テラーノベル
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夕暮れの教室は、静まり返っている。窓際に座る姬愛は、フリルの裾をそっと撫でながら、外の薄暗い景色を眺めていた。
誰かが小声で笑い、別の誰かがひそひそ話をしている。
その声は届くけれど、姬愛の心には触れない。
ただ、口元の微かな緊張や、視線がほんの一瞬だけ迷ったこと──そうした細かい感情の揺れだけは、姬愛の目から逃れない。
「……また、私だけ浮いてる」
小さな吐息を漏らす。感情は表に出さないけれど、孤独を痛いほど感じていた。
隣の席の友達たちに話しかけられることはほとんどない。
たまに視線を交わしても、その先にある本心は見えない。読み取れるのは、ほんのわずかな感情の震えだけだった。
放課後、姬愛はいつものように人通りの少ない裏道を歩く。
派手なピンク色のロリータ服は夕陽に照らされて、赤色に染まっている。
周囲の人はちらりと視線を向け、眉をひそめる。けれど、姬愛は気にしない。
彼女にとって服は、他人に見せるためではなく、自分を守るための鎧だった。
角を曲がると、街灯の下で一冊の古びた本が目に入る。
普段なら素通りする場所だが、今日は何かに導かれるように立ち止まった。
本の装丁には見覚えのない模様が刻まれ、かすれた文字がタイトルを示している。
「……面白そう」
小さな声でつぶやき、手に取る。
その瞬間、背後から誰かの視線を感じた。
振り返ると、薄暗がりの中に一人の人物が立っていた。
目はしっかりと姬愛を見ているのに、表情は読めない。
姬愛は微かに眉をひそめる。
「……別に、誰かに見られても、気にならないけど」
でも、心のどこかで、少しだけ期待していた。
誰にも理解されない孤独の中で、ほんの一瞬でも自分を見てくれる存在――そんなものを、無意識に探している自分を、姬愛はまだ認めていなかった。
コメント
1件
わーんᐡ т · т ᐡ 新しい物語楽しみすぎます♩