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最近、教室の空気がまた変わった。
康二がそばにいないとき、誰かの視線が刺さる。
目黒はそれを感じながら、ノートを取るふりをして、ただ息を殺していた。
机の中には、折りたたまれた紙。
『また先輩に泣きついた?』
黒いインクの字が、やけに整っていて気持ち悪かった。
消そうとしても、頭から離れない。
ページをめくるたびに、脳の奥でその文字が焼きつく。
放課後。
康二が部活で遅くなる日。
目黒は、誰もいない廊下をひとり歩いていた。
足音が響くたびに、心臓が跳ねる。
——また、来るかもしれない。
壁の影に人の気配を感じた気がして、
息を止めた。
けれど何もいない。
それでも怖くて、教室に戻ることができなかった。
——康二くんに言えば、きっと怒る。
——また誰かを傷つけるかもしれない。
そんなことになったら、自分のせいだ。
そう思うと、口が開けなかった。
夜。
スマホの画面に、康二の名前が光る。
『明日、朝迎え行くな』
『ちゃんと飯食えよ』
その短い言葉が、あたたかいはずなのに、
どこか痛かった。
胸の奥で、何かが軋んでいる。
「……うん。大丈夫だよ」
そう打って、送信ボタンを押した。
——本当は、大丈夫じゃない。
でも、「大丈夫」って言葉しか出てこない。
鏡の中の自分が、知らない顔をしていた。
唇の端に青い傷ができている。
頬には消えかけの赤い線。
見なかったことにした。
どうせ、誰も気づかない。
カーテンの隙間から、夜の街灯の光が差し込む。
その下で、目黒は小さく笑った。
「……俺、強いから」
誰に向けた言葉かもわからないまま、
指先が震えた。
テスト終わりました!!
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