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王都への出発時間は、ギルドに八時集合らしい。領主様はこの街道を通っていくから、合流するそうだ。
リーダーはマックスさん。
「護衛依頼は明日中に受けておけ。それと王都行きも依頼だからな。当日の立ち位置はマックスと騎士団長が決めていると思うからそれに従えよ。騎士のことは騎士団長、冒険者はマックスの指示通り動くように」
了解!
このあと、ドールーハの店に行ってから一度戻って食事をしてから家に行くと伝えて部屋を出た。
「おはよう、おじさん」
「おお、おはよう。聞いたぞ、王都に行くんだろ? 聞いてたからコートとローブを出してある。こっちこい」
ギルマスが話してくれてたんだな。
いつもの部屋には数着の服が用意されている。
まず、ローブ。
これは長さが短いけど、カラフルだ。特別防御は付与されてないらしい。それに比べてコートは見た目からして違う。材質は蛇らしい。なんの蛇かは知らないけど、魔物だって。魔法攻撃に強くて、多少の剣ならはじくと聞いてびっくりだ。そんなのが子供サイズでもあるんだね。
「これはな、そのうちお前に使うかもと思って作っておいたんだ。こんなにすぐだとは思ってなかったから、多少デカいがな」
そうなんだ。とっても嬉しい。俺が必要になるかどうかもわからないのに、俺の事を思って作ってくれてたなんて。
そして隣りにあるのは全然違う雰囲気のコート。
これはオーガの革らしい。当然、剣の刃は通りにくいって。魔法攻撃に対しては、魔法防御の付与がしてあると聞いた。
サイズはこっちの方が今の俺にはいいらしい。
どっちも着てみることにする。
うん、蛇のやつは多少大きいかな。長さも長め。袖は折り返す必要があるね。でもかっこいいんだよ、これ。グレーで色が濃いところ薄いところがあって、ちゃんと蛇の皮だってわかるんだ。でも固くはないんだよね。
オーガの方は、サイズはこのままオッケーだね。魔法耐性も付与してくれてるらしいけど、着心地も柔らかくていい。
これ、どっちも欲しい。
いくらですか、と問えば、蛇の方は金貨三枚。オーガの方は金貨二枚と銀貨八枚らしい。
「それなら両方欲しいな。移動中はどっちがいいと思う?」
それならオーガだと言う。
なぜ?
襲われたときすぐに動ける。大きめだと動きにくいから。
ふむ、そういうことね。
じゃあ、とりあえずオーガのコートメインで使う。冬になれば温かい服を着るだろうから、蛇でも大丈夫でしょう。
それなら、と金貨五枚と銀貨八枚を支払った。
それぞれを紙袋に入れてくれたので、そのままアイテムボックスへと入れた。
そして今から家の引き渡しだと報告しておく。
毎日ギルドには来るから、剣の調整を頼んでおいた。
もちろんだ! と請け負ってくれるのはありがたい。もう、ここでしか防具や剣は買えないほど信頼しているからね。
ギルドで食事を食べてから、家に向かうことにした。
のんびりとあるいて向かう。
明後日からしばらくはのんびりできないよね、とフラットに言えば、そうだねと返ってくる。
どうやら中途半端な速度で走るのは嫌らしい。それに夜の護衛当番。人数が多いからそれほど回っては来ないだろうけど、フラットが請け負ってくれると言う。俺はフラットの腹で寝てればいいと言ってくれる。まあ、フラットが大きなサイズでそこにいれば、魔物もなかなか来られないだろうね。かなりの高ランクじゃなきゃ襲ってこない。それはとてもありがたい。
でも、皆と一緒の時はテントにした方がいいと聞いた。
まあ、特別なことをすれば目に付くだろうしね。じゃあ、テントを使おう!
ゆっくりあるいていたけれど、すぐに家に到着した。
塀にあるでっかい引き戸の鍵が開いているので、デクたちは来てるんだろう。
中に入れば、植栽もある。大分庭が賑やかになってるね。うん、センスがいいよ。
「こんにちは。ナギです!」
待ってたぞ! とデクたちが向かえてくれる。
フラットは水場で脚を洗っている。急いでマットを取り出しておいた。当然の様にその上に乗っかったフラットは、脚を舐めてきれいにし始めた。
少し待ってもらって、アイテムボックスからソファセットを取り出す。そしてダイニングセットもおいた。
「おお、すごいな。明るくなった。ライトのことを言ってなかったけど、大丈夫か?」
買ってきたといえば、出せばつけてやると言ってくれたので、外用は三つとりだし、屋内は適当においた。
じゃあ、と位置はプロに任せることにして、塀の引き戸の近くに一個つけて欲しいと伝えた。
ささっと別れていった職人たちに後を任せて、明細を受け取る。
ふんふん、と確認すれば間違いないようだ。
まとめて支払ってもいいと言われたので、まとめた金額を取り出した。隣りには余分に金貨五枚を置く。
「ありがとうな。仕事をもらって助かった。かあちゃんに文句言われなくてすむ。で、これは?」
「気持ちだけです。酒代にでもして下さい」
ありがとうな、ととても嬉しそうだ。
ライトの取り付けも終わり、職人たちは深く頭を下げて帰っていった。
鍵も返してもらったので、塀の内側に鍵をかける。そして玄関にも鍵をかけた。
さて、なにからはじめようか。
最初にベッドとマットを取り出して、今夜の寝床を確保する。
ベッドとフラットのマットを中心において、ごろりと転がってみた。
フラットも大きなままで寝られるので嬉しそうに転がっている。
しまった、カーテン忘れたよ。まあ、外からは見えないからいいかな。
そのあとは、キッチンへ直行だ。
食器を入れる棚を取り出して並べて行く。
鍋などもキッチンの一番下においた。
マジックアイテムもあるし、ストーブでも料理できる。これは最高だよね。
食材は、とりあえずアイテムボックスの中だ。旅に出るから必要になる。それなら出す必要はないよね。
旅で困るのはご飯を炊くことだ。
なかなか火が落ち着かないから、きれいに炊けない。それに火加減を見ている必要がある。それは困るよね。
ならどうするかな。
クリエイトさんに頼んで、炊飯器をつくろうかな。
とりあえず、やってみよう。
鉄の炊飯器でいいかな。炊飯の内釜は銅がいい。少し厚めにしてもらいたい。魔力を貯めてご飯を炊きたい。日本の炊飯器みたいに仕上げたい。
そんなふうに思いつくままをイメージしてやってみる。
(クリエイト)
ピカーッと光って一分くらいたったとき、デデンと炊飯器があった。
あ、何合炊きとか指定してないし、計量カップもない。
見た限りでは五合くらい炊けそうだ。
じゃあ、もう一つだね。
同じようにイメージして、一升炊き、そして計量カップ付きとイメージする。水のメモリはあれば良し。
(クリエイト)
ぴかっーっと光って、さっきより短い時間で出来上がった。
おお、さっきのより大きいぞ。
中を見れば一升くらい炊けそうだね。これなら内釜だけあれば入れ替えて炊きたてを入れておける。
そういえば、複写の魔法を作ればいいとおじいちゃんが言ってた。じゃあ、やってみようかな。
何でも細かい所まで複写できる。機能は同等、大きさも同じ。魔法名はコピー。
(クリエイト・コピー魔法)
ぶわぁっとかなりの光があたりを照らす。数分続いただろうか、どうやらできたみたいだ。
ステータスを確認すれば、コピー魔法が追加されている。
それならやってみよう。
一升炊き炊飯器の内釜を取り出して複写を試みる。
<コピー>
コロンと隣りに同じものが現れる。
炊飯器にセットしてみれば問題なく同じだ。
うん、これはいいかもね。
念のために計量カップもコピーしておいた。
これなら大丈夫だよ。
一升炊きの内釜を三つコピーして五合炊きも一個コピーしておいた。
これ楽しいな。
やってみたかったことが形になるっておもしろい。魔法ってすごい、スキルってすごい!
さっそく試してみようとご飯を炊いてみることにする。
米を出してカップで量り、魔法で出した水できれいに洗った。そのあと、内釜を覗き込めばちゃんと印があるんだ。できれば、くらいで思ったのに、これチートだよ。
一升炊きの釜に三回ご飯を炊く。もちろん目一杯。そして五合炊きは二回。
水晶が取り付けられていて、魔力を貯めて発動する。超便利だね。
これ、フラットと二人だけの旅なら木造の家を作ってもっていけば良い。それにホットプレートも作れば、焼き物とご飯はできる。あとは、コンロのマジックアイテムでスープとか作ればいいよね。肉を大量に焼くときはどうしようかな。油だらけになりそうだけど。外で焼くか! そんな時はフラットに結界を張ってもらうか土で壁を作ればいいかな。
なにより、料理もある程度作っておけばいいでしょ。
それに作ってみたいものもある。
鍋焼きうどんだ。それにチャーハンとかの中華。そしてパンケーキとかのおやつだね。
ああ、飴とか持ってたらよかった。飴って水飴だよね。似たようなものをどこかで見つけたらコピーしておくかな。
王都に行ったとき、いろいろ探してみよう。
ギルドへ戻って、皆に礼を言い引っ越しをした。
皆、毎日くるけど、やっぱり寂しいねと言われて涙が出そうになっちゃったよ。見た感じは女の子だけど、俺は男だ。これくらいで泣いちゃダメだろ!
明日は一日旅の準備だ。
フラットの寝床を確保したいけど、無理だよね。テントだと大きさが足りない。うーん、どうしようか。
空間魔法が使えれば中を広くできるけど、今はまだ使えない。
フラットに小さなままで寝るように言えば、そうしてくれるだろうけど、数日連続はかわいそうだよね。
それに野営する時、野営地にも限界がある。だから一人だけ家って言うわけにはいかない。それなら土の家にしようかな。その方がまだいいかもね。なんなら、冒険者たちのエリアを全部土魔法で囲ってもいいかもしれない。
それなら安全だしね。でも雨が降れば無理かな。大きな壁の強度ってどれくらいある?
考えはじめたらキリがない。
この家はとても心地よいスペースだけど、旅に出ればそうはいかない。
安全の確保って本当に大変だよね。二人だけならどうとでもできる。でも皆がいたらそうはいかない。
どうしようかな。空間を広げることってできるだろうか。
空間拡張の魔法って作れるかな。
テントとか木箱とか、限られたスペースの空間を拡張する魔法が欲しい。今持っているテントの空間を広げたい。創造神アルム様が言うとおり、旅に出るときの家が欲しいけど、大きなものは違和感があるから、小さな建物だけで中を広げたい。そんな風に仕える魔法。
(クリエイト)
ぴっかぁああああーーー
え? 今まであんなに光ったことはないけど、なんで?
十分くらいすればゆっくりと光が収まってくる。
フラットもキョトンとして見ているけど、俺も同じだ。
失敗したのかな。
光が完全に収まった時、ステータスを見てみた。
おーーーーー!
空間拡張魔法っていうのが増えてるぞ!
これ、他の魔法にあるんだろうと思うけど、いろいろできる魔法だった気がする。でも、これは空間拡張に特化しているみたいだね。ちょっとやってみるかな。
商会で買い物をしたとき、鍋やフライパンなどの重い物は木箱に入れてくれた。蓋もある。これでやってみよう。
この箱の容量を三倍くらいにしたい。
<空間拡張>
ふわっと光った木箱だけど、外側は全く変化無し。
時間が止まるとかは指定してないから、俺でも入れるかな。
よっこらしょ、と木箱の縁に上がった。そしてライトを中に放り込む。中は普通の木箱だけど、かなり広いよ。
すとん、と中に降りてみた。
うん、やっぱり生きてる俺が入れるとから人の出入りもできるんだね。
「フラット、小さくなって入って」
ふぁふっと小さくなったフラットは、俺に向かって飛び降りてきた。呼吸もできるし全く違和感はない。これならいいかもしれない。こういう箱の中で寝泊まりすればいいかも!
それならもう少し大きな箱を探すかな。テントくらいの大きさにする? それともテントの中を広くする?
うーん、やっぱりいろんなことを考えて、テントの中を広げる方がいい気がする。
「ねえフラット。二人で旅するときは小さな家でするけど、今回はテントの中を広げようか。それでいい?」
『うん、いいよ。テントのなかでも広ければ問題ない。うれしいね、ナギ』
そうだね。
これはとても便利だ。
この箱には鍋や釜、マジックアイテムなんかを入れて行こう。ライトも外部用を一個残してたのは、テントで使うためだ。忘れないように入れておこう。
それからは、フラットと一緒にいろんなものを詰め込む。ライトとか鍋、釜、フライパン……
あ! 卵買うの忘れてた!
明日でいいよと言ってくれるフラットは優しいね。
じゃあ、明日用のメモをタブレットにリストアップする。
卵っと。今のところこれくらいしか思いつかない。
明日は料理もいろいろ作っておこう。肉を焼くのは問題ない。外で火をおこせばいいだけだ。でも、オークの煮込みとかは時間がかかる。ホワイトシチューもつくるかな。あと、何がいい?
サラダとフラットが言う。
おお、すっかり忘れてたよ。
果実水も欲しいと聞いてメモした。柔らかいパンもね。
ベーコンがないぞ!
他にないかなぁ。
じゃあ、とりあえず、今夜は何を食べる?
ステーキ、と安定の声が聞こえる。グリルチキンも食べたい。シチューも食べたい。ご飯も欲しい……
あはは、フラットはエンドレスだ。
それからはクリエイトさん大活躍だ。
オークのバラ肉を取り出して、煮込み鍋、砂糖、醤油みたいなもの、そしてお酒。みりんはないから仕方がない。これで鍋一杯のオーク角煮をつくりたい。
(クリエイト)
次はホワイトシチューの材料を取り出して寸胴をおく。鍋一杯のクリームシチュー。
(クリエイト)
ホロ鳥の肉とタレを取り出してもも肉の照り焼き。
そしてフォレストバードのグリルチキン。
(クリエイト)
(クリエイト)
……
そんな風にたくさんの料理を作ってアイテムボックスへと入れた。