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マジカメに一本の動画が投稿された。
それだけなのに今日の投稿主を知っている
者は叫び声を上げたくなった。
クラスの皆が怖い話をしているのを聞いた監督生は楽しそうだね……やってみようかなと言っていたのだ。
監督生ならこの世界の住人を地獄に突き落とすことも容易だろう。
監督生の投稿された動画を観ると本当にエースとデュースが心配になる。
デュースとエースが談話室にいるのを確認して皆で 再生ボタンを押す。
エースが恥ずかしそうに出ていこうとしたが、トレイにニッコニコな笑顔で止められた。
ケイトとリドルは寮生達と観るためにスクリーンで見ようとか言い出したので、流石にデュースが止めてくれた。
オルゴールのような音楽が流れ、掠れていく音の中に、ピアノを引っ掻き回したような音や、小さな子供が使うような、オモチャの楽器の音が流れてくる。
エースに似ている男の子が薄暗い部屋の真ん中で椅子に座っている。
その子には首輪が付けられていて、ドSな 教師がちらつく。
男の子は音楽に合わせてユラユラと動く。
『ずっと 遠くの昔に 巻かれてしまった この赤い首輪』
テラコッタの髪に合う色の首輪が、いつも彼の寮長に付けられる物にも見える。
『人を連れてこい 人をもっと寄越せ と叫ぶ 呪われた 赤い首輪 』
首輪に触れながらゆっくりと近づいてくる。
か細い声で、すがり付くように服を引っ張り俯いている。
『殴らないで 独りにしないで 傍にいてよ』
先ほどの声より低い声で恐怖を煽られる。
(ねぇ)
『キツく絞める 吐いても絞める 人を寄越せ足りないと』
三角座りした状態で可愛らしい声色に切り替えて歌う。
視聴者はあまりの展開の早さと、エースの歌と演技に、目が釘付けになっている。
『聞き分けのイイコでしょ? ねぇ、ねぇ 良い子でしょ?』
『可愛い子でしょ? 』
どんどん苦しそうに踠くのを観ることしか出来ないことに罪悪感が増してくる。
『ねぇ、ねぇ イイコっでしょ?』
『苦しい”』
エースは苦しいと泣き叫んだ。
冗談や軽いノリなどで泣いたりすることもあるが、エースの泣き顔なんて……子供の姿であれば尚更見たことがない。
『愛して…愛して…愛して、もっともっと 』
画面に衝撃が走って倒れたのだが、 そのまま馬乗りの状態で歌い続ける。
この辺りで考察が飛び交うのは予測済みだ。
『愛して~……愛してぇ???狂わしいほどに』
顔を埋めて体を震わせているエースに心が痛んでしまう。
『苦しい……助けて……呪縛を解いてよ』
ずっと助けを求めていたが、顔を上げて何かを確信したようにエースは目を見開いた。
『ねぇ”、?……止め、られない?……嗚呼』
リリアは苦虫を噛み潰したような顔をして視聴していた。
「一人くらい孫が増えてもよかろう」
……良くないですよ??
RSAの生徒は本格的に連れてきて保護しようと作戦を練る人が増えた。
前回のASMRのお陰で女性人気はかなり増えて……男性の人気も圧倒的だ。
間奏の間にデュースを確認するとすやすやと寝息を立てていた。
暗転してエースがいつもの姿になるが、首輪が首に食い込んでいるように見える。
『体がどんなに大きくなっても 小さくて 赤い首輪』
体を守るように、小さい頃のように自分を抱きしめている。
『苦しくて痛い 冷たくて狭い ヒトが足りないよ』
部屋の隅で丸まっていたのに、今度はど真ん中でクルクルと回ってこちらを見る。
『クラスの誰にも負けない 愛らしい子でしょ?』
表情が抜け落ちて、段々と込み上げる苛立ちが手に取るように解った。
(ねぇ)
『隣の子も 前の子も 誰も 彼も 俺だけを見てよ”!!』
喉を引き裂くような歌声に思わずビビってしまうのは仕方ない。
獣人のしっぽもヘタリと下がってしまう。
紙芝居のような物が動き出して箒の上にエースと……自分、?
サムさんのお店でin stock nowしていた魔法の紙芝居人形。
大きくもなれるし小さくなれる……何より魔力のある人間が見ると、自分に似た人形になるのが最大の売りだ。
『箒の上 大きな声で告白を』
『後ろに乗せて 好きだよ
汚いアナタがぁぁ”ぁ”ぁ!!』
エースは狂ったように笑いながら、紙芝居の道具を全部投げ捨てる。
黒いインクが床に流れると……
急に絶望したような……無気力な声になり、初めより赤くなったように見える首輪を指さして……
『愛して 愛して 愛して これもあげる』
『あなたに 貴方に 全部背負って貰うから』
一秒間だけ切り替わり、吊るされたロープに首をかけるエースが映る。
視聴者はハッと息を呑む。
『失くなる 足りない 貴女を 離さないよ』
狂ってしまったんだと絶望に満ちてしまう表情を浮かべた後に、泣いてるような笑ってるような……
『あ~あぁ……ごめんな”さ”い”!!!!!』
ゆっくりユラユラ黒い目隠しをしたままクルクルと踊る。
『愛して” 愛して 愛して”ぇ 早く もっと』
『愛してよ 愛してぇ”?? 狂ってしまうほどに』
首輪は赤黒く染まっていた。
『苦しい……離さない 痛いの 取って とって』
『ねぇ……幸せなの、?』
その瞬間絶叫が響き渡る……ソレはすぐに音楽に書き消されてしまった。
エースはいつも通り、猫のように丸まって談話室の椅子で寝こけているのが分かっているのに、寮生達はエースを抱きしめた。
リドル達はエースの首に首輪の形がくっきり付いており、監督生にクレームを入れたくなった。
エース……明日はチェリーパイいっぱい作るってよ、良かっな、、?
目隠しを乱暴に外して血の涙が流れる目のまま嬉しそうに……
『幸せなの!!嗚呼~』
動画はそこで終了したかと思ったが……エースがこちらに背を向けて歩き出すのを見て……絶望する。
ただそれはすぐに終わり、動画はストップした。
ハテナが飛び交う中……数分後次の動画が投稿された。
※『愛/し/て/愛/し/て/愛/し/て』
きくお様