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第1話「月の下の少年」
夜。
コンビニ帰りの結翔は、袋を片手に夜道を歩いていた。
結翔「野暮用してたら、遅くなっちまったな〜。」
スマホで時間を確認する。
結翔「ま、いっか。」
辺りを見渡す。
結翔「ここ、街灯少なくね……? 市の奴
らは何考えてんだか……。」
その時――
「や、やめてくれ……!!」
結翔「……?」
「い、命だけはぁぁぁ…!!」
結翔「…………?」
確かに聞こえた。
人の悲鳴。
結翔「……何だ?」
声のした路地を見る。
結翔「…………」
嫌な予感がする。
関わらない方がいい。
そう思った。
でも――
結翔「……」
結翔は路地へ入っていった。
路地の奥。
一人の男が、少年と向かい合っていた。
男「や、やめてくれ……!!」
蓮「しっ〜。」
蓮は口元に指を当てる。
蓮「もう夜も遅いんだし……その声耳障りなんだけど。」
男「た、頼む……!」
蓮「俺の言いたいこと、わかる?」
男は怯えながら蓮を見る。
蓮「黙ってろって、意味。」
蓮「考える力持ってんだから、働かせなよ。」
男「ま、待ってくれ……!」
蓮「…………」
蓮は少しだけ面倒そうに息を吐く。
蓮「もうダルいし……トドメさしちゃうね。」
――その瞬間。
結翔「……っ!」
路地の奥から、結翔が駆け込んできた。
結翔「おい!」
結翔は二人の間に入り
蓮「…………」
結翔「よっと……」
結翔は男へ抱え、少年と距離を取った
結翔「よっと……大丈夫か?」
男「……あ、あぁ……あ、……ありがとな……」
結翔「……よかった。」
まだ間に合った。
結翔はそう思った。
蓮「あれ?居ない…あのままだったらすぐだったのに」
結翔「……!その声……」
蓮「ん?……あ、もしかして結翔くん?同じクラスだから覚えてる」
結翔「俺も覚えてるわ。お前が謎行動しすぎでな…」
だが――
蓮「──でも、今は邪魔すんなよ。」
蓮は男の首を断ち切っていた
男「……あ、がはぁぁっ!?」
結翔「…………っ!」
一瞬だった。
結翔が振り返った時には、もう遅かっ
た。
結翔「…………」
蓮「……手間取らせないでよ。」
蓮「仕事、増えちゃうから。」
結翔「ふざけんな……!!」
拳を握り締める。
結翔「お前……今、俺が助けたんだぞ!?」
蓮「そうだね」
結翔「だったら、なんで……!」
蓮「仕事だから。」
結翔「…………!」
その言葉が、結翔の胸に突き刺さる。
結翔「……仕事?」
蓮「うん。」
結翔「人の命を奪うことが……お前にとっては仕事なのかよ……!?」
蓮「それ、言う必要ある?」
結翔「…………」
結翔は目の前の光景から目を逸らせなかった。
さっきまで話していた男が。
助けを求めていた男が。
もう動かない。
結翔「…………なぁ」
結翔「大丈夫か……? おっさん。」
返事はない。
結翔「……おい。」
もう一度呼びかける。
それでも返事はない。
結翔「…………」
結翔は理解する。
自分が助けられたと思った瞬間。
その希望ごと、蓮に奪われた。
結翔「…………嘘だろ。」
蓮「…………」
結翔「……死んでるのか?」
蓮「首を断ち切ったから、死んでるさ」
あまりにも淡々とした返事。
結翔「…………」
結翔は蓮を見る。
結翔「……お前…」
蓮「ん?」
結翔「なんで、そんな顔してられんだよ…!」
蓮「どんな顔?」
結翔「……笑ってんじゃねぇよ」
蓮「…………」
結翔「人が死んだんだぞ……」
蓮「……」
結翔「怖くねぇのかよ…?」
蓮「怖い??そんなの思う人いたら逆に会ってみたいや」
結翔「罪悪感は?」
蓮「……仕事でやってるから罪悪感もクソもなくない?」
結翔「……悲しくないのか?」
蓮「…………さっきからなんなの?それ」
結翔「…………」
結翔は拳を握る
結翔「俺には分かんねぇよ……」
蓮「…………」
結翔「人が死んでんだぞ……!?」
結翔「なのに……なんでお前は、そんな平気なんだよ!!」
蓮「…………」
結翔「……お前、何なんだよ……!」
蓮は少しだけ目を伏せる。
そして――
蓮「ねぇ、結翔くん」
結翔「……なんだよ」
蓮「なんで、人を殺したらダメなの?」
結翔「…………は?」
蓮の表情から、笑顔が消える。
蓮「殺す人の気持ちも、尊重してあげなきゃでしょ?」
結翔「……何言ってんだよ。」
蓮「基本的人権の尊重って知ってる?」
結翔「……知ってるけど」
蓮「俺は殺したとしても、喜びも悲しみも感じたことないから……分からないけどさ。」
蓮「そういう意味なら……どう答えんの?」
結翔「…………」
蓮「俺が今、ここで誰かを傷つけることだって可能なわけ。」
結翔「…………」
蓮「でも、ダメなんでしょ?」
蓮「だったら……なんで?」
結翔は黙り込む。
そして、ゆっくりと蓮を見る。
結翔「……法律で決まってるから、だけじゃねぇ。」
蓮「…………」
結翔「人には、生きる権利がある。」
結翔「その人がどう生きるかを決めるのは、その人自身だ。」
結翔「お前でも、俺でも、親でも、誰でもない。」
蓮「…………」
結翔「人間は、誰かの所有物じゃねぇんだよ。」
蓮の目が僅かに揺れる。
結翔「殺された人にも、家族がいる。」
結翔「友達がいる。」
結翔「大切な人がいる。」
結翔「これからやりたかったことも、行きたかった場所も……きっとあったはずだ」
結翔「それを全部、他人が勝手に奪っていいわけねぇだろ」
蓮「…………」
結翔「だからダメなんだ。」
結翔は拳を握る。
結翔「人を殺すってのは、その人の命だけを奪うことじゃない。」
結翔「その人が生きていくはずだった未
来まで、勝手に奪うことなんだ。」
蓮「…………」
蓮は黙った。
いつもの笑顔がない。
何かを理解しようとしているようにも見える。
けれど――本人にも、その感情が何なのか分からない。
蓮「…………そっか。」
結翔「…………」
蓮「俺じゃ、何も言えないからさ。」
結翔「え?」
蓮「今度、“仕事”してる俺に会ったら言ってみてよ。」
結翔「…………」
蓮は結翔を見る。
蓮「『なんでこんなことやってるの?』
ってさ。」
結翔「…………」
その言葉だけが、妙に胸に残った。
結翔「……お前が1番わかってるくせに」
蓮「分かんないから、今の俺じゃ」
結翔「……仕方ないか……お前の為にもやってやるよ」
結翔は蓮から目を逸らさない。
結翔「その時は、絶対聞く。」
蓮「…………ありがと」
蓮は小さく笑った。
その笑顔はいつもの蓮と同じだった。
だけど――
結翔には、もうその笑顔が以前と同じには見えなかった。
普通の高校生だと思っていた少年。
人の命を奪う少年。
そして――
自分自身のことすら、理解できていない少年。
この夜、結翔は蓮の「裏側」を知った。
そして蓮は初めて、自分自身に向けられた問いを受け取った。
――「なんで、こんなことやってるの?」
その答えを探す二人の物語が、ここから始まる。
コメント
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寺島あおいです🌷 第1話、拝読しました。コンビニ帰りの何気ない夜道から、一気に非日常の世界に引き込まれましたね。結翔の「助けた」と思った瞬間に目の前で命が奪われる絶望感、そして蓮の「仕事だから」というあまりにも淡々とした口調——その温度差にゾッとしました。特に、蓮が最後に「なんでこんなことやってるの?ってさ」と言ったシーン、あの瞬間に初めて蓮の内側にほんの少しだけ穴が開いたように感じて、胸が熱くなりました。続きが気になります!
#オリジナル
リアス
4,633
43
えれめんたる
18
ゆうクロ。
41