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夜会の喧騒を置き去りにして、馬車が公爵邸の車寄せに静かに止まった。
御者が飛び降り、仰々しいほど丁寧な所作でドアが開けられる。
目の前にそびえ立つ屋敷は、夜の静寂に深く包み込まれていた。
昼間に見る白亜の優雅さは影を潜め
まるで巨大な怪物が闇の中で口を開けて獲物を待っているような、奇妙な圧迫感と威圧感を放っている。
ギルバートは車内から降りる際も私の手を決して離そうとせず
むしろその細い指を絡め取るようにして、私を屋敷の奥へと導いた。
重い靴音が廊下に反響し、どこまでも彼に引き摺られていくような感覚に陥る。
「少し、疲れましたか? 慣れない夜会で、余計な毒を吸わせてしまって申し訳ないです」
彼の声は、鼓膜を優しく撫でるように響いた。
けれど、エスコートする手には一切の迷いがなく、私の歩幅さえも支配するように力強く進んでいく。
自分の部屋へ戻り、この張り詰めたドレスを脱ぎ捨てて一人になりたい。
そう思って自室の角を曲がろうとした私を、彼は無言のまま、強引に引き留めた。
行き着いた先は、彼の寝室へと続く重厚な黒檀の扉の前だった。
「……ギルバート? 私の部屋は、あちらだわ」
困惑を込めて見上げると、彼はゆっくりと視線を落とした。
その瞳の奥には、底知れない執着の炎が揺らめいている。
「言ったはずですよ。今夜は、一晩中私の相手をしていただく、と」
その言葉に、冗談の欠片も含まれていないことは明白だった。
網膜を射抜くような、拒絶を許さない鉄の意志。
私は思わず息を呑み、金縛りにあったかのように動けなくなる。
彼は満足げに目を細めると、促すように私を彼の私室へと招き入れた。
一歩足を踏み入れた瞬間、濃厚な気配が鼻腔を突いた。そこは、彼の香り──
上質な煙草の残り香と、どこか冷たい雪を思わせる硬質な香水の匂いが混じり合った
彼という人間そのものを凝縮したような空間だった。
逃げ場のない密室。
背後で扉が閉まると同時に、カチャリと鍵が回る乾いた音が響く。
その音は、私の自由を断つ宣告のように、心臓を直に叩いた。
「ソフィア様、こちらへ」
彼は部屋の中央にある大きな革張りのソファに深く腰を下ろし、私の手首を引いて、自分の膝の上へと強引に誘った。
抵抗する間もなかった。
私は星屑を散りばめた高価なドレスを纏ったまま、彼の逞しい体温に包み込まれる。
逃げようと身を捩れば、かえって彼の腕の力が強まるだけだった。
彼の大きな掌が私の背中の曲線をなぞり、首筋に流れる髪を、壊れ物を扱うかのように愛おしそうに指で梳いていく。
「叔父君がいなくなった今、あなたの実家の領地も、資産も、すべて私が管理下に置きました。もう、あなたが泥を被って交渉に赴く必要も、誰かに頭を下げる必要もない」
彼の低く落ち着いた言葉は、甘い毒のように、じわじわと私の耳の奥に染み込んでいく。
叔父からすべてを奪い返し、家門の再興を果たす。私の願いは、この男の手によって完璧に叶えられた。
けれど、彼が甘美声で語る「安らぎ」は、同時に私の社会的な死を意味していた。
私を縛っていた義務や苦労をすべて剥ぎ取った後に残るのは、彼なしでは何もできない、無力な私という存在だけだ。
「あなたはただ、この屋敷で、私に愛されていればいい。他には何もいらないでしょう?」
「それは……そうかもしれないけれど。でも、私はまた、以前のように友人と観劇に行ったり……」
かすかな抵抗を試み、言いかけた私の唇を、彼の冷たい指先が冷酷に塞いだ。
彼の目が、一瞬だけ獲物を追い詰める猛禽のように鋭く、昏く光る。
「友人? あの夜会で、あなたを見て逃げ出した臆病者たちのことですか? 彼らはもう、あなたに近づくことはありません。私がそのように『手配』しましたから」
「え……」
背筋に、氷柱を突き立てられたような激しい戦慄が走った。
彼がしたことは、ただ叔父を破滅させただけではなかったのだ。
私に群がる有象無象、かつての縁、私を外界と繋いでいた人間関係のすべてを、恐怖と権力によって根こそぎ排除したのだ。
今や私の世界には、ギルバート、この人一人しか残されていない。
私を照らす光も、私を繋ぎ止める鎖も、すべてが彼に集約されてしまった。
「あなたは私のものです、ソフィア様。誰にも触れさせないし、誰の視線も浴びさせない。この無防備な美しさを知るのは、私だけでいい」
彼は私の首筋に深く、深く顔を埋めた。
獲物の鼓動を確かめるように、何度も、何度も、吸い付くような重い唇を押し当てる。
その仕草はあまりに情熱的で、心酔しきっているようにも見える。
けれど、その過剰な愛着の裏側には、どこか壊れた人形を宝物として愛でるような、底知れぬ狂気が孕んでいた。
私は、彼を飼い慣らしたつもりでいた。
彼という強大な力を利用して、敵を討ち、かつての令嬢としての輝きを取り戻す。
そのために彼を私の「番犬」に選んだはずだった。
けれど、現実は無残なほど違っていた。
私は自ら、飢えた獣が潜む檻へと飛び込み、その扉の鍵を笑顔で彼に預けてしまったのだ。
「……ようやく、これでようやく私だけのものになってくださった」
彼が満足げに漏らした吐息は、熱く、重く、私の肌にまとわりついて離れない。
私は彼の広い胸に顔を埋め、身体を震わせる。
それは逃げ場のない幸福に浸っているせいなのか
それとも、これから始まる底知れない絶望に怯えているせいなのか、自分でも判別がつかなかった。
そんな歪な感情に身を任せることしか、今の私には許されていない。
窓の外では、月が冷たく夜の世界を照らしている。
けれど、厚いカーテンを閉め切ったこの部屋の中には、もう夜も朝も、外の世界の理など存在しない。
ただ、彼の腕という名の、温かくて逃げられない「檻」だけが、私を優しく、そして残酷に抱きしめ続けていた。
「それではソフィア様…服をすべて脱いでいただけますか?」
冷徹な声が、密室の静寂を切り裂く。
彼の要求は、あまりにも唐突で、そして傲慢だった。
「えっ……!相手をするって…そういうこと?」
「ええ、夫婦なのですから…当たり前でしょう?」
当然の権利を主張する彼の視線は、既に私のドレスを剥ぎ取り、その下にある肌を検分しているかのようだった。
逃げ場のない視線に、私は観念するしかなかった。
「そ、それはそうだけど…少し脱ぐだけよ?」
震える手で肩口を解こうとするが、彼はそれを許さなかった。
「いいえ、全部です。なんなら、私自ら脱がして差し上げましょうか?」
「~~~ッ!」
脅しを含んだ甘い囁きに、私は顔を真っ赤にして彼を睨みつけた。
けれど、逆らうことなどできない。
私は彼の手を借りることを拒み、震える指先で、丁寧に作り込まれたドレスを一枚ずつ脱ぎ捨てていった。
冷たい夜気が、露わになった肌を撫でる。
「も、もう!」
「それで……何をすればいいのかしら?」
私は、彼の巨大なベッドの上で
辛うじて薄いシーツ一枚だけを身体に巻き付け、ギルバートを見上げた。
守ってくれるものは、たった一枚の布だけ。
「そうですね……まずは……」
彼は私の隣に腰を下ろすと、冷たい指先で私の顎をくいと持ち上げた。
「口を大きく開けてください」
「こうかしら?」
「そのまま舌を出して……」
「これでいいの?」
辱めに耐えながら、言われた通りに舌を差し出す。
すると彼は、それを極上の美味でも味わうかのように丹念に、ねっとりと舐め上げた。
「んッ……」
口内という聖域を侵される感覚に、背筋が跳ねる。
ギルバートの長い舌が私の舌を絡め取り、粘膜を擦り合わせ、唾液の混ざる音が卑猥に耳を打つ。
まるで私のすべてを味見し、支配しようとするかのような執拗な動き。
「あっ……ふぁ……んッ……」
「もっと、舌を出してください」
彼の指が私の口角を引き裂くように広げ、さらなる露出を強いる。
さらに舌を伸ばすと、ギルバートは今度はそこに、逃がさないという意思を込めて強く吸い付いてきた。
「んっ……!」
「ソフィア様のお口は本当に小さいですね……可愛いお口だ」
「んっ……んぅ……ぷはぁ……」
ようやく解放された時には、私の口元は蜜で濡れそぼり、呼吸は乱れきっていた。
「今度はこちらをお舐めください」
「これって……!」
彼が何の前触れもなくズボンを脱ぎ捨てた。
視界に飛び込んできたのは、荒々しく血が通い
今にも爆発しそうなほど大きく腫れ上がった、彼の欲望の証だった。
「どうぞ」
「ど、どうやって……?」
「こうするのです」
彼が私の後頭部を力強く掴み、己のモノへと押し当てた。
「ふぁ!?」
「まず先端を優しく咥えてください」
「はぁ……」
熱い鉄のような硬さと、独特の匂いに圧倒される。
けれど彼の瞳は、私がそれを受け入れるまで一歩も引かないと言っていた。
「あとは適当に動かしてくだされば結構です」
「こ、こう?」
おそるおそる唇を割り、その熱い先端を包み込む。
「そうです……上手ですよ」
低い誉め言葉が、私の自尊心を削りながらも、逃げられない快楽の予感で身体を熱くさせていく。
ギルバートは私の唾液で濡れた自分のそれを、まるで儀式を終えた後のように軽く拭いながら、優雅に立ち上がった。
「次は……」
彼の声は、罪悪感すら忘れさせる砂糖漬けのフルーツのように甘く響く。
「上半身を起こしてください」
私は抵抗する意志を失った操り人形のように、言われるがままに起き上がり、彼に向かって座った。
すると彼は私の両膝を持ち上げるようにして、羞恥の叫びすら届かないほど大きく開かせた。
「もっとです」
さらに冷たく、鋭い命令口調が飛ぶ。
抗議しようと唇を動かしかけたが
それよりも早く、彼の長い指が私の秘所を覆う柔らかな布地を、無慈悲に掻き分け侵入してきた。
「──ひゃうっ!?」
鋭い異物感と共に、内側から突き上げられるような熱が走る。
そこは既に、私自身の意志とは無関係に、彼の侵略を受け入れる準備を始めていた。
蜜で濡れた自身の重なりに気づくと、羞恥で脳が沸騰しそうになる。
「ああ……もうこんなになっていましたか」
彼は歓喜に満ちた声を漏らすと、潤んだ内壁を裂くように二本目の指も滑り込ませた。
「あっ……やっ……そんな急にっ……」
不意打ちの質量に、喉が悲鳴を上げる。
ギルバートは容赦なく最奥まで指を突き立てると、弱点を抉るように執拗に壁を擦り始めた。
「んっ……ぅ……!」
脳髄を直接揺さぶられる感覚に、私は堪らず喉を反らせ、空を仰いだ。
「気持ち良いでしょう?」
「そ……そんなことないわ……!」
必死で否定しながらも、震える腰は彼の手を求めて勝手に揺れる。
ギルバートは、自尊心を粉々に砕かれた私を見下ろし、残酷な薄笑いを浮かべた。
その目に宿る光は、弱った獲物をじわじわといたぶる捕食者の愉悦に満ちている。
「まだ素直になれませんか……仕方がないですね」
そう吐き捨てると、彼は突然指を引き抜いた。
喪失感に息を詰めた次の瞬間
指など比較にならないほど滾ったモノが、狙い澄まして蜜口へと押し当てられた。
「っ!!?」
息を呑む暇もなかった。一気に貫かれた、あまりにも強大な衝撃で視界が真っ白に染まる。
「あぁぁッ───?!♡♡」
身体を二つに割られるような圧迫感。
なのに、その苦痛の奥底からは
これまでの人生で味わったことのない熱い昂揚が噴水のように湧き上がってくる。
痛みと快楽の境界線が消失したまま、ギルバートは獣のような荒々しさで抽挿を開始した。
「だめ……お願い……ギルバート……優しく……」
懇願する私の声は、欲望の波に呑み込まれて消えていく。
彼は聞こえていないかのように
ただひたすらに激しく、深く、私という存在を刻みつけるように突き上げた。
ベッドのスプリングが悲鳴を上げ、互いの肌がぶつかる粘着質な音が、淫靡に室内を支配する。
「ぁ……っ! あんっ♡んぅ……!」
突かれるたびに喉から溢れ出す喘ぎは、既に蕩けきった獣のそれだった。
涙で霞む視界に映るギルバートは、汗ひとつ浮かべず冷静な表情のまま、その眼差しだけが爛々と妖しく私を捉えている。
「これが……欲しかったのでしょう?」
荒々しい律動とは裏腹な、耳元で囁かれる優しい声。
その矛盾に狂わされそうになりながらも、一つだけ残酷な真実が浮かび上がる。
私は、この圧倒的な支配と破壊を、心の底から求めていたのだ。
「欲しいわけじゃ……な…あぁっ!!」
否定の言葉は、彼が深く抉り込む衝撃によって吐息へと変えられた。
子宮の入り口を無遠慮にノックされるたび、意識の糸がぷつぷつと切れそうなほどの火花が全身を駆け巡る。
「あ……っ! だめ……もう……イク……!」
限界を悟った私の宣言に、彼は冷たく微笑んだ。
「構いませんよ……好きなだけイってください」
その言葉と同時に、律動は狂気を帯びた速度へと跳ね上がった。
視界が明滅し、火花が散る。
耐えきれない快感の渦が最高潮に達し、頭の中が真っ白に塗りつぶされた。
「~~~~~~っ!!!!」
悲鳴にも似た絶叫とともに、私の身体は弓なりに反り返り、果てた。
その刹那、ギルバートも低く野性的な唸り声を上げ、私の胎内深くへと熱い欲望を吐き出した。
体内を満たす、火傷しそうなほどの飛沫の感触。
意識が遠のきそうになる中で、私は最後のかけらで思考した。
(これは一体……なんなの? いつもなら、私が主導権を握っていたはずなのに…っ)
さきほどまで私が「最強の番犬」として飼い慣らし支配していたはずの男は、いつの間にか私を支配する側へと変貌していた。
「…ふふ、可愛かったですよ、ソフィア様」
彼は朦朧とする私の頭を優しく撫で、ずるりと自身を引き抜いた。
「それに…今宵はまだ序の口ですよ」
奈落の底まで突き落とすような、その宣告。
彼の欲望は底を知らず、私は何度も、何度もその腕の中で暴かれ、抗う力すら奪い尽くされていった。
明かりを落とした暗い寝室には、繰り返される淫らな睦言と
粘着質な水音だけが、朝を拒むように響き渡っていた。
結局、私は。
翌朝、陽が昇り、窓の外の鳥たちが鳴き始めるまで。
彼が作り上げた甘く残酷な「檻」の中から、一歩も出ることを許されなかった。