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さて……。町に戻って依頼の報告を済ましてちょっとお買い物もして例の廃村にやってきた。これから行うことは明らかな罰当たりだとは思うが、変な事態に巻き込まれるのも嫌だし申し訳ないがここでそのダンジョン生成なるものを行わせてもらいます。
「えー……それでは大変申し訳ないんですが、この場をこれよりダンジョンにさせていただきます。スキル『ダンジョン生成【Lv1】』」
瞬間廃村の一部が光だし、地下にと続く階段とその突き当たりに重厚な扉が現れた。
「こ、これがダンジョン………。初めて本物を目にしたが地下ダンジョンはこういう秘密基地みたいな感じなのか…。ワクワク感があるな」
とは言いつつも中には魔物がいる可能性があるためいつでも戦えるように剣を手にしてゆっくりと扉を開く。
中に入ると、壁掛け松明が等間隔に付けられており松明などの明かりで手を塞ぐなんてことはなさそうな作りになっている。また、ダンジョンと言うだけあり迷路みたいになってるかと思えば、そこまで複雑な作りではなさそうな雰囲気がある。
「ふむ……。見たところまだダンジョンっていうか洞窟とかと同じ感じだな。」
とりあえずマップも何も無いので分かれ道はとにかく右ばかり選択している。選択肢が複数ある場合はどれか一つだけに的を絞らないと迷子になってお亡くなりになる可能性が高いため、今回は右を選択し以降ずっと右を選び続ければ行き止まりにたどり着いた時そのまんま引き返せば最低でも生きて帰るという保証はできてる。まぁ、この帰り道に魔物に何度もぶち当たったりしない限りの話だが。
「………あー、あー、聞こえるか若造?」
「!?」
突如『アルクス』の脳内に年老いた男の声が聞こえてくる。
「だ、誰だ!何処にいる!?」
「おぉ!ホントに聞こえるんだこれ」
「声質的に爺さんみたいだがあんたは誰んだ!?」
「ワシか?ワシはこの地で死んだ村の村長じゃよ。」
「はぁ!?」
「お主がこの地にダンジョンを創ったおかげで幽体であるワシやこの村のもの達は居場所が確保出来たんじゃ」
「どういう理屈か知らんが、墓荒らしみたいなことを恨んでるなら謝るから脳に語り掛けてくるのはやめてくれ」
「現時点でお主と会話する方法はこれしかない。なのでしばらくは我慢してくれ。」
「……で?そんな爺さんが俺に話しかけてきたってことはなんか用があるんだよな?」
「そうじゃな。ま、単刀直入に話すとお主このダンジョンを大きくしてワシらの居場所を作ってくれるか?」
「はぁ?死人に居場所なんて墓じゃダメなんかよ…」
「まぁ、ワシらの村がなぜ戦地になったのか知りたくはないか?」
「別に……」
「知りたくなくともこっちから勝手に話すんじゃけどな」
「じゃあ聞くなや!」
「が、それを話すのもこう脳内に話しかけられ続けるのは嫌よな?」
「不快だからな 」
「てなわけで、まずはこの次の階層に続く階段を見つけてくれ。ダンジョン探索はした事あろう?」
「あるわけないでしょ…。俺の装備見てみ?」
「まぁ随分と貧相な装備品だが、ダンジョンに来る輩は基本そんなんじゃしな。」
「……はぁ。なんにせよ俺は下層に迎えばいいのね。頑張って探すわ」
「うむ!二階層で待ってるぞ。」
そう伝えるとその声は聞こえなくなりまた孤独なダンジョン探索が始まる。一体なんなんだと思いつつも、一人である程度進んだあとこうして話しかけられて誰かと会話出来たのが嬉しくはあり、短い間ではあったが久しぶりの会話を楽しんだのでそれが突如無くなるとなるとそれはそれで少し悲しくもある。
「とりあえずあの爺さん探すために下層に続く階段を探すか…」
それから少し道に迷いはしたが、思いのほかすんなりと下層に続く階段は見つかり、警戒しながら二階層にと向かう。ちなみに一階層は魔物が存在せず、ただ広い地下迷宮を歩き回ると言うだけの階層だった。
二階層に到着し目の前に広がる景色にアルクスは唖然とする。なぜなら、二階層は一階層と違い地下迷宮ではなく『地下都市』という言葉が似合うような光景だった。明らかな人工物がちらほら見られる上に、半透明の人型の何かその地下都市内を行き来しているのだ。明らかに彼らは幽体であるが物体に触ることも出来ており、なんなら地上の人と同じような暮らしをしてる姿に衝撃を受ける他ない。そんな中を警戒しながら進んでいく。道中すれ違う半透明の人達はこちらを見て笑顔で会釈したり、変に警戒されている訳ではなさそうなのは安心と言っていいのだろうか。
市場を抜けると正面に老いた男が鎮座していた。恐らくあの爺さんが一階層で語りかけてきた本人だろう。もちろんこの爺さんも半透明で本当に幽体らしい。
「おぉ!まさかホントに二階層に来るとは」
「そりゃ来るだろ。このダンジョン俺が創り出したものだし、色々気になることだらけだからな。」
「やはりお主がダンジョン生成を行ったのか」
「こんな化け物スキル人の目に着いたら危ないだろ?」
「……。いきなりこんなこと告げるのも酷な話だが、お主多分とんでもないことに巻き込まれるぞ?」
「はい?」