双子の妹も、両親も、近所の人達に
も ここでなら本気で叫んでも文句は言われまい。
「ふざけんな…..!!!!!ふざけんなぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!なんであたしはいつもぉぉぉぉ!!!!!!!!!あたしの努力を裏切るんだよぉおおぉぉ!!!!!!!!くそッ……クソォォォォ!!!!!!!!」
独絵三十九秒はそう叫び自らの頭をポカポカ
殴った。
そうとうストレスが溜まってるようである。
彼女の鬱憤はこんなもんじゃない。
「大体何で現代文の小テストにラノベの問題がでるんだよぉぉぉ!!!!!教えはどうなってんだ教えはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
彼女はこないだのテストにブチギレた。
彼女のこないだの小テストの成績は
248/250、そのうち2点の失点は現代文の
ラノベの選択問題であった。
これは完全に米津高校の現代文教師、
切名旅行が悪い。
だが切名旅行の言い分も聞いてあげてほしい。
彼は生徒達により現代文に親しみを持ってもらうために、善意で今回の小テストにラノベの問題を選んだのだ。
そして、独絵三十九秒の人生は、大抵こういった善意によってお労しい目に合うことと
なるのだ。
彼女の鬱憤はまだまだまだまだ終わらない。
「大体あのッ…….あのクソ親どもがぁぁぁぁ!!!!!何だよ三十九秒ってクソみたいな
名前ぇぇぇ!!!!!!!あたしもテンテンみたいな
可愛い名前がよかったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
彼女はキレすぎて壁を殴った。
痛かったのか床にうずくまってごろごろ
しだした。
時を止めながら壁をブン殴れるのだから彼女の 能力者としての素質はめちゃくちゃ高い。
それこそワンチャン《神》とよばれる
都市部の能力者達に到達しうるレベルで
ある。
そして彼女が三十九秒とかいう妙ちくりんな
名前なのにももちろん理由がある。
独絵三十九秒の両親達は、ちょっと頭がおかしいレベルのミク廃、そしてヒトリエ信者だった。
かつて、この国にはwowakaという名の
音楽の才能だけで《神》と呼ばれた一人の男がいた。
彼の死を悼んだ両親は自らの名字を変え、
彼らの愛娘達にそれぞれ、wowakaと呼ばれる男が残した曲に纏わる名前を付けたのだ。
そんなことを露知らず、独絵三十九秒の
ストレス発散はまだまだ続く。
「だいったいあのクソ妹ぉぉぉぁ!!!!!!!
私の最推しのチャイニーズ•マカロン様の
てきっとぉーなモノマネし•や•がってぇぇ
!!!!!!!!!あぁ言うニワカの適当なモノマネが
いっちばん腹立つんじゃボケェェェェ!!!!!」
ぶちギレしすぎて言葉が悪くなっている。
ボケはこの国では第一種チクチク言葉として
使用が固く禁じられている。
だがここは止まった時の中なのでセーフだ。
そして可愛い可愛い転々ちゃんはお姉ちゃんと仲直りしたいという善意によってめちゃくちゃクオリティの低い推しのモノマネをし続けた。
この姉妹は、どこまでも善意によって
すれ違う運命にある。
「あの妹ほんっとにムカつくぅぅぅ!!!!!
なんなのアイツマジで毎回毎回あたしの
努力をでんぐり返し一回で追い抜きやがってぇぇぇ!!!!!あれか!!!???私もでんぐり返しすればいいのかぁ!!!????逆立ちしても天才様には勝てませんってかぁぁぁぁ!!!!!!!!
クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
なんとなんと、妹にブチギレたことで壁を何回もポカポカ殴っている。
時を止めながらだ。
彼女にはめちゃくちゃ能力者の才能がある。
それこそでんぐり返ししかできないかよわい
かよわい転々ちゃんよりも何倍もだ。
そして彼女はめちゃめちゃ可愛いし運動神経もばりくそ良い。
そしてAdoと同じような声質と高い音楽の
才能がある。
なぜこの逸材はあんなでんぐり返ししか
できないビッパみたいなザコ妹に拘るのだろうか?
ポケモンを知らない人が読むかもしれないからポケモンで例えるのは本当に申し訳ないが
拘り鉢巻きを巻いたガブリアスがずっと
ステルスロック撒いてるみたいで
滑稽である。
「はぁ……..はぁ……..超スッキリした。」
よかったね。
「っふぅー。また勉強すっか。」
彼女はそう言ってパンツを履き、ブラを着け、パジャマに着替えて鉢巻きを巻き、
臥薪嘗胆グミを10個口に加えて、勉強の
ポーズを取った。
すると、再び時が動きだした。
誰か彼女に教えてあげればいいのに。
勉強で転々に勝つことを諦めれば
あなたはいくらでも幸せになれますよって。
本当にどうしようもなくて可愛い姉である。
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)