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中也「此奴はあの時の_______」
______________
9年前
中原中也は、死にかけていた。
飲み物も食べ物もなく、残ったのは孤独だけ。
俺の前を通りすがった奴は、全員気味悪がる。
気力もなく、立つ力さえもない。
この擂鉢街を生み出したのは俺だ。
俺は人間じゃねえんだ。
中也「もうすぐか…」
中也はもうすぐ自分に来るだろう死を待っていた。
中也「俺がこうやって呼吸する価値なんて…」
そうやって、世の中に絶望しているときに、奴が現れた。
〇〇「君は…」
俺を見る奴は無視するか侮辱するかの二択だ。
そんなに心配そうな顔で俺を見つめるのは此奴が初めてだった。
踏ん張り声を出す。
中也「水…食えるモノ…」
前髪が揺れ、顔が見える。
俺とあまり年の変わらない子供だ。
動揺してる顔つきだが、目の奥から変な温かさを感じる。
〇〇「ごめん…なさい」
何で謝っているんだ此奴は。
そこから意を決したように奴は走り出した。
〇〇「ちょっと待っててー!」
数分後だろうか、奴は食糧らしきものと水を持ってきた。
どんな反応をしていいのか分からず、でも目の前にある食糧に無我夢中に飛びついた。
中也「なんでここまでするんだ…」
中也「俺は人間じゃねえのに…」
俺は、震えた声で問いかけた。
思いがけない答えが返ってきて、目を見開く。
〇〇「ううん、中也は人間だよ、絶対に。」
中也「何で俺の名を知って_______」
初めて会ったはずなのに、何故か此奴は俺の名を呼んだ。
〇〇「風の噂で_______」
そうか。俺の名はここまで広まっちまったんだと思う。
〇〇「それに…私にとって困っている人を助けるのは当たり前なの」
中也「確かに手前はそういう奴に見えるぜ」
すぐ分かる。此奴は「善人ぶってる」とは程遠い存在。
目線の真っ直ぐさに圧倒されるくらいの責任感を感じる。
そこから少し話した。
名前は〇〇といい、擂鉢街の外からやってきた人間らしい。
擂鉢街に来たのは、俺のように彷徨っている奴を救うためだそうだ。
年齢に合っていないほど、口調は冷静だった。
少しの時間だったのに、俺と〇〇は意気投合した。
〇〇「そろそろ時間かな」
中也「もう、帰るのか?」
少し、いや物凄く寂しかった。
もう少し隣にいてほしいという願いは断ち切られた。
〇〇「うん、中也ももうすぐ______」
〇〇「仲間と出会えるだろうね」
仲間…俺の前に本当に現れるのか
少々困惑した顔つきになる。
〇〇「バイバイ!!お元気で!!」
中也「あぁ…またな」
俺は〇〇に手を振り、帰路につく〇〇の様子を眺めていた。
中也「(また、話してぇな)」
その日の夕方、〇〇が予言したかのように、俺は羊に拾われ、組織の王として功績を残していった。
中也「〇〇は_______」
中也「俺の恩人だ」
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