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#あべさく
めかぶぷりん
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⚠誘拐描写あり
その日も、いつも通りだった。
白杖をついて、ゆっくり歩く。
地面の感触と音だけを頼りに、人の流れを感じながら。
もう、全く怖くないわけじゃない。
でも、初めの頃はなかった安心感があった。
一人でも、歩ける。
そう思えていた。
カツンカツンと一定のリズムを刻む。
そのときだった。
「……っ」
背後に、気配を感じた。
一人じゃない。複数人いる。
悪寒が背筋を走る。
「…すみません」
とりあえず、道を譲ろうとした。
その瞬間、
ガシッ
「っ!?」
腕を、強く掴まれた。
「おい、こいつだ」
低い声。
「…っ、なに……」
ぐいっと強引に引き寄せられバランスを崩す。
「離してっ…」
必死に振りほどこうとするけど、力が強すぎる。
俺の力では到底抜け出せない。
「大人しくしろ」
耳元で、冷たい声がする。
ゾクッと身震いする。
「っ…やめて、!」
白杖が、カラン、と落ちる音。
両手が拘束され身動きが取れないためそれすら拾えなかった。
「……んぐっ、、」
突然布のようなもので口元を押さえられる。
声が出ない。
「騒ぐな」
低く脅される。
体が震えて力が出ない。
怖い。
このままでは何をされるかわからない。
でも、自分の力だけではどうにもできなかった。
「……っ…!」
足が一瞬浮く。
そのまま引きずられるように、どこかへ連れていかれる。
周りの音が、ゆっくりと遠ざかっていく。
助けを求めたいのに、声が出せない。
息が苦しい。
心臓が、壊れそうなくらい速くなる。
少しすると男たちの足が止まった。
「乗せろ」
「おう」
その声と同時に乱暴にどこかに押し込まれる。
体がぶつかり痛みを感じた。
ガタンッ
車のドアが閉まる音がする。
ブルルルと車のエンジンがかかる。
「っ……は……」
やっと口元が離される。
「……やめて…ください…」
恐怖で声が震える。
「なんで……」
「お前が悪いわけじゃねえよ」
誰かが、笑いながら言う。
「ただな」
ぐっと、顔を近づけられる気配。
「運が悪かったな。かわいそーに」
「っ、、」
その一言で、全部が冷たくなる。
もう逃げ場なんかない。
何も見えない俺が此奴らに力で勝てるわけがない。
「……誰か…」
掠れた声。
届くわけないのに。
それでも、
頭に浮かんだのはあの人だった。
「…阿部さん……」
小さく、名前を呼ぶ。
何も見えない不安と恐怖でうまく息ができない。
「たすけて………」
車が動き出す。
振動が体に伝わる。
どんどん、遠ざかっていく。
日常から。
安全な場所から。
「…っ、やだ……」
涙が、こぼれる。
見えないまま、どこかへ連れていかれる恐怖。
何もできない、自分への悔しさ。
「たすけてよ…………」
声は、震えて消えていった。
コメント
1件
読み終えました。このエピソード、すごく緊迫感があって一気に引き込まれました。特に「白杖が落ちる音」とか「車のドアが閉まる音」みたいな、視覚が頼れない主人公だからこそ際立つ聴覚の描写が生々しくて、自分もその場にいるみたいな息苦しさを感じました。最後の「阿部さん」という名前――これまでに積み重ねてきた関係性が一瞬でよぎる感じがして、すごく胸が痛みました。続きが気になります。