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11件
ありがとうございますありがとうございますほんとこれで1週間は生きられますぅ、、
9話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
「やば、もうこんな時間か……」
テレビの時計を見て、レトルトがふわっと伸びをする。
ご飯を食べた後、2人でゲームをしていた。
得意なゲームでなら負けないと勝負を持ちかけてキヨをこてんぱんにやっつけて上機嫌なレトルト。
ゲームのコントローラーをソファに置いて、のそのそと立ち上がった。
「そろそろお風呂、入らな……」
そう言った瞬間、横からキヨの声が飛ぶ。
『じゃあ、俺先に入っていい?』
「え?」
きょとんとしたレトルトに、キヨは悪戯っぽい目でじっと見つめながら、ゆっくりと言葉を継ぐ。
『だって、レトさんが入ったあとだと、お風呂場……レトさんの匂い残っててさ。俺、耐えられる自信ない』
「~~~~っっ!!」
まさかの不意打ちに、レトルトは両手で顔を覆った。
「な、なにそれっ! そんな……言い方……!!」
『え? なんか変なこと言った?』
とぼけた顔で覗き込むキヨに、レトルトはぷるぷる肩を震わせて背中を向ける。
バスルームへ向かったキヨを見送ったあと、レトルトはリビングのソファに一人ぽつんと座った。
(なんか……変な感じ)
一緒にゲームして笑い合ってた時は、ただただ楽しくて、幸せで、時間の感覚もなかった。けど、いざキヨがいなくなると、急に部屋が広く感じる。
(泊まってくれるん……嬉しかったのに、なんかドキドキしてきた……)
ソファのクッションを抱きしめて、レトルトは落ち着かない気持ちを無理やり押し込めようとする。
そこへ、風呂場からふわっと湯気がこぼれる音。そして、ほどなくしてバスルームの扉が開いた。
『レトさーん、風呂あがったー……って、おい、何でそんな丸くなってんの』
「な、なんでもないし!」
思わず立ち上がったレトルトの目に、風呂あがりのキヨが飛び込んでくる。
濡れた前髪から水滴が落ちて、Tシャツ越しに少し火照った体。首元にはうっすらと湯気が残ってて、タオルを無造作に肩にかけた姿が、やたらと……色っぽい。
(うわ……)
目をそらさなきゃ、って思うのに、動けない。
『…ねぇ、そんな見られると照れるんだけど』
「見てへん! み、見てへんし!」
焦ってクッションを顔に押し付けたレトルトに、キヨがくすっと笑う。
『嘘つきぃ〜。レトさん、顔真っ赤だよ?笑』
「も、もう! キヨくんあっち行って! 俺、入るから!」
バタバタと逃げるように脱衣所へ向かうレトルトの背中に、キヨは優しく声をかけた。
『ゆっくり温もっておいで。』
(ずるい。そういうの、ほんまに……)
バタバタと逃げるように脱衣所へ向かうレトルトの背中に、
キヨは一歩、ふわりと前に出る。
その声は低く、喉の奥で震えるように響いた。
『…俺、待ってるから。』
――“逃がさないよ”
そんな意味をはらんだ、静かで重たい声。
それはただの“待ってる”じゃなかった。
レトルトのすべてを、焦がれるように求めている声音。
耳に届いた瞬間、背中にびり、と電気が走るようで。
レトルトは扉を閉めかけた手を一瞬止めて、でも振り返ることはできなかった。
顔を見たら、絶対に真っ赤なのがバレるから。
なのに、心臓は、ドクンとひときわ大きく跳ねた。
(……やっぱ、ずるいよ。キヨくん)
扉が開いて、ふわりと湯気と一緒にレトルトが現れた。
肩まで濡れた髪が、首筋を伝ってポタポタと滴を落としている。
着ているTシャツはいつものゆるい部屋着──けれど、さっきより少し首元が開いていて、鎖骨が濡れて光っている。
その無防備な姿に──
キヨの喉が、音を立てて動いた。
『…レトさん、さ……』
低く、引っかかるような声で呼びかける。
「え?」
『…わざとじゃないよね?』
「な、なにが?」
レトルトが振り返った瞬間、キヨはもう目を逸らせなかった。
水に濡れた髪、ほんのり赤い頬、Tシャツ越しの肌のライン。
ぜんぶ、いつものレトルトなのに──
なぜか今夜は異様に、エロい。
『あのさ……ほんと、理性もたないんだけど?』
「えっ、な、なにそれ……っ!」
目を見開いたレトルトが、手で服の襟元を隠そうとする。
だけど濡れた髪が張りついたままのその仕草さえ、余計にキヨの理性を試してくる。
『レトさん、ほんとに……俺のこと、試してる?』
「違っ、ちがう! 俺そんなつもりじゃ……!」
でも、キヨの目は真剣だった。
いつものようなふざけた笑みじゃない。
揺れる黒目の奥には、レトルトだけを欲しがる独占欲が、静かに火を灯していた。
『……今日は泊まっていいって言ったの、レトさんだよ?』
「そ、それは……っ」
『覚悟、してて?』
そう囁かれて、レトルトの背筋がゾクッと震えた。
つづく