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紗姫は25歳。
県内の女子大を卒業後、市立博物館で学芸員をしている。
古代遺跡から発掘した土器や、復元した道具を展示する、小さな博物館だ。
紗姫の実家は『元藩主』の名家だ。
家には、住み込みの家政婦が1人いる。
優しい両親に愛されて、何不自由なく暮らしていたが、
高校生のとき 母が亡くなった。
よく聞く病名だが「まさかお母さんが!?」としか思えなかった。
ある日……。
「今日から お母さんと弟だ」
53歳の父から〈後妻〉を紹介された。
42歳の後妻は、20歳の息子を連れていた。
女は「よろしくね」と不気味に微笑み、男は「オトウトでーす」と親指を立てた。
(お父さんが、なぜ? こんな人と?)
嫌悪感しかない。家族と思うなんて無理だった。
後妻、義弟との同居が始まった。
(家にいるのが嫌だ)と思っていたら、紗姫に『見合い』の話が来た。
相手は、市議会議員の伊崎信也。
紗姫より7歳年上の32歳だ。
子供の頃から優秀で、東京の国立大学の法学部を卒業している。
26歳で初当選した信也は、現在二期目で、議員歴は6年。
地元の期待を一身に背負っている、らしい。
「我社のグループも彼を推そうと思っている」
「国政に押し出して、地元初の大臣を狙う」
地元の政財界で、父の力は大きい。
その父が見込んだ男性だ。
紗姫は「会ってみたいな」と思った。