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- 黄昏の森の鬼娘 1
神聖期645年
この世界には5つの王国と2つの帝国が存在する
そのうちの一つ、カーディリア王国の研究者の1人がこの世界とは別の次元にある世界__所謂異世界への入口を作ることに成功した。
当時のカーディリアの初代国王___アデル・カーディリアは即座に調査部隊を編成し、その異世界の調査を始めた。
______だが、一日と経たずその調査部隊は1人の新兵以外全滅した。原因は見たこともない魔物により全滅させられたと言う。
わかったことと言えばその異世界は”森”に覆われていたという事と、夕方のような景色だと言うのに昼間の様に明るく、見たこともない魔物がそこらを徘徊し、魔法を使うものもいたという事だけ。
それを聞いたアデルは、
「その森へ今後一切立ち入ることを禁忌とする」
と言い、以降その森の調査は行われていない。
後に、その森は”黄昏の森”と呼ばれ、罪を犯した物の中でも特に深き大罪を犯したものへの断罪として黄昏の森送りにされるという。
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* 鬼娘
黄昏の森_____
兎の様な魔物__リガルド、まぁ、これは俺が勝手に名ずけた名前だが
こいつが今日の獲物だ。
ガサガサッ……
「……っし…」
スッ…!
『ッッッッ!!!キュェー!!』
「チッ、気づかれたか!俺もまだまだだな…」
「血液操作___血の薔薇(ブラッディ・ローズ)」
そう言い放った瞬間、自分の身体から血液が吹き出し、棘のあるツタの様になりリガルドを串刺しにした。
「っし、今日のご飯GET~っと!」
俺の名前はミツキ、姓はない。歳はもう覚えてねぇ、俺の種族は案外長生きらしい。
昔__もう100年くらい経つかな、まぁそれくらい前に俺はカーディリア王国って所に住んでいたんだが、訳あってある大罪を犯してここに送られてしまった。
この森の噂は聞いてたから、すぐにバケモノの餌になって死ぬだろうなぁって思ってたけど、ただで死ぬ気はなかったから必死に足掻き続けて生きていたら案外今の環境にも慣れてきて今ではそこら辺の魔物には余裕で勝てるようにまでなった。慣れって怖ぇな。
そして1つ気づいたことがある。この世界には魔法というものが存在するんだが、本来魔法というのはこの世界の知能のある生物にしか使えない。だけどここの魔物は平気で魔法を使ってくる。
そして人間や、鬼人、獣人、竜人、魔人、などが生まれ持って備わっている固有能力というのがスキルだ。種族によってはその種特有のスキルというのがある。だけどここの魔物は何故かスキルも持っている。
俺はここの魔物たちを殺して喰ってるんだが、たまに新しいスキルを獲得する事がある、俺の固有能力は刀剣創成という自分で好きなように武器(刀や剣限定)を作れるという能力なんだが、ある時に強欲っていうスキルを手に入れたんだが、最初は使い方がよく分からなかったけど、どうやらランダムで相手を自分の中に取り込んだ時に相手が持っていた何かを奪うスキルらしい
例えば相手のステータス、知識、魔法、スキルという魅力的なものから、眠らなくてもよくなる(ねむくはなる)、なかなか転ばなくなるなどといったよく分からないことまで、ほんとにランダムだ。
今現在俺が保有しているスキルは
血液操作、刀剣創成、強欲、鬼眼、擬態、鬼火、身体強化、不眠、超再生、超大五感、誘惑
基本的にはこれくらいだな。最後のやつは死んでも使わないって決めてる。
まぁ元であるのはこれだけだがこのスキルたちから派生、つまりそのスキルを利用して新しいスキルにするっていうのがあるな
例えばさっきリガルドを仕留めた時に使った血の薔薇とかな、あれは血液操作の派生だ。ちなみにこのスキルは昔の親友から”貰った”スキルだ。本来そんな事は不可能な筈だが、未だにどうやってあいつがこれを俺に渡したのかはわからない。
っと、長ったらしい前置きはここまでにして、ここからは俺の__いや、俺たちの物語を楽しんでくれ。
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* 急展開!?
「さて、今日の飯も手に入った事だし…帰るか。」
そうして、自分で作った小屋へ帰ろうとした時。
「……っ!なんだ…?今の変な感覚は……」
そうして辺りを見回してみると、少し先の方に光る柱がたっているのが見えた。
「んだあれ?新手の魔物かなんかか?」
せっかくだ、少し様子でも見に行くか。
危ないかもしれないとも思ったが、自分の好奇心には勝てなかった。
そうして、光る柱の方へと木をつたって向かい
ようやくその光る柱の所へ着いたかと思ったら、そこで見た光景があまりにも非現実的すぎて、一瞬夢なんじゃないかと疑ってしまう。
なんとそこには、カーディリア王国の紋章の付いた鎧を纏った騎士たちと、何やら王様の様なやつが1人とその後ろに3人の身分の高そうな女の人間たちが魔物たちに囲まれていた
「こりゃ…なんの冗談だ…?」
「(どうしよう…助けるべきか?見たところ苦戦している様だし、でも目的はなんだ?うーん、少し様子見をするか…)」
そうして俺は一応擬態のスキルを使い、全身を黒い鎧で覆って、木の上から様子を伺うことにした。
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「くっ…なんとしてでも陛下達をお守りするぞ!!」
「「はい!!」」
キンッ、ガッ!
私の名前はエリー・モーガン。王国騎士団団長だ。
それがなぜ、陛下たちを連れて戦闘をしているかと言うと………
数時間前__
「陛下。最後の砦が落ちました。間もなくこの城にも敵たちが攻めてくるでしょう…」
「なんと……」
「ご安心ください。御身は必ず、このエリー・モーガンが命に変えてでもお守り致します!」
「……エリーよ、余の事よりも、娘たちを必ず守ると…この場で約束してはくれまいか、」
「陛下……はい!お任せ下さい!!」
「うむ…感謝するぞ。」
絶対に陛下も、王女様たちのことも死なせはしない。例えこの命尽きようとも…。
「聞いたか貴様ら!ここでなんとしてでもクーデターを起こした者共を食い止めるぞ!!」
「「「おぉぉぉぉぉーーーー!!!!」」」
そうは言ったものの…ここ”700年”この国は安泰だったと言うのに…なぜクーデターなどと…
「陛下ぁ!!」
突然大きな声を出して扉から走ってくる1人の兵士。
酷い怪我を負っていて、先程まで交戦中だった事が分かる。
「何事だ?」
「おい…大丈夫か…?」
そうして、1人の騎士がその駆け込んできた兵士に近づいた途端____
「悪魔が…攻めてき_____」
ブシャァァァ!!
「……え?」
その兵士の身体が弾け飛ぶのと同時に、針のような形をした赤黒い血のようなものが兵士の中から飛び出し、近づいた騎士までもが串刺しにされてしまった。
私は…その光景を信じられなかった。
「「「っ___!!!」」」
こ…この一瞬で、2人も死んだ…
「ハッ!落ち着けお前ら!狼狽えるな!総員警戒!!」
「「「…!はい!」」」
全員私の一言で剣を抜き、魔法陣を展開した。
だが……
「…ふふ、そんな事したって無駄なのに」
どこからかそんな様な女の声が聞こえた。
「あたしの希望も、大事な人も、何もかも奪ったこんな国なんて滅んでしまえばいい。」
「お前たちに直接的な”恨み”はないけど、あたしの”怨み”はこの国その物にあるから…お前たちも同罪よ。」
「あの子とあたしの苦しみの半分程度でも味わうといいわ、せいぜいもがき苦しみ、抗ってみなさい」
激しい憎悪と、その威圧感により動けないで居たら、いつの間にか目の前に白髪で、裸足の少女が立っていた
「___▓▓▓▓」
彼女が何かを言った瞬間、何も無い空間に亀裂が走り、穴が空いた
「はぁ、ふぅ…くっ!」
身体がその穴に吸い込まれていく。
「「うわぁぁぁ!」」
1人、また1人とどんどん穴に吸い込まれていっている
「あらあら、随分と頑張るのね。」
「血液操作___血の鎖(ブラッド・バインド)」
そうして、彼女の身体から無数の血が吹き出して、それが鎖の様な形に変わり私や騎士、陛下たちを掴み、纏めて穴の中にほおり投げられてしまった
「……今一瞬、あの子を感じた気がするのだけど…気のせいかしら、」
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……そして気がついたらこの黄昏の森に居て、幸い陛下たちや他の騎士たちは無事のようだが、不運な事に魔物たちに囲まれて今の状況に至る
「(くっ…どんどん怪我人も出てきている、こんな強い魔物など見たことも聞いたこともないぞ…このままでは、)」
「…はぁ…刀剣創成___草薙」
そう声が聞こえた瞬間、目の前に居た魔物たちが真っ二つに切り裂かれた。
「!?まさか…新手か?」
そして魔物たちが次々と倒れた。そしてその場には黒い鎧を纏った人?騎士?それとも新手の魔物か、得体の知れないものが立っていた
「お前らさぁ…こっちに来るくらいなら少しくらい準備とかしてこいよ、弱すぎ」
「(喋った…少なくとも魔物では無さそうだが…人間だとしたらおかしい、この世界に来れるのはカーディリア王国の技術でしか出来ないはず…それに、黄昏の森への立ち入りは禁忌とされているはず…)」
「……そう警戒すんな、俺はただこの森に住んでる…まぁ民族みたいなものとでも思ってくれ」
そう言って、その、俺と言っているから男?なのだろうか、
その男がこちらに近づいてくる
「敵意がないという証明は?」
私は剣を構えた
「証明?んなもんねぇよ、とりあえずそいつらの怪我の手当だけでもしてやる」
「それに…お前らの紋章を見る限り、カーディリア王国のやつらだろ?」
「…!何故それを……」
「あー、いつか気が向いたら説明してやるから、今から俺の住んでる場所に案内してやるから…ついてこい、そこの王様みたいなやつとその後ろにいる女たちもな」
「……よい…エリーよ、彼の言うことは正しい…今はこの者たちの安全を確保するのが最優先じゃろうて」
「陛下……」
「いいのですか?お父様…」
「あぁ…その者よ、助けてもらった上に数々の無礼をここに詫びよう…どうかこの第13代目国王、カーネル・カーディリアの余に免じて許してはくれぬだろうか?」
「…!待て…13代目だと?」
「あぁ、余が第13代目の国王じゃ」
「まじか…」
「まぁいいや、取り敢えず行こうか」
そう言って、その男は歩き始めた
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* 勘違い?
…おかしいな…俺があの国にいた頃はまだ3代目だったはずだ、
どうやったら100年ぽっちで10代も代替わりすんだ?
全員30歳で代替わりしてたって数が合わねぇぞ?
っと、歩きながら自分の頭の中で納得の出来ない自問を続けている訳だが、それよりも知るべきはこいつらの目的だ。
「なぁ、お前らはなんでこっちに来たんだ?確かここに来るのは禁忌だったはずだろ?」
「それが、何者かがクーデターを引き起こしたのだ…そのクーデターを起こした主犯____血の悪魔が、私たちをここに送ったのだ」
「クーデター?血の悪魔?」
だめだ、なんもわかんねぇ
「なんでクーデターなんて起きたんだ?別にさほど酷い国ではなかったはずだろ?」
「あぁ、一般の民たちも貴族も、和気藹々とした国だったのに…何もかもあの悪魔のせいだ!」
「落ち着け。その悪魔ってのはなんなんだ?」
「…悪魔と呼んではいるがおそらく人間だ。だがその行動は人間とはかけ離れている」
「一日にして死者5000人…奴は血を操り、次々と人を殺していった…クーデターと言ってはいるがほぼ奴1人の犯行と言ってもいい。奴はその力で人々を脅し、クーデターに参加させたんだ」
「血を操る?」
まさか、血液操作のスキルの事か?どういう事だ?この世に同じスキルを持っている者はごく少数と聞いているが、それにこんな希少なスキルを持つ奴なんて…
「なぁ、そいつの名前って知ってるか?」
「?いや、知らないが…それがどうかしたのか?」
「んー、いや、なんでもない…」
「あ、着いたぞ、あれだ」
自分の小屋に着いた。小屋と言ってもここにいる全員が余裕で入るくらいの大きさだ。
何故一人暮らしだと言うのにここまで大きくなったかと言うとだなぁ……まぁなんというか…気合いが入りすぎたな。
俺は怪我をした騎士たちを家の中に入れて、1人ずつ手当をしていった、その間あのエリーとか言うやつには外の見張りを任せている。この森には血の匂いに誘われてくる魔物もいるからな。
王様たちはというと、とりあえず休んでもらっている。
「よし…これでもう命に関わることはないだろう…大人しく寝とけ」
「あ…ありがとう。」
「ん。」
さて…他の奴らも見に行くか。
そうして俺は、まずは王様の方を見に行くことにした。
コンコン
ガチャッ
「邪魔するぞ、」
「うむ、構わん」
「気分はどうだ?」
「余は変わりない、お前たちは?」
「私は大丈夫です」
「……わ…私も…」
「ボクも。」
「なぁ、ずっと気になってたんだが…そこの3人はどっかの貴族の娘さんとかか?」
「「「「え?」」」」
「…?」
「ハハッ、もうわかっているものかと思っていたが、すまないな。まずは自己紹介といこうか、じゃあまずはエリーゼから」
「はい。私はエリーゼ・カーディリアと申します。カーディリア王国の第1王女です。」
「え?」
「……わ…私は、ネラ・カーディリアです…。い…一応…第2王女です…。」
「ぁ…」
「はいはーい!ボクはクロエ・カーディリア!第3王女だけど冒険者やってるんだ~」
「あ…あぁ…なるほど…」
ずっと勘違いしていた、まさか王女様だったとは…
「ハッハッハッ、今更そうかしこまる必要はないぞ、余にあのような口の利き方をしているのだから今更じゃろうて」
そう王様は愉快そうに笑った。
「それは確かにそうかもしれねぇがな、いや、そうだな、もう気にしないようにするわ」
「して、こちらの事も話したのだから、其方の事も…話してくれるんだろう?」
「…あぁ」
「まずはこの鎧を脱ぐか。」
そうして、擬態のスキルを解除した。
「「「「!?」」」」
「…驚いたか?」
俺はふふっと笑った
「な…なんと、男とばかり思っていたが…これは____」
「かわいい!!」
王様が言い終わる前にクロエがそう叫んだ
そうして俺の事を抱き締めてきた
「おい!鬱陶しいー!はーなーれーろー!!」
「うわぁ!髪もサラサラでふわふわ、肌もすべすべでほんとにかわいい!」
「ちょっとクロエ!いい加減離れなさいー!」
エリーゼがクロエを引き剥がそうとするが、なかなか離れない。
なんなんだこいつは…
「…お父様…あれって…」
「あぁ、鬼人族だ…」
そう。俺は鬼人族だ。しかも角が1つしかない出来損ないだ。
そして俺とは言っているが俺は女だ。
「あぁ、悪かったな今まで黙ってて」
「この黒色の髪に毛先が紅くてかっこいいのに、身長はちっちゃくて顔もすっごく可愛いのにあんなに強いなんてー!!」
「クーローエー!!」
「ぁぅあー!」
ついにクロエが引き剥がされた
「すまないな。どうか許してやってくれ」
「あぁ…それは構わないが、ほんとに王女なのか?」
「…あぁ…継承権は早々に捨てて、冒険者として常日頃から荒々しい日々を送っていたからなぁ…」
「なるほど…あんたも苦労してんだな…」
「して、そなたの名は?」
「…王様なら俺の名前は知ってるかもしれねぇな、」
「ミツキ」
「「!?」」
「…ミ…ミツキといえば…600年前にカーディリア王国で王族や騎士の殺害及び国家転覆を計った…た…大罪人…」
「 そなたがその…ミツキ…なのか?」
「そう…だが、600年前?俺がこっちにきてからは100年くらいしか経ってないはずだが…」
「その時の国王は…?」
「忘れるもんか、カイゼル___カイゼル・カーディリアだ」
「カイゼル…やはりこちらの歴史は間違っていないな。カイゼルは600年前の第3代目の国王だ」
「つまり…こっちと外じゃ、時間の経ち方に大きな差があるって訳か…」
「うむ。だが余はそなたがそのような事をする極悪人には思えないのだが…。」
「……あの時の俺は、ただただ怒りに身を任せて、暴れるだけの殺人鬼だったからな。極悪人には違いねぇが、まぁ詳しくはまた今度…な。」
「…わかった。」
「(なにか事情があったのであろう。一先ずは気にしないでおくとしよう…)」
「あの…そうなると…ミツキさんは…600歳?それとも…100歳?」
「ネラ~女性に歳を聞くのは失礼だよー?」
「貴方はまずは自分の失礼を謝りなさい!!」
「あはは…まぁ…鬼人族の平均寿命は300年らしいし…これ以上老いることもないから正確には分からないが、多分100歳の方だと思うぞ」
「そ…そうなんですね」
なんだか、これから騒々しい日々を送りそうな気がする。
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* 鬼娘と悪魔
「あと、これは重大な話だからお前らには聞いておいてほしいんだ」
「うむ、聞こう。」
「最初に言っとくぞ、俺は違うからな」
「…?」
「血液操作」
そう言うと、俺の身体から血液が吹き出し、俺はその血液を小さな玉の形にした
「「「「っ!!」」」」
「ぁ…ぁぁ…そ…その技は!」
「あの悪魔と…同じ…」
「なんでミツキちゃんが、?」
エリーゼは怯え、ネラは怯えつつも冷静で、クロエは少し機嫌悪そうに見える
まぁ、当然と言えば当然の反応だが…
「ミツキ殿…それは一体どういう事だ?」
王は怒りを抑えきれていないのか、スキルが勝手に発動している。
ほう、なかなか派手だし強そうだな、黄金の獅子とは…まさに王の風格と言ったところか。
これならばこの王1人だけでもその辺の魔物には負けないだろうな
「落ち着け、俺はあんたらの国を滅ぼした悪魔とか言うのとは違うぞ」
「だが、この世に同じスキルを持つものなど居ないはずだ…似たようなスキルというのは存在するが、全く同じという事はない」
「んー、まぁ待て。これの説明はちゃんとするから、一旦他の話も聞いてくれ」
「……」
俺がスキルを解除すると、王も納得はしきれていないようだが、怒りを沈めてくれたらしい。
「これは俺にとっても見せるのはリスクだった…互いの信用もまだ足りてないしな、だが、これから一緒に生活していく上では見せておくべきものだと思った。」
「なるほど…すまないな。取り乱した…」
「いやいい、当然な反応だと俺は思うしな」
「ん?それならそなたの使っていたあの剣は一体何なのだ?アーティファクトか何かか?」
「あー、それについては今から話そうと思ってたんだが」
「実は、俺のスキルはこれだけじゃないんだ」
「それは…そなたは鬼人族なのだから種族特有のスキルの事じゃろ?」
「んー、まぁ間違っちゃいねぇんだが、もっとあるってことだ」
「なに…、聞こう」
_____俺は俺の持ってるスキルの事、突然強欲というスキルを手に入れたこと、そしてスキルの一つ一つの能力まで丁寧に説明した。
王様とエリーゼは混乱しつつも真剣に聞いてくれたが、クロエとネラがすごく興味津々に聞いてくれた。クロエは分からなくはないが…ネラがあそこまで熱心に、楽しそうに聞いてくれるとは思わなかった。
人は見かけによらず…だな。
「……って言う感じなんだけど」
「はぁ…余の目が黒い内にこんなに珍妙な者に出会うとは…」
「私も…正直異常だと思います。」
「わ…私は楽しかったです…。おそらくその強欲というスキルはこの世界にきて獲得したスキルかと思われます。」
「そして他のスキルはその相手から奪ったスキルってわけだね」
「それにしても、誘惑なんてスキルなくてもミツキちゃんすっごく可愛いんだから、常にボクは誘惑されてる気分なんだけどなぁー」
そうしてまたクロエが俺に抱きつこうとした
「いい加減にしなさい!!」
ゴンッ!
「イタッ!!」
「おー……」
なんとエリーゼがクロエにげんこつを入れたのだ、意外とやるなエリーゼ…
「じゃが…あの悪魔と同じスキルを持ってるのはなぜだ?あんな高度なスキル、そこらの魔物から奪ったものとは思えん」
「あー、これは俺にもよく分からないんだが…昔…親友から”貰った”スキルなんだ。これに関しては俺も原理はわからん」
「ほう…親友とな?」
「…あぁ、俺の…唯一の親友。大事な人だった。」
「…だった…か…。」
「すまない…酷な事をした。」
「構わない…いつかはもっと詳しく話さなきゃと思うしな」
「まぁ、これがとりあえず今話せる内容だ」
「うむ。大体は理解した」
「そして…そなたと信頼を築く為に、1つ提案をしたい」
「ん?なんだ?」
「余と一つ、本気の手合わせをしてみないか?」
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* 歴代最強の王VS歴代最凶の大罪人
「へ…陛下…ほんとになさるおつもりですか?」
「うむ。余を誰だと思っておる、歳はとったがまだ余の力、衰えてはおらぬぞ」
「お父様、ご武運を」
「が…頑張ってください…!」
人と戦うなんていつぶりだろうか。久々で気持ちが高ぶって仕方ない!
この王様、俺の事をよく分かってやがるな。
それともたまたま俺と同じ類の人間なのか、戦うことで相手の本質を理解する。要は拳で語り合うってことだ。
「ミツキちゃん無理しないでね?負けてもボクが慰めてあげるから!」
「あんたはまず王様の応援してやれよ…」
「くすっ、まっ…ありがとな」
そういい俺はクロエの頭にそっと手を置いて笑ってみせる。
ドキッ
「う…うん…。」
まぁ本気の手合わせとは言ったものの、それでは俺に有利すぎるから俺にはハンデがある
まずスキルは”俺”のスキルだけ。
そして魔法禁止。
逆に向こうはなんでもありだ。
だが刀剣創成のスキルで魔力を最大限使い強すぎる武器を作ってしまえば王を真っ二つにもできてしまうから最大限使える魔力は元の3分の1っていうルールもつけた。
まぁこれでは全然本気ではないが。
これはあくまで手合わせだ。この状況の中で俺がどこまで相手に通用するのか自分の技量も試せるいい機会だから俺は納得している。
「さて…どうしたものか…」
「遠慮は要らんぞ」
王はマントを脱ぎ、動きやすい格好に着替えたあと何故かクロエも服を着替え動きやすい格好になっている
俺はというと、こんなみんなが見てる前であの姿を晒す訳にはいかないので擬態を使って先程の鎧を纏っている状態だ、だがまぁあくまで擬態だから鎧としての防御力もないし重くもないから動きもいつもとさほど変わらない。
「それでは、双方の準備が整ったということで………始めっ!!」
エリーゼがそういうと王が素早い動きで間合いを詰めてくる。
「金獅子___!!」
「刀剣創成___断罪剣」
王の身体が黄金のオーラに包まれ、黄金の獅子が背後から現れ俺の方に来る。
俺はそれを躱しつつ相手の様子を伺う
「どうした!この程度ではまだまだもの足りぬか!」
「くふふっ…いーや!十分お見事だ!」
キンッ! ガンッ!
ドゴォォン!!
「(嘘だろあの爺さん、素手でも攻撃してきやがる、しかもなんて威力だ)」
あぁ…気持ちが高ぶって仕方ない。
「そろそろこっちも行かせてもらうぞ!」
俺は獅子の攻撃を躱し、その喉元を断罪剣で掻っ切った
そして距離をとる
「どうした、何故すぐ再生しない!」
「くふふっ、この断罪剣は、断罪をするための剣。この剣で斬られた所は治らないわけではないが神聖再生のスキルでも持っていない限り治るのにはかなりの時間がかかる!」
「なるほど、食らったら一溜りもないってわけか!」
ドォォォォンッッッ!!!!
「おー…面白い!面白いなぁ!」
なんとあの爺さん獅子を身体の中に吸収して更に力が増した、あんなの食らったら俺も一溜りもないな!
「フンッ!ハッ!」
ドン!ドン!ガンッ!!
「闇雲に殴ってるだけじゃ当たらねぇぞー!」
ザシュッ!
「くっ…まだまだぁぁぁ!!」
「すごい…あの陛下があそこまで本気を出すだなんて…それに、その陛下を更に押すなんて」
「私にはもう早すぎて全く見えません…」
「…すごい…!」
「(あの動き…間違いなくミツキちゃんは手を抜いているのに、それでもお父様がまだかすり傷さえも与えられないなんて…あぁ…つくづくあの子に夢中になっちゃう…!それに、あんなに楽しそうにしてるミツキちゃん可愛い!)」
「はぁ…はぁ…くぅぅぅ!!」
ガゴォォォン!!
「ほらほらもっと頑張れ!俺に傷の1つでも付けて見せろ!」
俺は断罪剣を解除し、殴り合いをする事にした。だが、まともな状態で殴り合いをすれば骨が砕けるかもしれん。だから____
「鬼眼__!」
そう言い放った瞬間、俺の結膜が黒色に変わり、身体中から力が湧いてくるような感覚になる。
「フンッ!!」
「ふはっ!」
ガンッ!!
「なっ!」
「くふふっ…これならもっと楽しいだろ?」
俺と王は拳と拳を互いにぶつけた。力が互角なのか、どちらにも偏っていない単純な押し合いになっている
「力が分散しすぎているな、一点を集中しながら、一撃一撃にそこだけに力を集中させろ!」
「ハッハッハッ、手合わせ中にアドバイスとは、余の力はそれほど足りぬか!」
ゴンッ!ダンッ!!
「くふふっ…そんなこと言ってる割には楽しそうだが?」
「それはお互い様じゃろうて」
「して、一点に集中か、一撃に力を集中…!」
ブンッ! バチバチッ ドカァァァァン!!!!
ほう、一回のアドバイスのみで成功させるとは、ほんとにすごいな。
王のオーラが一気に腕に集中していき、腕のオーラの形がまるで獅子の手のような形になり、凄まじい程の威力の一撃が放たれ、俺の頬をかすった。一瞬擬態が頬の部分だけ解けたが、すぐに修復した。
後ろはもう木々がなくなり、地面は抉れている。
「くふふっ…よくやったな。今回は俺の負けでいい」
「なに、ほんとに良いのか?」
「あぁ…!俺はもう大満足だ!」
「しょ…勝負あり!勝者、カーネル・カーディリア国王!」
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
「一体…あの者はなんなのだ…」
「お…お父様、ミツキさん…お疲れ様です…!お怪我の方は…」
「あ、そうだ、その断罪剣で斬った傷あるだろ?今度はそこに力を集中させてみろ」
「む?わかった」
王はその傷口に力を集中する。そうするとすぐにとはいかないが傷がどんどん治っている。
流石王のスキル、万能だな
「おぉー、これはすごい」
「だろ?それをもっと上手く使えば色んな事ができ____」
「ミーツーキーちゃーん!!!」
ガバッ
「わふっ!?」
なんと後ろからいきなりクロエが抱きついてきやがった。
「んー!よく頑張ったねぇ、勝負には負けちゃったけど、すっごくかっこよかったよ!!」
「お前なぁ…はぁ、まぁありがとな」
「でも皆の前だから今は辞めろ」
そう言って頭を軽くチョップする。
そうすると渋々といった様子でクロエは離れた。
「さて、王様よ、戦ってみてどうだった?俺のことを少しは信用出来たか?」
「うむ、今そなたと繰り広げた戦いで、そなたが十分信頼するに値すると余は思う。」
「そう言うそなたは、どうじゃった?」
「ふんっ…鍛え甲斐のある、いい爺さんだと思ったな!」
俺は得意気にそう答える。
「それに、俺もあんたのこと、戦ってみてよくわかったし、俺も信用していいと思えた」
「これからよろしくな。カーネル。」
「…あぁ、こちらこそよろしく頼む。ミツキ殿。我が娘と、我が国の騎士たちをどうか。」
「あぁ、任せとけ!」
俺と王は硬い握手を交わした。
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あとがき
今回初めてファンタジー小説を書かせていただいたのですが、やっぱり世界観とかキャラの設定を考えるのに少し苦労しました。
それに今回の舞台は王道異世界の転生物や魔王討伐であったりとかではなく、異世界から更にまた別の異世界というのを舞台にしてみたのですが如何だったでしょうか?これがデビュー作なので何か気になる点や改善した方がいい所などありましたらコメントなどで教えていただけると幸いです!
またこれからもミツキちゃん達と王国の皆さんとの日々をお送りして行くのでまた次回もお楽しみに!!