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8話目もよろしくおねがいします!
初めてのお泊まりです。ドキドキです。
スタートヽ(*^ω^*)ノ
片付けも一通り終わり、ふたり並んでソファに座ってテレビをつけたものの、内容はほとんど頭に入ってこなかった。キヨは横目で、まだ頬を赤らめたままのレトルトを盗み見る。
さっきの「デザート発言」がよほど効いたのか、レトルトはどこかそわそわしていて、ソファの端っこに小さく座っている。
キヨはそんなレトルトの様子を見ながら、ふとスマホを取り出して時間を確認した。
(……そろそろ帰った方がいいかな)
元々、今日は軽く顔を見て話すだけのつもりだった。仕事も残ってるし、泊まる準備もしてない。……だけど、なんとなく名残惜しい。
そんな風に迷っていた時だった。
レトルトがぽつりと、でも確かに言葉を落とした。
「……なぁ、キヨくん」
『ん?』
レトルトは俯いたまま、言いにくそうに唇を噛んだ。
「……よかったら、今日……泊まっていったら?」
その一言が、空気を一瞬止めた。
『……え?』
思わず聞き返したキヨに、レトルトはさらに真っ赤になって、膝をぎゅっと握った。
「べ、べつに、そんなん深い意味ちゃうで!? ただ……帰るんも大変やし……その、俺が……キヨくんと、もうちょっと一緒にいたいだけで……っ」
その言葉に、キヨの心臓が跳ねるように脈打った。
(レトさん……)
こんなことを自分から言ってくれるなんて、思ってもなかった。
思わずにやけそうになるのを抑えて、キヨはそっと言葉を返した。
『…うん。じゃあ……お言葉に甘えよっかな、ありがとうレトさん』
レトルトは顔を真っ赤にしたまま、小さく頷いた。
「泊まっていくんだよね?」
レトルトはもう何度目か分からないくらい確認して、嬉しそうに口元が緩んでいた。
自分から泊まってと言ったくせに、夢でも見ているのかという錯覚に襲われて何度も確認してしまう。
『うん。帰らない。今日はレトさんとずっと一緒にいるよ』
キヨがそう言うと、レトルトは顔を少し隠しながらも、喜びを隠しきれず、すぐに立ち上がった。
「じゃ、じゃあ布団の用意するわ! えっと、シーツ替えて……枕カバーも……えーと……」
慌てたように、でも嬉しそうにるんるんで押し入れを開けたり閉めたりするレトルト。
その背中を、キヨはソファに座ったまま、静かに見つめていた。
そして、ぽつりと。
『…レトさん。別々に寝るつもり?』
「え?」
手を止めて振り返るレトルトに、キヨは少し意地悪そうな笑みを浮かべながら、言葉を重ねる。
『俺、レトさんの家に泊まるって聞いて、当然“隣に寝る”って思ってたんだけどな』
「~~っ!?!?」
一瞬で耳まで真っ赤になるレトルト。
「な、なにを、言うてんの……っ!! そ、そんなん、聞いてへんし……!」
『聞かれてないから言ったんだけど?』
「~~っ!! し、知らんっ……! じゃあ……一緒に寝たらええやろ!!」
ぷいっと顔を背けてシーツの山を抱えながら、レトルトは叫ぶように言った。
でもその声は、どこか震えていて、まるで「一緒にいたい」と叫んでいるみたいで。
キヨはその様子にふっと笑って、そっと立ち上がる。
『…ありがと、レトさん。今夜、俺レトさんの事寝かせてあげられるかなぁ笑』
「きっ….キヨくんっ」
耳まで真っ赤なまま、レトルトは小さく背中を見せて――でもその肩は、嬉しそうに揺れていた。
つづく