テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
44
18
#短編
水底 ずい
376
13ed1
130
コメント
1件
**美月ゆめか🌸ですっ!!** うわああこのエピソード、めっちゃ怖かった…!!😭💦 「ツイてない」から始まって、どんどん不気味になっていく商店街の描写がリアルで、読んでるこっちまで不安になったよ…。 あの奇妙なダンスの男、電車の中にも現れた時はマジで声出たわ…。逃げても逃げても追ってくる感じ、怖すぎる😱 最後の「被害妄想じゃないか」って思った直後にあの男が連結部に立ってるの、構成がうますぎる…!! 続きが気になりすぎるので早く読みたいです!!📖✨
とある休日の昼下がり、私は知らない商店街を歩いていた。天気予報は晴れだというのに、お天道様はいつ顔を出すのやら。分厚い雲がどこまでも続く、なんともどんよりとした天気だった。
それにしても今日は本当についていない。
久しぶりの連休初日。トーストで食パンを焦がし、洗濯物は洗ったそばから地面に落とした。乗りたい電車には乗りそびれ、携帯も忘れた上に、降りたい駅のひとつ手前で降車した。こんな日は多分何をしても上手くいかない。
家で大人しくしているのが一番ではあるが、いやはやどうして。此処は一体どこだろう。見事に迷った次第である。
あまり栄えているように見えない商店街は、なんだかよく分からない空気に包まれていた。途中で入った細い脇道は入り組みすぎて、一生抜け出すことのできない不安感さえある。
それでもどうにかして線路沿いへ出たときの安堵感は、最初から線路沿いを歩けば良かったという後悔に昇華するだけだった。
線路沿いは、商店街の建物より遥かに古そうな住居が軒を連ね、人が住んでいるのが疑わしく思える程静かな通りだった。そんな静かな道をゆったり歩いていると、遠目に妙な男が体をくねらすように踊っているのが見えた。
「うわぁ……」
なにあれ。あまりの異質さに思わず辟易し、流れるように元来た道を戻り始めた。絶対に関わらない方が良い。なんなら、近くすら通らない方が良い。
急いでもう一方の分かれ道を進むと、どうやらそちらが駅に通じる道だったらしく、少しずつ活気のある声が風にのってやってきた。
これでやっと帰れる。そう胸を撫で下ろすと、今日一日で経験した散々な事柄が頭の中を転がっていく。もう早めに寝てしまおう。
駅舎が見えたあたりで鞄の中から定期を取り出すと、視界の端に何やら妙な動きの影を捉えた。それは自動販売機の横で手足をぐねぐねと奇っ怪に動かしていた先程の男で、明らかに自分の方を見ている。
人、だよね……?
見た目は普通の人間ではあるものの、動きがあまりにもおかしい。おかしいというより、気持ちが悪かった。視線をさっと改札口へ向き直すと、殆ど全速力に近い走りをしていた。
階段を一段飛ばしで駆け上がり、最早勢いだけで上っていたのだろう。最後の最後に階段の縁でつんのめり、周囲が驚く程派手な転け方をした。
「痛ったあ……」
勢いで駆け上って転ぶだなんて、友だちだったら絶対に笑っているはずだ。内心恥ずかしい気持ちでいっぱいだったが、それでもあの男からは逃げておきたい。
目の前でオロオロしている女性の脇を通り抜けると、ちょうどよく滑り込んできた電車に乗り込んだ。
入り口側で呼吸を整えている間も、なぜだかひしひしと視線を感じ恐ろしい気持ちになる。下手に視線を動かせばあの得体のしれないものがいるような気がして、頑なに窓から視線を離そうとしなかった。
「ちょっと、あなた血が出てるじゃない! 大丈夫なの?」
え? と声のした方へ視線だけを向けると、私の横には初老の女性がひどく心配そうな表情をして立っている。私のこめかみ辺りを指さすので、なんとなしに手で触れると、まだ乾いていない血がべったりと手に付着していた。
「ハンカチは? あるの?!」
「あ、はい。あります……」
呆然としたままポケットからハンカチを取り出すと、血が耳の近くを垂れていくのが分かった。
傷口を押さえながら周囲を見渡すと、初老の女性以外にも沢山の人が私の方を心配そうな目で見ている。肩口をみると、こめかみや眉の上から垂れてきた血で赤く染まっているではないか。
「次の駅で一緒に降りましょう。急行だからまだ止まらないけど、大丈夫? 気分は悪くない?」
「だ、大丈夫です……」
この年代の人は勢いの激しい人が多い印象だが、今ばっかりはそれが有り難かった。恐らく転んだ時に出来た傷なのだろうが、どうやったらこんなところに傷がつくのだろう。自分でも分からない。
そもそも先程からひしひしと感じていた視線は、もしかして私の傷口と服についた血の染みを見ていただけで、あの妙な男とは全く関係がなかったのではないか。
思わず、ははと乾いた笑いが漏れ出した。とんだ被害妄想じゃないか。
私は女性の気遣いを感じながら小さな溜息を吐くと、反対側の景色をぼんやりと眺めた。
町が飛ぶように去っていく中、ふと視線の端に何かが入り込む。それは電車連結部の貫通幌の中に立ち、くねらすように踊っているあの男だった。得体のしれない笑い顔。
───本当、今日はついてない。