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____時は遡る。
「おーすげぇ」
キール達と別れた後、神の使徒であるルコサは一足先にクリスタルドラゴンの神殿に来ていた。
「えーっと、確かこんな感じでいいんだよな」
ルコサが地面に手を付けるとそこを起点に黒い大きな魔法陣が広がっていく。
「いや〜、魔皮紙なしでこんなデカい魔法が使えるのってホント爽快感半端無いなぁ」
設置したのは条件が揃うと発動する“トラップ魔法”
ルコサの得意な魔法である。
「【神の鎖】……まさかこんな最上級トラップ魔法をこんなに使える日が人生で来るなんて思ってもなかったな」
常人を超える力を手に入れた……だがその代わり、神からの指令をこなさなければならない。
ルコサがここでやる事は2つ。
1つはクリスタルドラゴンを足止めするこの魔法陣を展開する事。
もう1つは____
「お、来たみたいだね」
神殿の外に出たタイミングでちょうど良くトカゲの奴隷獣人が現れたのが見えた。
「さて、と……神の子の回収係をしてもらうかな」
ここに落ちてくる【勇者】をあの奴隷を使って安全な場所へ移動させる事だ。
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そして……神の予言通り、クリスタルドラゴンは復活した。
「さぁ、始まったよ神様、女神から生まれたクリスタルドラゴンの討伐」
【ーーーーーーー】
「それより早く次の仕事しろって?」
【ーーーーーーー】
「はいはい……ところでなんでワザワザ昔のパーティーに会わせたの?」
【ーーーーーーー】
「うーん、まぁ確かに悪いものでもなかったよ」
【ーーーーーーー】
「はいはい、急ぎますよ急ぎますよっと」
【ーーーーーーー】
「ん?」
山の中を走って山を下りていると上空に気配を感じた。
「おー、あの歳で転移魔法ってすごいな」
見ると中学生くらいの若い少女が上空を転移魔法で短距離テレポートを連発しながら移動しているのが見えた。
「世界にはクロ以上の才能の持ち主が居るんだなぁ」
魔法とは見えない武器を持っているような物だ。
剣やレイピア、メイスに短剣など武器に様々な形がある様に、人によって魔法も使いやすいか使いやすくないか別れる。
その中でも転移魔法はかなり使いにくい部類だ。
装備に魔法陣を組み込んだとしても行き先を決め、自分の位置と目的地に素早く魔法陣を展開し魔法陣を通る瞬間と出る時にタイミング良く魔力を通す。
結果から言うと複雑かつ何回も使うので魔力消費が激しいので走った方が早い!
だがそれをあの若さで惜しみなく正確に使う彼女は相当な魔法の才能の持ち主なのだろう。
「ここで会ったのも何かの縁って奴か……もうすぐここが危険な戦場になることを知らせてあげようかな」
装備についてる【身体能力強化魔法】を発動し、高く飛び、上空から少女を見つけ目の前に【転移魔法】で転移して出現する。
「__っ!?あなたは!!」
「こんにちは~、ん?どこかであった?」
「な、なんでもないです、私は急いでるのでこれで」
引き離されたので追い付く。
「!?」
「いや~急いでるとこ、すいませんがもうすぐここは戦場になるから帰った方がいいよ?君まだ子供でしょ?学校は?」
「私は大人です!むしろ戦場になるのなら早くいかないと!」
また引き離される。
「あぁ、もう」
俺はこれ以上追いかけるのもめんどくさいので身体を掴んで止めた。
「触らないでください!変態!」
「うおい!変態ってなんで知ってるんだよ!」
「これ以上私の邪魔をするなら消し飛ばしますよ」
「待て待て!野蛮すぎない?」
「問答無用!」
「ぐぇ」
思いっきり股間を蹴り飛ばされた……いてぇ……
股間を押さえながらも地面になんとか着地する。
「アナタは昔から話を全然聞いてないのでこれが1番分かりやすいんです!」
「え?昔から?ちちょ__!?!?」
少女の周りに魔法陣が展開され圧縮された炎がレーザーとなって襲いかかる!
「【魔法シールド】!」
間一髪ルコサの前に現れた簡易的な魔力のシールドはレーザーを弾きルコサの後ろで数々の爆発が起きた。
「う、うそだろ神の加護を受けてる状態のシールドなんだけど!?」
「ではこれはどうですか!」
そして少女は距離を取り。
「【メテオクラッシャー】!」
「えええええええ!?」
ミクラル王国の超級魔法を唱えるとすぐに少女の前から何百倍もの広大な魔法陣が展開され、その中から巨大な隕石が現れて真っ直ぐ此方に飛んでくる!
「嘘だろ!?超級魔法!?しかもラグ無しかよ!?めんどくせぇ!【ブラックホール】!」
魔法シールドでは絶対に防ぎきれないので此方も最大級の超級魔法で対抗し隕石ごと周りを闇の中へ吸い取った。
「本気で殺す気かよ!?」
「アナタはこの程度じゃ死なないでしょう!」
むしろこっちも超級魔法のブラックホールを使ったのに彼女から後ろは吸い込めてないのがヤバすぎる!ほんと何者この子!?
「それにあなたを殺してもお母さんは悲しみませんし変態は死すべきです!」
「だから何で俺の事知ってんだよ!」
「そんな事より退いてください!私はヒロユキさんの所へはやくいかないと!」
「いや!質問に__ヒロユキ?あぁ…………」
納得した、この子は【勇者】のパーティーメンバーか……そりゃ神の子の相方なんだからこれくらいの才能の持ち主が来るわな……
「ソイツならすぐそこの泉に居るよ」
「またいつもの嘘をつかないでください!SOSは山の中から__」
「嘘じゃ無くてホントだって!神様に誓って!」
“神様に誓って”と聞くと少女は杖を下ろした。
「なるほど、神様ですか、それなら信じましょう……流石____」
「__【神の使者】ですね」
……え?なんで知ってるんだ
「おい。ちょっと」
聞く前にもう遠くへ行っていた。
追い付くのも容易だが……もぅめんどくさい。
「神様、アンタまだまだ何か隠してるだろ……」
そのままゆっくりとクロエやオリバル、そしてキールに会わないように注意しながら神の使徒はクバル村に戻って行った。
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「……ここは?」
全身が濡れている不快感と、どこかで頭を打ったのか頭痛がひどく、さらに手足の骨折の痛みで目が覚めた。
痛みをこらえて上半身を起こす。
「……あのワニを倒した場所か」
もう少し、体力を回復して色々考え__
「ヒロユキさーーーん!」
「ぐぇ」
見慣れた少女が全速力で走ってきて勢いよく抱きしめてきた。
……めちゃくちゃ痛いのだが……
「良かった、良かったです!死んでない!ごめんなさい、まさか、まさか山菜の依頼でこんなになるなんて」
ユキは顔をくしゃくしゃにして泣きながら言ってくる……
そうか……
「……泣くほど俺が成長してなかったのか」
これからは山菜依頼も一人でこなせるように頑張ろう。
「い、いえ!そう言う事では無くてですね!?うーん……ま、ヒロユキさんらしいですね、さぁ、帰りましょうスロー村へ!……あれ?他のお二方は?」
「……解らない」
冒険者という職業上、死ぬ事は珍しいことでは無い。
今ここで自分が生きているのも奇跡的みたいなものだ……ユキはそれ以上追求する事は無かった。
「そうですか……では、帰りましょう」
「……あぁ」
依頼は失敗。
だがスロー村へ帰るとそれどころの騒ぎでは無かった。