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腐ったはんどくりーむ
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耀聖(ようせい)
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#世界が私を嘘という
EP.6 仕掛けられた檻
「気づいちゃった?」
暗闇のなか、スマートフォンの青白い光に照らされた健太の顔は、今までで一番深く、歪んだ笑みを浮かべていた。
瑞希は画面を見つめたまま、指一本作動かすことができなかった。ヘッドフォンからは、まだ健太と戸田の楽しげな笑い声がかすかに漏れている。
「せっかく戸田くんに協力してもらって、瑞希の『お医者様への診断材料』を作ってあげようとしたのにさ。泳がせるの、ちょっと早すぎたかな」
健太はゆっくりと歩み寄り、瑞希の手からノートパソコンを静かに取り上げてパタンと閉じた。その流れるような動作には、一切の躊躇も迷いもない。
「……どうして」
瑞希の声は、掠れて消えそうだった。
「どうしてって、決まっているじゃないか。瑞希が僕から離れようとするからだよ。前尾のときもそうだった。瑞希はすぐに僕の目の届かないところへ行こうとする。だから、誰の言うことも信じられないように、僕しか頼れないようにしてあげているんだ。これは僕の愛だよ、瑞希」
健太は瑞希の頬に冷たい手を添えた。その手の温もりのなさに、瑞希は全身を強い悪寒が駆け抜けるのを感じた。
「明日からは、もう外に出なくていいからね。会社も退職の手続きを進めておいたから。これからはずっと、この安全な部屋で二人きりで暮らそう」
それは、社会的な死の宣告だった。
外部との連絡を断たれ、この家に監禁されれば、本当に瑞希という存在は健太の思い通りに書き換えられてしまう。
翌朝、健太は仕事へ行くと言って出かけたが、玄関の鍵は外から厳重に閉められていた。窓もすべて内側からロックされ、簡単には開かないよう細工されている。
瑞希は一人、静まり返ったリビングの床に座り込んでいた。
スマートフォンは昨夜のうちに健太に取り上げられ、パソコンの電源コードも抜かれてどこかへ隠されている。家中のカメラが、じっと瑞希の動きを監視していた。
(もう、誰も助けてくれない。警察に行こうとしても、私が『異常者』として処理されるだけ……)
絶望が波のように押し寄せ、呼吸が浅くなる。
しかし、そのとき。
瑞希の視線が、テレビ台の隅に留まった。
そこには、健太がいつも使っているポータブルのWi-Fiルーターが置かれていた。健太は自分の通信環境を完全に管理しているつもりだろうが、瑞希はある一つの「盲点」を思い出した。
以前、健太が使わなくなった古いタブレット端末が、寝室のクローゼットの奥の、開かずの段ボールに眠っているはずだ。あの端末なら、SIMカードがなくても、この家のWi-Fiに自動で接続できるかもしれない。
もし繋がれば、カメラの死角を探して、外部に本当のSOSを発信できる可能性がある。
健太が帰宅するまでの時間は、あと数時間。
瑞希は監視カメラの位置を頭の中で計算しながら、ゆっくりと、立ち上がった。
お腹痛い( ; ; )
コメント
1件
うわあ……鳥肌が立ちました。健太の「愛だよ」って台詞、ぞっとするほど怖かったです。そして絶望のどん底でWi-Fiルーターと古いタブレットに気づく瑞希の冷静さに、思わず「そうだ、それだ!」って声が出そうになりました。残り時間のカウントダウンにめちゃくちゃハラハラします……! 那月さん、心臓に悪いです( ; ; )次、どうなっちゃうんですか……!