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僕は充電器を探す。僕のスマホは先ほど電車の中で力尽きてしまった。僕の通う大学にいるスマホ中毒者の同級生とは違く、僕は普段あまりスマホを使わないが、その時の僕はものすごくスマホを見たがった。僕は家に走って帰って、ジャンバーをかけて、いつもなら充電器がさしっぱの延長コードをのぞいてみるが、ない。ソファーの下にもない。僕は物をよくなくすけど、充電器をなくしたのは初めてだ。よし、早く探さないと。
僕が住む古いマンションは、僕が初めてこの地に来た時に契約したものだ。狭い部屋ではあるが、身の丈にあっていて、なかなかに気に入っている。探さなきゃいけないのにお腹が減ってきた。オムライスが食べたい。でもそれどころじゃない。早く探そう。部屋の中はそれなりに散らかっており、すべてをひっくり返すとなると大変そうだ。ひとつずつエリアを探していく。
まずは抽斗から。上には2年前に同じ学部の男女5人でいったディズニーランドの写真がある。ついでにネックレスがかかっている。中をのぞくと、小説、書類、文房具、アルバムなどが乱雑に入っており、充電器は見当たらなかった。
次に押し入れ。粗末で小さなものだが、服が大量に入っている。ポケットを確認するが、見当たらない。ジャンバーを探ると、ポケットから1枚のプリクラ写真が出てきた。僕のではない。ある日の飲み会で、それは先ほどのディズニーの写真の通りの5人で行ったものだが、酔いつぶれた女の子をある男子が家まで送りに行こうとした。しかし女の子は相当酔っ払っており、近くのゲームセンターでなぜかプリクラだけを撮って、そしたら寝てしまったらしい。男子は女の子を家まで送り、彼女の家にそのプリクラを置いていったのだ。
キッチンは殺風景だ。なぜなら僕は料理をしないから。もちろん充電器はない。卵のからが数個、三角コーナーに入っている。それだけだ。ふと、こないだ友達が料理をしにきてくれた時のことを思い出した。一昨日の話だ。あの時食べたオムライスはとても、おいしかった。
その後どれだけ探しても充電器は出てこなかった。結果僕は一つの結論にたどり着いた。
充電器は盗まれている。
僕は推理する。なぜ盗まれたと断定するのか、それは大体僕が盗んだ人間のことを分かっているからだ。僕は公衆電話を用いて、犯人に電話をかける。
「おお、お前から電話が来るとは珍しい」
「充電器」
「バレてるか、そりゃ」
「そんなことしたって、俺の脈がないのは変わらないだろ?」
「心配になったんだよ。お前はなんだかんだかっこいいから」
「ありがとよ」
「お世辞じゃないぞ。だからこんな事をしたんだ」
「あの子のことは、君が一番よく知ってるからね」
話は少し遡る。僕らは同じ学部の5人でよく行動していた。男子3女子2のグループで、今電話で話した彼もその中の1人だ。僕と彼は、その中の1人の女子を好きになってしまった。それは互いに分かっていた。ただ、その女子はあの日の飲み会の後、彼をプリクラに連れてった。そこで何やら、彼女は彼に酔った勢いで「好き」的なことを伝えてしまったらしい。しかし彼は、酔ったときの事を本気にするものじゃない、とそれは聞かなかったことにしておいた。
僕は今日、その女子を誘って、遊んだ後、告白した。その時、プリクラの写真を渡された。
「私は、彼のことが好き」
と彼女は言った。分かっていたことだった。彼女は少し考えた後、言った。
「後でメールで答えを伝えるね」
彼女と親密になりつつあった彼は、彼女が重度のスマホ好きだと知っている。さらに、僕が今日彼女を誘ったことも少し前に知っていたらしい。彼は僕の家に遊びに来て、オムライスの材料を買ってくれば作ってやるといった。オムライスに目がない僕は飛び出していった。彼はその間に充電器を盗んだ。
今日、僕の告白の返事が、メールで来ることを想定して。
多分ほとんど衝動的にやってしまったんだろう。悪気はなさそうだった。ただ彼は、その返事を僕に聞かせたくなかったんだと思う。僕がOKをもらうのを聞きたくなかったし、僕がNOと言われるのを聞かせたくなかったんだ。彼は優しい人だ。僕がいくらネックレスをプレゼントしようと、彼女は彼に惹かれる。僕は充電切れのスマホを布団の上に放って寝てしまった。