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花後雨

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花後雨

9 - 【第八章】今更

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2022年08月20日

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当主様は、何が言いたいのだろう。言っている意味が分からない。

「君の役目は何だい?」

「送り人として、巫女様を守り、神の元まで送り届けることです。」

「そうだね。つまり、守るのは『巫女』であって彼女じゃない…。賢い君なら分かるだろう?」

彼の言いたいことは分かる。噛み砕いて言うと、「彼女を守ることよりも、『巫女』という立場を守れ。家の風紀をなんとしても崩すな。」という意味だろう。

「…。」

当主様はしばらくこちらの顔を見てから、「では、よろしく頼んだよ。」と言った。当主様の表情は笑顔だが、どこか暗いような気がした。


「では、本題に移ろう。今日、皆を呼び出したのはこの話を聞いてもらうためなんだ。皆、落ち着いて聞いてくれ。」

すると、当主様の表情から笑顔が消えた。

「『アレ』を行う。一週間後だ。」

…は?

「一週間後ですか!?」

「ああ、天候の様子がおかしい。…そろそろ準備を始めなければ、手遅れになる。」

何を言っているんだ………?

「皆、今日から早急に準備に取り掛かってくれ。」

意味が分からない。頭で考えられない。考えたくない。理解してしまった瞬間、きっと僕は壊れてしまう。

僕は考えることを拒みただ固まっていた。

「……今日はこの辺でお開きにしよう。皆集まってくれてありがとう。」


まず、何故こんなことになったんだ。

彼女が巫女として生まれたからか?いや違う。僕が現実から逃げてきたからだ。いつか『その時』が来ると分かっていたつもりで、心の何処かで「まだ大丈夫だ。」と思い込んでいた自分がいた。

僕は今更、彼女に何をしてあげられるのだろう?


「ただいま戻りました。」

彼女の部屋の前でそう言うと、「あら、おかえりなさい。」と言いながら襖を開けた。彼女は笑顔だった。

部屋に入ると、彼女は祭りの時のことについて話し始めた。

とは言っても、貶めようとした者がいた事ではなく、月が綺麗だったことや、町の人々が楽しそうだったこと、神楽を一度も間違えずに舞えたことなどだった。

彼女はあんなことを大勢の前で言われた後でも、気丈に振る舞っている。そんな彼女を見ていたら、自分が辛くなってきて、言ってしまった。

「……あなたは、辛くはないのですか?」

今更そんなことを言っても、なんの意味も無いのに。

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