昔々、あるところに、大きな夢を胸に抱いた少年が住んでいました。
少年の家は裕福ではありませんでしたが、貧しさに困るほどでもありませんでした。ただ、特別な何かがあるわけでもない、ごく普通の暮らしでした。
やがて時間が流れ、少年は青年になり、そして成人しました。
成人した彼は、かつて胸いっぱいに描いていた夢とは少し違うことをしながら、日々を生きていくようになりました。
それは生活を守るためであり、
自分が幸せになるためであり、
いつのまにか形を変えてしまった未来に応えるためでした。
働き、やがて結婚をし、奥さんができました。そのうちに子供も生まれ、娘と息子に恵まれました。
彼は家族のために、より一層よく働きました。夢のことを考える時間は、少しずつ減っていきました。
そしてまた、同じように時間が流れました。
長い年月の末、彼の勤めは終わりを迎えます。
定年退職です。
結果として彼は、1人の奥さんと、娘と、息子。合計4人の家族が困らず、幸せでいられるようにと、行動し続けた人生を送りました。
定年から、さらに20年が経ちました。
ある日の午後。
彼は縁側に座り、静かな庭を眺めていました。
風に揺れる木々の音が、穏やかに耳に届きます。
そして、ふと、こんな言葉をつぶやきました。
「かつて若い日に思い描いたあの夢は、叶うのだろうか」
その問いに答える者はいませんでした。
おしまい。






