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どうやら、あの件の原因となった客はいつの間にか消えていたらしく未遂として片付けられたらしい。正直言えばこういう事は初めてではないがそういう経験の中でトップレベルに危険であることから出禁になった
そしていつものように接客し夜の街が賑やかになり始まる頃に涼太郎は陽菜乃に会いに行く、決まって夜が握りやかになり始める頃に陽菜乃の元へ
最初こそは驚いた陽菜乃もだんだんとその行為に慣れていきただでさえ日々の接客で疲れている陽菜乃は涼太郎と話す瞬間は安らぎとも言えるほど心の拠り所になっていた
だが2日に1回のペースで来ていた涼太郎はだんだんとペースが落ち3日に1回最終的には週に1回どころではなく何日も顔を出す事はなかった
あくまで侍と花魁、身分が違う事ははなから分かっていてそれを忘れずにいた。一線超えてしまえば何もかもが崩れる
だから心配する気持ちを隠し、自分に飽きまた別の所へ行き始めたのだろうと自分に言い聞かせた
そう考えていた時、戸が開き新たな客が入った
「こんばんはでありんす、新規の方なんざんす?」
「えぇはい今回初めてお会いしたんですけど身請けさせていただくことになりました」
「今なんと?わっちは花魁でありんす。それなりの額がない限り…」
陽菜乃はどうしてもこの客が嘘を並べているようにしか見えなかった。なぜなら花魁は普通の遊女より上の存在、そして花魁の中でもトップクラス、そんな陽菜乃を誰が身請けするというのか
目の前の客は、およそ50代ほどの金持ちそうな雰囲気でありどこか懐かしさを感じた
「大丈夫です支払いは出来ました。明日の早朝たつので荷物の整理を」
「えぇ、はい…」
動揺を隠しつつも恐らくバレていたと思う。なんたって花魁を買う輩など見たことがなかった又は私は花魁はずっと吉原で生きていくと勘違いしていたのかもしれない
短い挨拶を交え出ていく客を送り、窓を開けて外に広がる夜の街の灯りを眺めて今宵でこの風景を見る事は一切ないのだと思うと普通の遊女なら嬉し歓喜するだろう
だが陽菜乃は違いどこか寂しさを感じていた。この商売に対しての寂しさではなく誰かを想う寂しさ…であった
そして陽菜乃は少ない自分の荷物をまとめ普段は見ることが少ない夢を見ながら眠りについた
その夢は亡き母と青の花が咲き誇るあの場所で一緒に遊んでいる夢だった。陽菜乃の母は吉原の中でNo. 1の花魁でありとても顔立ちが整っており陽菜乃と同じ雪色の髪色でまさしく雪女のような冷血そうな見た目だった
陽菜乃はお母さんについてはあまり分からなかった。子供の頃に亡くなったとしか言われてなく容姿についても知る由もなかった
パッと目が覚めた瞬間、隣には涼太郎が居て陽菜乃が起きたのを確認して何も言わず手を引こうとしたがその手を陽菜乃は拒んだ
「ごめんなさい。私は人の物になりました、もう行けません」
「話したい事が…」
「話す事など何もありません、貴方と私は客と花魁でしょう。今すぐお帰りを今は誰も見てませんから」
そう言い冷たく追い出そうとしたがそれを涼太郎は拒み陽菜乃の手を握りしめた
「少しの間でええ陽菜乃の母に頼まれたんや」
自分の母が絡んでいることに疑問を抱きつつも真剣な眼差しに心を打たれた陽菜乃は分かったと返し正座して話を聞く事にした
涼太郎の話によると陽菜乃の母「月雪 綾芽」は陽菜乃と同じように身請けする予定だったが子持ちという点から綾芽は客に子も連れていきたいと懇願しなんとか子連れで吉原から出ることが出来たという
だが、幸せは続かずその客は綾芽の子供を殴るは蹴るはで虐待し続けた。もちろん綾芽はその事について知る事もなく何かあざなどが出来ていた際は子供が友達と喧嘩したと嘘を吐くだけ
それがバレた理由は綾芽が町へ出かけ帰ってきたのを気づいてない客が焼き印を子供にやろうとしたところそれを綾芽が自らの身体で守ったのである。頬に強く印を焼き付けたからには醜くどんなに美人でも花魁とはもう呼ばなかった
それから身請けの話は破談となり、吉原へ戻された綾芽は焼き印を押されたその顔では表には立てない事になり苦しい日々が続いた
その日々の中綾芽は窃盗を繰り返しそのよしみで仲良くなった涼太郎が話し相手としてたまにではあるが陽菜乃のお世話をしていた
だが、この生活で綾芽が精神疾患として心を病んでしまった際に最後に陽菜乃を綾芽が元働いていた場所に預けて自分は命を絶ってしまった
涼太郎はその前に自分が死んだら全てを話して欲しいとこれまでの内容を隅々まで話してくれた終始辛そうな顔をしながら
「お母さんが…..そんな事..を」
「今俺が陽菜乃を連れ出そうとしているのは身請けをした相手が綾芽さんを殺したも同然の相手つまり綾芽さんの元身請け人なんだ」
「何でそんな偶然が…」
「偶然ではないで陽菜乃があの伝説の花魁綾芽さんの子供なのは周知の事実。あいつは…だから綾芽さんに陽菜乃を守ってほしいと頼まれた」
今も涼太郎さんのあの顔だけは忘れられない。あの心底その相手が嫌いだと言う顔を
「どうしてここまでしてくれるんですか?貴方はただの客でしょう」
「陽菜乃がまた綾芽さんと同じような結末になるのを防ぎたいんや、だから来て俺と一緒に」